「うちの本棚」第十六回は永井 豪の『魔王ダンテ』を取り上げます。
永井 豪の単行本はこの『魔王ダンテ』の1巻か『デビルマン』の1巻あたりが、最初に買ったものではなかったかと思う。
もっとも「ぼくらマガジン」はときどき読んでいたので、断片的には『魔王ダンテ』も読んでいたはずなのだが、記憶の中では同誌に連載していた『ガクエン退屈男』の方が印象が強い。

人類が地球上に登場するずっと以前、地上に華々しい文明を築いていたわれわれとは別の人類がいた。しかし宇宙から「神」を名乗るものたちが侵略をはじめ、都市は破壊され人々は無残に殺されてていった。

主人公ダンテは自分の発明した超兵器を積み込んだ小型ロケットで神と戦おうとするが、運悪く恐竜に襲われてしまう。しかし、神を倒し平和を取り戻そうとする意志が、超兵器と恐竜、そしてダンテの肉体をも取り込んで、全く新しい生命となるのだ。それが後の人類、つまりわれわれが「悪魔」と呼ぶ存在なのである。

ダンテ以外にも強い意思の力でさまざまなものと自分の肉体を合成するものが次々と現れ、神々はその攻撃方法がそのような現象を生み出すものと判断し、別のやり方で旧人類の抹殺を遂行していく。そして人類の祖先である類人猿の中に入り込み、新しい人類として進化させ、新たな地球の歴史を作っていくのだった。

圧倒的に数の少ない悪魔たちはやがて新しい人類の前にその姿を現すことが無くなり、伝説や言い伝えにその名を残すことになる。そして、現代にダンテは復活し、神の手からこの地球を取りもどさんと活動をはじめるのだった。

人類以前の旧人類、それが悪魔であり、現代に復活し人類に襲いかかるというのは、のちに描かれた『デビルマン』と共通する。というのも、本作はアニメ化にあたり『デビルマン』として作り直されることになった、元の作品というべきものだからだ。
『魔王ダンテ』がそのままアニメ化されなかった理由はいろいろあるだろうが、そのひとつのようそして連載誌である「ぼくらマガジン」の休刊により、作品自体が未刊だったことが考えられる。したがって『デビルマン』では『魔王ダンテ』で描かれなかった神と悪魔の戦い「ハーマゲドン」が描かれることになった。

また『魔王ダンテ』としてものちに「マガジンZ」誌上でリメイクされ、神と悪魔の最終決戦、その後の地球の姿が描かれた。
『デビルマン』はまぎれもなく漫画史上に残る名作だが、その原型である『魔王ダンテ』も同時に読んでもらいたい作品である。とくに『デビルマン』における悪魔の合体能力は『魔王ダンテ』を読むことでより明確になるのではないだろうか。

初出:ぼくらマガジン
書誌:サンコミックス/全3巻
   ソノラマ文庫/全3巻
   サンワイドコミックス/全2巻
   講談社コミックス/全3巻

■ライター紹介
【猫目ユウ】
ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。