「脳卒中」というと、年寄りがなる、冬に多いというイメージも多いかもしれません。しかし、脳卒中と一括りにされる脳血管疾患は夏場でも起こります。熱中症と間違われる事もある夏の脳血管疾患について、実体験を通して夏のコミックマーケット(以下、コミケ)に参加する人に向けた注意喚起を行っているツイートがツイッターで話題になっています。

 「自覚の無い脱水症状から脳梗塞発症しちまった。。。 土日に大汗かいた時の水分補給が足りなかったのがトドメだったかもだそうです。 なお、今回は軽度なので薬で経過観察です 夏コミ参加する皆様。マジで注意しませう。喉が乾いてなくても汗かいているなら定期的に水分補給を!」というツイートで注意喚起を行っているのは、ツイッターユーザーのTAHOさん。このツイートを見た人たちからは心配する声やお見舞いの声が続々届いています。

 TAHOさんが異変に気が付いたのは、夜中の事。左の手足に同時に軽いしびれを感じた事が切っ掛けだったそうです。最初は、疲れからの筋肉痛かと思って一晩様子を見ていたそうですが、翌朝になっても左手足のしびれは変わらず。何かで見た「半身のしびれは脳に原因があるかも」というのを思い出して念のため医療機関に受診したところ、脳梗塞と診断されたそうです。幸い、梗塞自体は軽度なものだったので服薬治療のみで経過を見ている状態という事。手足の軽度なしびれのみという症状だそうです。

■ 夏場は血栓がつまりやすい

 TAHOさんの場合、血栓自体が小さかった事と年齢も40代とまだ若いという事もあって内服治療のみの軽度な状態で済んでいますが、若いからと言っても安心できないのもまた事実。脳梗塞になる条件が揃うと、若くても脳梗塞などの血栓症になる可能性が上がります。

 血管内に血栓ができやすい条件は以下の通り

1.多量の汗をかいた後に水分を摂らず、血液が濃縮されている状態の時
2.高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙、加齢などにより悪玉コレステロールが血管内の内側に多く付着している状態の時
3.体を動かす事が少なく、血流が滞りがちな状態の時

 夏場、特にデスクワークを長時間続けている人などは1と3に当てはまりやすくなる人も増え、結果的に夏場に血栓症が起こりやすくなります。

サラサラ血液とドロドロ血液(イラストACより)

■ 血栓症は深刻な状態になる事が多い

 長時間水分の少ない状態で体を動かさずにいると起こりやすい血栓症、詰まった部分によっては命にも関わる事態になります。特に肺の血管に詰まる肺塞栓症はそのまま呼吸停止から死に至る事も。脳梗塞も、先述のTAHOさんの様に軽い症状のものから意識障害や体の片麻痺など運動機能障害からの嚥下障害や、視野の半分が欠損する、記憶障害など様々な重い後遺障害が残る可能性もあります。

 心筋梗塞や、エコノミークラス症候群にも代表される、静脈血栓塞栓症による肺塞栓症や深部静脈血栓症もこの条件で起こりやすくなります。血管内にできた血栓が血流と共に流れてどこかの血管に詰まる事で起きる訳で、脳梗塞もこれに当てはまるのです。

 夏場、汗をかいているにも関わらず水分の補給を小まめに行わない、体を適度に動かさない、高脂肪な食事を続けたり喫煙がやめられないなどはこういった血栓症の大きなリスクとなります。

心筋梗塞と狭心症(看護roo! 看護師イラスト集より)

■ 熱中症と間違われやすい脳梗塞の症状

 熱中症では症状で1~3度の重症度に分けられますが、その中には手足のしびれも含まれています。ここで注意しておきたいのが、症状の見分け方。熱中症による症状の出現は全身的です。両手が上手く握れない、体を上手く動かせないなどありますが、脳梗塞の場合は血管が詰まった部分で出現する症状が違ってきます。左の手足に力が入らないが右は問題なく動かせる、口角が片方だけ下がって笑顔が上手く作れないなど、体の半分だけに症状が出るのが特徴と言えます。

 熱中症で出ている症状であっても、医療機関への受診はできるだけ早いうちにしておいた方が無難です。その後の症状悪化を防ぐ事にもなります。もし脳梗塞の症状であれば、早い段階での治療により後遺症が少なく済む、運が良ければ後遺症がない状態にまで回復できる可能性もあります。

■ 怖い病気でも予防で回避できる

 以上の様に、血管内に血栓が詰まる事で起こる病気には命に関わる怖いものが多くある事がお分かり頂けたかと思います。こういう事を防ぐには、血管内に血栓ができやすい条件と逆の事を行うのが一番。すなわち、

1.こまめな水分補給を行い、血液の濃縮を防ぐ
2.血中のコレステロール値が上がらない様に食習慣を見直し、血圧をあげない様適度な運動を行う、禁煙をする
3.毎日の作業の間に運動を行う時間を設ける、決まった時間に行う習慣をつける

 病気は予防が一番の薬と言えます。病気になってからでは治療費もかかり、体に負担のかかる治療やリハビリも必要となってくる事もあります。適度な水分補給と適度な運動、食事の見直しで健康を維持する事を心掛けましょう。

<参考>
脳卒中 | 病気について | 国立循環器病研究センター 循環器病情報サービス

<記事化協力>
TAHOさん(@t_taho)

(梓川みいな/正看護師)