様々な形状のブロックを組み上げることで、もの作りが楽しめる「LEGO」(レゴブロック)。北欧デンマーク発祥で、世界中に多くのファンを有しています。

 日本でも子ども向け玩具の定番として親しまれていますが、同時にレゴを用いた様々なファンアート作品が生み出されているのも特徴。グローバルブランドがゆえ、その作品群はよく話題になりますが、先日もあるビルダーが作り上げた作品がネット上で注目を集めました。

 「レゴで作るリック・ディアス、完成しました!頭頂高50cm、総重量4.5kgのデカブツとなっております」

約40分の1スケールでリック・ディアスをレゴで組み上げたMokoさん。

 Mokoさんが自身のTwitterに投稿したのは、機動戦士Zガンダム(1985年3月~1986年2月放映)に登場するモビルスーツ(MS)「リック・ディアス」をレゴで再現したもの。「元から大好きな機体なんです」と語るほど、思い入れのある機体なのだそうです。

 リック・ディアスの設定上の頭頂高は約20メートルほど。そしてMokoさんは、つぶやきにもある通り50センチメートルの頭頂高で再現しています。つまり“ガンプラ的”にいうと、40分の1スケールで作り上げていることになります。

 またレゴで組み上げているので、当然ながらガンプラのようなひとつひとつのパーツが「正規品」ではありません。しかし、Mokoさんの一連の作品に関する投稿に写し出されているそれは、ある意味でガンプラを凌駕するほどの精巧さ。

全てをレゴで組み上げたMokoさん。しかしその姿はガンプラに匹敵する精巧さ。

 リック・ディアスは、全身が「赤」もしくは「黒・グレー」の2タイプにて劇中に登場し、合わせて商品展開もされていますが、今回Mokoさんは、クワトロ・バジーナ(シャア・アズナブル)が主に搭乗した前者の赤を選択しています。

 「ゴツい」とも形容されそうな、ずんぐりむっくりとした体躯が特徴的なリック・ディアスですが、そんなぱっと見の外観に加え、「ビームピストル」を収納した背部のバックパックや、メイン武装の「クレイ・バズーカ」、緑の単眼のモノアイを克明に再現。さらにモノアイについては、発光もするというんだからおそれいります。

ビームピストルを収納したバックパックや、メイン武装のクレイ・バズーカも見事に再現。

 そして機体再現については、「目に見えない部分」にまで施されているんです。実はリック・ディアスの頭部には、「バルカンファランクス」という武装が内蔵されているんですが、これについてもMokoさんは「搭載」しています。頭部をぱっかり開くとそこには、先のバルカンファランクスが「どうもこんにちは」とばかりに収納。

内蔵されているバルカンファランクスまで再現したMokoさん。こだわりが半端ない。

 さらに他にも、細かいディテール部分まで再現しているんですが、アップ画像をじっと見てみると、組み上げているのは全てレゴブロック。それでいて、ここまで精巧なギミックを体現しているのですから、筆者もMokoさんの「リック・ディアス愛」にただただ魅入ってしまうばかり。Twitterの投稿でも、1万5000もの「いいね」が寄せられる反響となりました。

 とはいえ、ここまで再現度を高めると、当然ながらその「代償」もあったそう。今回のつぶやきでもあった「頭頂高50cm、総重量4.5kg」というのは、作品の謳い文句にしたかったためではなく、必然的にそうせざるを得なかったのが理由。

 「でも大きくすれば、あとは適した部品を揃えれば上手くいくといわれると、実際はそうでもないんですよね」

 そう語るMokoさん作の「レゴ・リック・ディアス」は、全身の様々な部位が可動するのも大きな特徴の一つ。今回のTwitterの投稿をはじめ、MokoさんのInstagramやYouTubeチャンネルでは、様々なポージングをする様子も紹介されています。

自身のSNSでMokoさんは様々なポージングのリック・ディアスを披露しています。

■ 「自分の技術や自信を身に着けるのに今までかかってしまったんです」

 ただそうなると必要になってくるのは、無理のない可動を実現させるための強固な関節。そしてこれが、製作にいたるまでの最大のハードルだったそう。

 Mokoさんによると、元々リック・ディアスを作るという構想自体は、10年以上前から温めていたそうなんですが、「自分の技術や自信を身に着けるのに今までかかってしまったんです」と、これまで実現しませんでした。

