1985年から1986年に、テレビ朝日系列で放映されたアニメ「機動戦士Zガンダム」に登場する機体「アッシマー」。

 劇中で主人公機を覆いつくす圧倒的なサイズ感、UFOを連想するような独特の形状の飛行形態、さらにはパイロットの「ブラン・ブルターク」の漢気あふれるキャラクターがとりわけ印象的なロボットですが、もし現実世界で歩いていたら?そのまさかの動画が先日ネット上で大きな反響を呼びました。

■ 全てオリジナルの10分の1スケールにて作成

 「歩くアッシマー #有限会社サイコ建設 #コス博」

 Twitterユーザーのらぷらすさんが、そんなつぶやきとともに投稿した約10秒間の動画。どうやらコスプレイベントに参加したとき、会場で撮られたもののようです。

らぷらすさんがコス博当日に撮影した動画。そこにはゴツゴツした様相の歩行者の姿。

 そこには、会場の方に支えながらも、場内を闊歩する姿が。上半身がダークイエロー、下半身がダークグリーンと、どこからどうみてもアッシマーです。目元付近のモノアイを時折発光しつつ、しっかりと踏みしめるかのごとく歩んでいます。

どんどんカメラ側に近づく歩行者。ってこれ、アッシマーやないかい!

 今回2万を超えるいいねに、20万回以上の動画再生回数を記録した動画に映し出されていたのは、なんと人型サイズのアッシマーのコスプレ造形。そして、このコスプレの着用者がらぷらすさんご本人。つぶやきにもあるコスプレチーム「有限会社サイコ建設」を率いている方です。

らぷらすさんは「有限会社サイコ建設」の主催者。

 サイコ建設では、Zガンダム劇中に登場する組織「ティターンズ」に所属するモビルスーツ(MS)やモビルアーマー(MA)を、全てオリジナルの10分の1スケールにて作成。アッシマーの他にも、「ハンブラビ」「ギャプラン」「ガブスレイ」「バウンド・ドック」と名だたるロボット(コスプレ造形)を「保有」しています。

ヤザン・ゲーブルの搭乗機でもおなじみ「ハンブラビ」。

前回取材時はまだ未完成だった「ギャプラン」。

ガブスレイも含めた4機で今回参戦。

残念ながら今回コス博不参加だった「バウンド・ドック」。

 いずれの“機体”についても、「コスプレボード」と呼ばれるボード材料を用いて作られ、またLEDを活用してモノアイ部分が発光したり、ディスプレイとしても稼働。その上で、まるでパワードスーツのごとく、パイロットが着用するのでウネウネと動きます。

 そしてさらにスゴイのが、いずれの機体についても、「ティターンズMS(モビルスーツ)」の大きな特徴でもあるMA(モビルアーマー)に変形が可能ということ。

サイコ建設が開発したコスプレ造形は全て可変機構も搭載。

 世にも珍しい「可変コスプレ造形」たちは、サイコ建設の面々に「TG(タイタン・グレード)」と名付けられ、もはや「コスプレ」という概念を超えた建築アートとなっています。余談ですが、“製造元”である「有限会社サイコ建設」は実在する会社ではありません。

■ 約半年で歩きやすいように改良&中の人も体力強化

 そんなアッシマーが、ケープケネディではなくイベント会場に出現し、場内を歩んでいる動画に釘付けになる筆者。しかしここで、とあることに気づきました。

アッシマー全貌。

 「あれ?いつの間にか、アッシマーにティターンズのロゴが付いているぞ!」

 実は編集部では以前、らぷらすさんと有限会社サイコ建設を記事にて紹介。当時はアッシマーとハンブラビが完成し、ギャプランは完成間近という状況。ガブスレイとバウンド・ドックにいたっては、この世に存在すらしていませんでした。

前回記事紹介時の1枚。当時ガブスレイとバウンド・ドックは開発未着手でした。

 「でもアッシマーも当時はまだ『試作段階』だったので、全体的にディテールアップしていますよ」

 と、前回からの「進捗」について語ってくれるらぷらすさん。

 詳細をうかがうと、カメラ部分には、足元を映す「サブカメラ」を新たに搭載。これにより安全性が向上したそう。また、「本気」を出せば、全身に搭載した約400個ものLEDバーニアが点灯することも可能なギミックにチューンアップ。他にも全身に細かいラインが加えられ、より立体感のあるボディとなっているようです。

