日々巧妙化していく、SNSを通じた詐欺の手段。今回接触を図ったのはユーザー名にて「PayPay配布」をうたうXのアカウントです。

 一見するとこれまでと変わらない詐欺アカウントに見えるのですが、プロフィール欄には「PayPay倍増は全て詐欺」とあるなど、他のアカウントとはちょっと様子が異なるもよう。いったいどんな内容なのでしょうか。

■ 投稿へのいいねとリポスト、アカウントのフォローだけでPayPay”配布”するらしい

 当該アカウントの投稿によると、条件を満たした方全員に1回限定でお小遣いとしてPayPayを配布するとのこと。

PayPay配布を行っているアカウント

 「【PayPay全員配布企画】“全員”にお小遣いPayPay配布!!」に加え「#PayPay配り」「#お金配り」といったハッシュタグを添えて、気軽に貰えることをアピールしています。

気軽に貰えることをアピール

 参加条件は「投稿へのいいね」「リポスト」「アカウントのフォロー」、そしてDMもしくはリプライでの連絡です。

参加条件

 なお、貰える金額については投稿に記載されていませんが、添付された画像には、アカウントのIDと共に、「40万円の残高があるPayPayの画面」が写っており、期待感を煽っています。

 ちなみにこうした残高の写真については、いくらでも改ざん可能であることを過去の記事でも紹介しているので、あまり信用しないようにしておきます。

 とはいえ、どんな内容なのか気になるので、早速条件を満たしてDMを送信。そのまま待っていることおよそ3時間後……先方から連絡が来ました。

■ 早速課せられた更なる条件 ポイ活サイトへの登録が必須

 そこに書かれていたのは、PayPay配布までの更なる条件。なんでも、指定のアンケートサイト、いわゆるポイ活サイトに新規登録を行い、その際に紹介コードを入力して欲しい、というものでした。

PayPay配布までの条件。すでに話が違う

 勘の良い方であれば、この時点で手口を察することができるでしょう。そう、これは知り合いをサイト登録させることで、その紹介マージンを得ようとする手口です。

対象のポイ活サイト

 ちなみにこのポイ活サイト自体は、しっかり運営されているサービスです。決して怪しいサイトではないので、その辺は誤解なきよう。

 相手の狙いはある程度把握できましたが、もう少し誘いに乗ってみることにします。指定のポイ活サイトに登録するために必要なのはメールアドレスのみ。その途中で紹介コードを入力すればOK……と。たったこれだけで登録できました。

■ ポイ活サイトで貯めたポイントをPayPayに交換してね それって配布じゃない気が……

 これを投稿主に報告すると……なんとも驚きの返信が寄せられました。PayPayは配布ではなく、ポイ活サイトで貯めたポイントをPayPayに交換して受け取って欲しい、とのこと。それって“配布”じゃない……。

ポイントを貯める必要があるようです

 しかも、即交換できるわけではなく、いくつかのアンケート等を経てポイントを貯める作業が必要とのこと。初めに見た条件ともだいぶ異なっています。入会時にポイントがもらえるので、多少アンケートに答えれば100円分くらいは交換できそうですが……なんだか腑に落ちません。

PayPayが貰えるまでの流れ

 この点について、まず媒体名を伏せて(後にしっかり名乗りました)これは取材としての潜入であること、そして“配布”をうたっておきながら実際は配布ではないため、詐欺にあたるのではないかという点について相手に問い合わせたところ……「利用規約には違反していない」「刑法上の詐欺には当たらない」とのこと。

詐欺ではないと説明される

 さらには「私のDM通りにすれば100円分は簡単にもらえちゃうんです」という主張までありました。

問い合わせても悪びれる様子は一切なし

■ ポイ活サイトの運営会社に問い合わせてみた

 今回の件は個人情報や金融情報を不正に抜き取るといった、極めて悪質なものではありませんが、やはりPayPay”配布”という点に関しては嘘が含まれていました。プロフィールにあった「PayPay倍増は全て詐欺」の文言も、ただ相手を信用させるだけの建前だったのでしょう。

 こちらが手間や労力をかけて、相手においしい思いをさせるだけです。皆様はくれぐれも、こうしたアカウントには近付かないようにしてください。

 なお、編集部では誘導されたポイ活サイトの運営者に対して、一般窓口、報道向けに公開されている広報アドレス双方から問い合わせを行いました。

 問い合わせた内容は、まずPayPay配布をうたってサイト登録を促しているアカウントがあることを伝え、「誤解を与える誘導方法であり、利用規約的には問題ないのか」という点。

 これに対し、広報からは問い合わせから5日たった現在(4月4日に送信)まだ回答は届いていません。一方、一般窓口からはすぐ回答が得られましたが、内容は次の通り。

「頂戴した内容につきましては、社内にて共有し、今後の対応について協議させていただきたく存じます」

 「社内で協議する」のみに回答をとどめ、会社としての明確な考えは示されませんでした。

■ PayPay配布を行っていたアカウントはID変更し投稿を全削除

 そしてPayPay配布を行っていた該当アカウントについてですが、一通りの情報が得られたので、先方には媒体名を告知した上で、ポイ活サイトに問い合わせてみる旨を伝えたところ……。

 わずか1時間後に、アカウントが消えていました。といっても、ID変更が実態。投稿は全て削除され、名前も変更。加えて、取材でやりとりしていた記者のアカウントはブロックされてしまいました。

ID変更を行ったもよう

 ちなみに現在でも勧誘活動を行っていますが……。考えを改めたのか、該当の「ポイ活サイト」の名前を堂々あげた上で、招待コードを配布しています。

(山口弘剛)