ネット上にあふれるさまざまな「オイシイ話」。「カンタンに稼げる」「月○○万円収入増」といった謳い文句で、これまでにもさまざまな層がターゲットにされてきましたが、その魔の手はイラストレーターにも伸びているもよう。

 漫画家兼イラストレーターとして活動する「クマ」さんが、「ありえないこと」として、Xで注意を呼び掛けています。

【注意喚起】甘くてキケンな誘惑は私たちの身近にあります。

「絵の仕事」
「誰でもカンタンにできる」
「すぐにお金になる」

イラストレーターという魅力的な職業への憧れや在宅ワークで手軽にできるという時間がない人の悩みを的確についてきます。これは「ありえないこと」だと知ってください。

 こうつぶやいたクマさんの投稿には漫画も添えられており、そこには生後間もない赤ちゃんを子育て中の女性に、スーツ姿の男性が絵の仕事を斡旋する様子が描かれています。

 「絵の経験がなくても」「初月30万円」「在宅可」などどいった甘い言葉に釣られ、「ちょっと聞いてみようかしら……」と女性。これをすぐに「絵描き」のキャラクターが「それ詐欺の可能性が高いです!」と制止するという内容です。

クマさんが投稿した漫画

 今回クマさんが注意喚起の投稿を行ったのは、実際にこうした詐欺の被害に遭い、心労から体調を崩してしまったことで絵を描くことをやめてしまった方がいたことからだそう。

 漫画の通り、こうした手口は100%に近い確率で「信用できない」と言えます。どの業界でも共通して行われている常套手段ですが、特に絵の仕事は技術職。長い年月をかけたとしても、それでも満足に収入を得られるのはごく一握り……という厳しい世界です。

 またこの手の勧誘はSNSのDMや、YouTubeの広告などを通じて行われています。DMの場合は信用する人はあまり多くはないでしょうが、広告に至っては「つい」信用する人もいることでしょう。

 しかしながら広告だからといって、簡単に信用して良い時代ではありません。インターネット広告は誰でも手軽に出稿できる一方で悪質なものも多く存在することから、昨今では「詐欺師のワナ」に使われる機会が増えています。

■ ホラー漫画家・洋介犬さんも呼び掛けに反応

 また、この呼び掛けに共感する形で反応したのは、ホラー漫画家として活躍する「洋介犬」さん。

ホラー漫画家として活躍する「洋介犬」さんの投稿

 独自の調査を元にその手法を分析しています。

「『すぐに、◯◯しながらでも稼げる』とハードルが低く稼げるように過剰に思わせる」

「『限定招待講座』等と特別感でそそのかして高額コースへ誘導する」

「『LINEに誘導してそこで情報商材を売る』といった、より具体的な手口を公開しており、従来古来からの詐欺商法をイラスト・漫画分野に転用しているもようです」

 加えて、自身の過去のバズ経験から、「確実にバズる方法、確実にウケる漫画を描く方法など存在しません」「運や読めない要素が多く、それを明文化できるとはとても思えません」と断言。

 やはり、ラクをして売れっ子作家になる、稼げるようになる、確実にバズる方法など存在しないのです。そんなものがあれば、とっくにプロ編集者やプロ漫画家が応用しているはずですから。

 さらに翌日には「商法として『DMを送って来てイラストのコンサルタントやプロデュースを申し出て来る』、SNSで『バズって稼ぐ方法教えます』などのアカウントを開設し、講座参加者を募集している2パターンが存在するもようです」と、調査結果を追記。

 前者はロクに相手の絵も見ずに話を持ちかけるようで、手当たり次第。後者は応募者に対し非常に丁寧に、親近感を持てるよう巧みに誘導し、次第に個人情報等を収集し、zoomもしくは実際に会うことを提案。その流れでネットワークビジネスに勧誘される……なんてことも。

 こうした悪質な勧誘が広がっていることを「イラスト/漫画を使って利益を得る方法が増えたことの弊害」と推測した洋介犬さん。

 もちろん、利益を得る方法が増えたこと自体は歓迎すべきですが、同時にイラスト/漫画が描ける潜在的人口は多くなったということであり、詐欺のターゲットにされやすくなった、ということを再認識し、より一層の自衛に努めることを呼び掛けています。

■ 少しでも迷ったら周囲に相談 客観的な意見を聞きましょう

 もちろん、すべてのイラスト講座、商材が悪だとは言いません。中には本当にイラストの描き方、売り方を懇切丁寧に教えてくれる人もいるでしょう。

 この人は信用できるのだろうか?迷ったら「周りの人、Xでもいいです、絵師仲間に相談してみてください。1人で抱え込まないで」とクマさんは言います。

 加えて、その講座、商材の評判を、検索して調べてみるのも良いでしょう。教え方が上手い人、本当に身になる商材であれば、多方面から高い評価を得ているはずです。自己判断だけでなく、客観的な意見を取り入れることが重要です。

 そして、もしも被害に遭ってしまった場合は、下手に相手とのやり取りを繰り返すのではなく、速やかに警察や消費者センター、弁護士に相談しましょう。

<記事化協力>
クマさん(@cumacuma_cuma
洋介犬さん(@yohsuken

(山口弘剛)