 既にお察しの方もいるかもしれませんが、MokoさんはただのLEGOビルダーではありません。実はMokoさんは、世界で21人しかいないLEGO認定ビルダーである三井淳平氏のもとで、アシスタントをされている方。

 自身のブログ「レゴ道」では、これまでにレゴで作り上げた作品が公開されていますが、そこには、今回のリック・ディアスのようなガンダム作品に登場するMSもあれば、勇者シリーズやトランスフォーマーなどの往年の名作ロボットアニメ作品、ウルトラマンや仮面ライダーなどの特撮ヒーロー、他にも様々な作品に登場するキャラクターや機体(アニメ実写問わず)をモデルにしたレゴアートたちがズラリ。

自身のブログにて作品を公開しているMokoさん。

往年の名作ロボット作品も多数製作しています。

作品群の中には特撮ヒーローも。

仮面ライダーとウルトラマンはとりわけ多数製作。

 それらは、デフォルメしたモデリングでの製作であっても、いずれも一目見ただけで「元ネタ」を容易に想起できるものばかり。またキャラクター以外にも、「弁当」といった食べ物や建物などと、最早「なんでもあり」といえる作品もMokoさんは披露しています。

他にも弁当など、もはや「なんでもあり」ともいえるMokoさんの作品群。

 筆者も幼少期にレゴを嗜んでおりましたが、Mokoさんのブログを見ていて、「レゴってこんなことも出来るのか」と、時間を忘れて夢中で閲覧していました。

■ 踏ん切りがついたきっかけは「アッシマー」

 「趣味もレゴですよ」というMokoさんは、長年多くの作品を手がけ今では日本でも有数のLEGOビルダーとして活躍されています。しかしそれでも、中々踏ん切りがつかなかったのがリック・ディアス。

 それを作るきっかけとなったのが、”前作”で作り上げた「アッシマー」(2020年5月製作)だそう。

リック・ディアス製作のきっかけになったアッシマー。

 同じく機動戦士Zガンダムに登場したこの機体を、MA(モビルアーマー)MS両形態に変形可能なギミックにて再現。またアッシマーといえば、ずんぐりむっくりした体躯や、大型のメイン武装(ビームライフル)、単眼のモノアイと、リック・ディアスとの共通点も近い機体ですが、いずれについてもMokoさんは、レゴにてこれを克明に表現しています。

MS・MA両形態に変形可能なギミックを実現しました。

モノアイに関してもウネウネ動かしています。

 「あれでかなりの経験値がつきましたね」と語るMokoさん。その蓄積を生かし、リック・ディアスに関しても専用のジョイントなどを巧みに駆使して再現することになりました。

リック・ディアスとアッシマーとの2ショット。

■ 結果的に構想に10数年、製作に3年以上の歳月

 ちなみにですが、先述のMokoさんのブログによると、今回のリック・ディアスの製作期間は約半年だそう。ただ、Twitterに初めて登場したのが2018年1月。当時はまだ頭部のイメージのみ公開だったのですが、結果的に構想に10数年、製作に3年以上の歳月をかけたともいえます。

 これは今回の投稿でもあふれ出ていた、Mokoさんのリック・ディアスに対する格別の思い入れはもちろん、「手先の器用さはあまり求められずに気楽に楽しめ、作品も自分でテーマを決めて、好きなものを作れるところですね」というレゴの魅力もあってのものかもしれませんね。

 ところで、この記事をお読みになって、「レゴ・リック・ディアス」を静止画ではなく動画でもこの作品を堪能したい方も多いのでは。

 実は先にも触れたMokoさんの公式YouTubeチャンネル「Moko Brick Laboratory channel」にて、動画として公開しています。この記事を読んで気になった方はそちらもご覧になってみてください。

<記事化協力>
Mokoさん(Twitter:@LEGOdouMoko/Instagram:@legodoumoko)

(向山純平)