特撮ドラマ『仮面ライダー』シリーズの冬映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL』(2017年12月9日公開)のゲストキャストが10月3日に発表され、発表直後からSNSなどでは懐かしい人々の登場に大いに沸きました。

今回の映画はもともと豪華なキャストになるのではないかと噂されていましたが、仮面ライダーオーズ/OOO/火野映司役の渡部秀と相棒アンク役の三浦涼介、仮面ライダーフォーゼ/福士蒼汰、仮面ライダー鎧武/葛葉紘汰役の佐野岳、仮面ライダーゴースト/天空寺タケル役の西銘駿が出演することが明らかとなっています。

『仮面ライダーオーズ/OOO』は2011年から12年に放映されたシリーズ12作目。ついこの間の出来事に思われるのですがもう終了から5年もたつなんて……と思いつつ、内容を紹介すると、本作は「わずかな日銭と明日のパンツ」だけをもって放浪の旅をする映司が、アルバイト先で赤いメダルを偶然手にしたことから物語が大きく動き始めます。そんな映司の前に腕だけのグリード(怪人)のアンクがあらわれ、メダルを返すように迫ります。そしてふたり?の前に他のグリード、ヤミーがあらわれ、駆けつけた刑事の泉信吾らに重傷を負わせます。こういう場面を見た時に、同じグリードのアンクに対して怒りが沸きそうなものなのに、ヤミーに攻撃されるアンクを見て、ヤミーへと立ち向かっていきます。この映司のひたむきさ、純粋さを最初は使える材料と判断したアンクとが契約し生まれたのが『仮面ライダーオーズ』でした。重症だった泉刑事の体に乗り移ったのも、アンクにとっては道具であり、手段のひとつ。

人の存在を蔑んでみている部分があり、メダル集めのために、映司や宿主である泉を利用するが映司、そして泉の妹である比奈とのかかわりの中でアンクの心模様に少しずつ変化が訪れていきます。特に一度は映司と袂を分かった後のアンクの行動には映司と過ごした日々が忘れられず色濃く残り、結果的に自分の目的のためではなく映司を庇い自身を形成するメダルにヒビが入ってしまいます。そして最後の戦いの時、全てを映司に託し、グリードを撃破するがその瞬間にアンクのタカ・コアが割れアンク自身も消滅してしまうのです。しかし、無味無臭、味気のない世界を生きるはずのグリードだったアンクは、映司と共に過ごしたことで「充足し」消滅します。

ヒビ割れたコアメダルを見た辺りからアンクの消滅は決まっていたにも関わらず、あまりにも懸命に映司と共にあるアンクに、信じたくない思いが強かったことは印象に深い。戦いを終え、再び旅をする生活へと戻る映司の傍らにアンクの右腕の幻影の姿が映っていた姿に、いつか戻ってきて欲しいと願うファンは多かったそういう意味で、今回の『仮面ライダー平成ジェネレーションズ FINAL』で火野映司とアンクが揃うということは、オーズのファンにとってなによりも嬉しいことではないでしょうか。

『仮面ライダーフォーゼ』はオーズの次に放映されたシリーズ13作目。2012年から13年の番組です。
「宇宙キター!」の名セリフが印象的。最後まで、ラスボスが誰なのかということを探る以上に、高校生ライダーらしい彼らの絆、そして最終回にあかされる秘密に、最後まで目が離せない作品でした。

学園生徒全員と友達になる目標を掲げたかなり変わった転校生の如月弦太朗、彼は転校初日に校内の暗黙のルールに従わず、キング大文字隼とクイーン風城美羽に目をつけられてしまうのですが、その現場に怪人ゾディアーツがあらわれてしまいます。逃げ出した大文字たちに対してゾディアーツに立ち向かう弦太朗、でも適うはずもなくあわやというところで助けに入ったのが、歌星賢吾が操縦するパワーダイザーでした。『アストロスイッチ』を使いフォーゼに変身してゾディアーツと単身戦おうとする病弱な賢吾をみた弦太朗はドライバーを奪いゾディアーツを退けました。しかし、これで賢吾とすぐに打ち解けられたわけではありません。そしてまたフォーゼもこの時点では『仮面ライダー』という存在を知らないために名乗っていないのが、この作品のもうひとつの面白さです。