 これはあくまで筆者目線での話ですが、前回取材の時点でも、らぷらすさんの「本気感」は十二分に伝わるアッシマーでした。あれはまだ「試作」だったのか……

 また、動画内で見せるアッシマーの歩みのひとつひとつが、前回からの大きな変化でもあるんです。

 「あれから自分自身の体力強化も図りました。それもあって、動画のように動けるようになったんですよ」

 編集部が前回記事として紹介したのは2020年10月。その際に、「回るアッシマー」と題してアッシマー(らぷらすさん)が見せた動きというのは、その場をくるりと一回転するゆったりとしたもの。とはいえ、当時はサブカメラが未搭載。視界も今以上に遮られ、かつ全長が2メートルを超えるコスプレ造形ともなると致し方なくもあります。

前回取材時のタイミングで投稿された歩行動画。この時はまだ試作段階。

当時の動きはぎこちないもの。それが7か月後驚くべき進化を遂げました。

 それを半年ほどでここまでにするなんて……月並みな表現かもしれませんが、らぷらすさんの凄まじい努力と、ティターンズMSへの熱い想い、そしてアッシマーへの深い愛情が合わさった賜物ではないでしょうか。

■ イベント文化の状況に危機感

 今回らぷらすさんが動画を撮影したのは5月23日に行われた「ビッグコスプレ博R」(東京ビッグサイト青海展示棟)。現在コロナ禍ということもあり、悩ましい状況での開催でしたが、会場、主催者、参加者一丸となり、全員無事すごせるよう細部にわたって工夫や努力が行われていたそうです。

 「今回の『コス博』では、参加者と運営者がしっかりとした感染対策をとり、また当日は危険な行為もありませんでした。どの参加者様もマスクを着用し、撮影時だけマスクを外し、しゃべらないというルールを徹底されておりました」

最大限の感染症対策を実施した上でコス博は開催されました。

 「そんな中で、『今日はサイコ建設を見るためにイベントに来ました!』とたくさんの方におっしゃっていただき、アムロの言葉を借りるとすれば、『こんなにうれしいことはない』とチームの皆で口をそろえて言っておりました。今後もコスプレだけではなく、様々なイベントが皆様の協力の下で安全に開催されることを切に願っております」

サイコ建設目当ての来場者も多かったそう。

 らぷらすさん率いる「有限会社サイコ建設」は、次回は6月開催予定の東京・池袋のイベント「acostaマルシェ」にて、ガンダム系ホビー雑誌をイメージした同人誌を初回頒布するとのこと。現在鋭意編集中だそうです。

6月に開催されるイベントに向け、同人誌を作成中のサイコ建設一同。

 また、先述の通りサイコ建設は架空の企業なのですが、同人誌に加えてなんと「会社情報誌」も作成中とのこと。

架空の企業にも拘らず、サイコ建設の「会社情報誌」も合わせて作成中とのこと。

 今回筆者は、らぷらすさんに、同人誌を含めて表紙画像を特別にご提供いただいたのですが、これは……イイ!!そこには、サイコガンダムのMA形態をバックに、ビシッとポーズを決める「社員」の姿。TGの雄姿を写した裏表紙も相まって、もし仮にサイコ建設の「会社説明会」が開催されるなら、ぜひとも足を運びたいものとなっています。

裏表紙には、TGの雄姿が所狭しに。これはイイ!

 また、今回のコス博では、残念ながら未参戦となった「バウンド・ドック」の雄姿も気になるところ。有限会社サイコ建設の今後さらなる活躍が楽しみでなりませんね。

<記事化協力>
らぷらすさん(@laplace0920)
TOMOZOさん(@tomozouamerico)
ひかるさん(@hikarundam)
バフィさん(@buffy_0926)
山葵さん(@wwwwwwww8)
他、有限会社サイコ建設のみなさん

(向山純平)