「うちの本棚」今回は永井豪の『おいら女蛮』です。その名前から性別を間違えられて転校手続きをされてしまった主人公が、女子生徒として通うことになった中学は、実はとんでもないところだった…という永井 豪ならではのワルノリとお色気、ギャグ満載の作品です。

「少年サンデー」連載の作品で、最初の単行本は小学館の少年サンデーコミックス。その後サン・コミックスでも刊行され、サン・ワイド・コミックスとしても刊行。さらにその後マガジン・マガジンから未収録だった読み切りのエピソード1編を追加して刊行された。


ほかに読み切りのエピソードが2編あり、これは講談社の『永井豪ギャグ傑作集』(全3巻)にバラバラに収録されている。

『デビルマン』以降、『バイオレンスジャック』でも永井 豪の絵は多少変化をみせたのだが、その『バイオレンスジャック』のあと「少年サンデー」誌上に連載されたのが本作であり、ここで大きく絵に変化をみせているという印象がある。全体としてそれほど大きな変化は感じられないかもしれないが、目、特に瞳の描き方がそれまでの作品とは違うのだ。これは意外と違和感を与えるもので、個人的に本作を永井豪作品の中でも独特の位置に置く根拠になっている。

アイデア自体は単純で、女 蛮子(すけ ばんじ)という名前の主人公の少年が、その名前から女子に誤解され、転校した中学校で女子生徒として過ごすことになる、というもの。主人公の名前に対応するように同級生に男 男子(だん おとこ)という女子生徒が登場したり、大小数えきれない不良グループ(番長グループ)が存在し、その中には自作である『バクラツ教室』のメンバーがいたりと、遊び心満載の作品でもある(作品のスタート時点では『デビルマン』の牧村家の隣に住んでいる設定であり、美樹とは同級生だったり、最終的には『キューティーハニー』にもつながっている)。

また、主人公の過ごす時間を省略することなく追っていくという構成であり、最初の単行本にして7巻ある内容は、3日間の間に起こる出来事ということになっている。その後水島新二が『ドカベン』で一試合に相当の時間をかけていたことが話題になったりもしたが、本作品はそれに先駆けたものだったともいえるだろう。

最初は男子もセーラー服が制服となっているのか、とそのまま登校した主人公が、実は性別を間違えられていたとわかり、しかしそのまま女子として転入することになるわけだが、ここは永井豪らしく、女子に混ざっての着替えシーンなどが見どころになっていたりする。
「少年サンデー」では『あにまるケダマン』『ドロロンえん魔くん』とSFやホラーを匂わせつつギャグがメインの作品を続けて連載してきた永井 豪だったが、本作ではアクション的ではあるが、正面からギャグ作品を描いていたような気もする。結果的にすっきりした完結とはなっていなかったためか、連載終了後も他の作品にゲスト出演したりもしていた蛮子。キャラクターがハッキリしていただけに作者としても使いやすいのかもしれない。

書 名/おいら女蛮
著者名/永井 豪
収録作品/おいら女蛮
発行所/朝日ソノラマ
初版発行日/第1巻・1987年3月20日、第2巻・1987年3月20日、第3巻・1987年4月20日、第4巻・1987年5月20日
シリーズ名/サン・ワイド・コミックス

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。