アストロスイッチの開発者だった父を17年前に失い、1年前の誕生日に贈られたゲートスイッチの力でラビットハッチへのゲートを手に入れて以来、父親の遺した資料を基にアストロスイッチとフォーゼドライバーに関する研究を行っていた賢吾と距離を縮めていく弦太朗の姿は時にお節介にも、うるさくも映ります。でもそれは彼が持つ情に脆いまっすぐな性格の持ち主や正義感の前には賢吾も徐々に心を開いていくしかありません。もちろんその間には弦太朗の幼馴染みで、宇宙に憧れを抱く友人ユウキの存在は欠かせません。(賢吾の話は書ききれないので今回はここまでにしておきます)

学園ドラマの様相を呈していることもあり、大文字や美羽との交流も描かれていますが、彼らの話は決して明るい学生ストーリーではありません。チア部部長の美羽はクイーンフェスで自分のとりまきと思っていた女子生徒にはめられてしまうが弦太朗の活躍に一目を置き、仮面ライダー部に入部します。入部後、部では部長として、そしてクイーンとして振る舞う彼女が弦太朗に対して女の子らしい感情を持つのはなんだか不思議な感覚だ。あの瞬間美羽は弦太朗に少しずつ惹かれていたのかもしれません。その思いが告げられることはありませんでしたが、弦太朗に想いを爆発させる彼女もみてみたかったと思うのは意地悪でしょうか?

そしてもうひとりの上級生、大文字もまたキングでありながら父親の期待に応えなければならないというプレッシャーを抱えて生きており、周囲から反発され、孤立していくことに恐れた大文字自身、反発するアメフト部の部員と対立してしまい挫けてしまいます。大文字もまた弦太朗と心を触れ合わせることで、青年らしい面を取り戻し、友人となるだけでなく、パワー自慢な面を生かしてパワーダイザーを使いこなしてフォーゼをバックアップし、逃げることなく立ち向かっていくことになります。

他にも仮面ライダー部には友子やJK(神宮海蔵)といった一風変わった学生が登場しますが、彼らの心の弱さ、友人関係の苦しみを、弦太朗は持ち前の正義感と真っすぐさで受け止めていきます。そして、仮面ライダーメテオとなる朔田流星もまた弦太朗との出会いで変わっていきます。最初は弦太朗たちを目的のために利用していましたが、身代わりになった弦太朗達に一度は友情を結びますが、親友のためにアリエス・ゾディアーツに止めを刺そうとするフォーゼに攻撃を加えてしまい、弦太朗を傷つけてしまいます。目的を果たし友人を救っても再び昏睡状態に陥ってしまったことで弦太朗と友達になりたかったことに気付いた彼は、ライダー部を助けるために、生身の体で護ろうとしその心で弦太朗と真の友情を結びました。彼もまた、弦太朗によって本当の気持ちに気づけたひとりなのです。

彼らは当たり前の学生で、弱い部分も、もろい部分も、見ていて気に入らない部分も持っていたりします。同時に彼らはコンプレックスも抱えていて、ひとりでは到底抱え込みきれない悩みにもなったりします。そんな時、友達になろうと手を差し伸べる弦太朗の姿は眩しく、いままでのどの仮面ライダーよりも、身近に感じられました。

だからでしょうか?今回の映画にあたって、ライダー部のメンバーのSNSでのコメントがまた彼ららしいです。JK(神宮海蔵)を演じた土屋シオンさん (@shion_08_07)は「【通りすがりの情報通より】やっぱり俺の「俺たちの」親友は、永遠に学園のヒーローなんだよ。お帰りなさい。」、大文字隼を演じた冨森ジャスティンさんは (@justin_tomimori)土屋さんのツイートを引用し「だな。【学園のキングより】」。
本当のところをいいますと、ライダー部揃って出演して欲しいと願うのはわがままでしょうか?

高校生だった主人公・弦太朗も、今回の映画ではおそらく卒業をしている?と思うところですが、予告編を見る限り、リーゼントの髪形は健在。相変わらずの姿に一ファンとしてはほっとしてしまいます。そして彼は今度はどんな方法で他のライダーたちと友情を結ぶのか、彼の明るい「宇宙キター!」が画面から聞こえるのがとても待ち遠しいです。

他にも、ガイム、ゴーストなど、過去作品のライダーが出演します。それぞれのライダーに思い入れは強いですが、今回のキャスティングを見て、特に大きく心の震えた、ふたりのライダーを紹介しました。

「ビルド&エグゼイド」製作委員会 (C)石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

(天汐香弓 / 画像提供・東映)