毎回、災害が起きると噂される「ノストラダムスの予言」。2024年1月1日に起きた「令和6年能登半島地震」も「的中させた」と、国内外で話題になっています。

 果たして本当でしょうか?該当の予言を確認してみました。

 ミシェル・ノストラダムス(1503-1566年)とは、今から約500年前に存在した人物。今では「予言者」として知られていますが、医師であり占星術師という当時としては最高レベルの知識をもつ「知識人」でもありました。

 その活動を通じて、いくつかの本を書き残しています。その一つが「予言集」とよばれるものです。ただし内容には、具体的な予言が書かれているわけではありません。また、本来は「百詩篇」とよばれる詩集と、散文をまとめたものが「予言集」として扱われています。

 書かれている内容はどれも難解な「詩」。それを後の研究者がこれから起きそうなことと紐付けているのが「ノストラダムスの予言」の実態です。

 ということで、今回話題になっている「令和6年能登半島地震」の予言にあたる詩を確認してみましょう。

■ 該当は百詩篇第1巻にある17番目の詩

 該当は百詩篇第1巻にある17番目の詩です。なお、以下はウィキソースからの引用ですが、岩波人文書セレクション「ノストラダムス予言集」でも、訳が若干ことなるものの(言い回しなど)同じ詩が書かれているかを二重で確認しています。

「40年間、イリスは現れないだろう。
40年間、(それは)毎日見られるだろう。
旱魃の大地はますます乾燥していくだろう。
(イリスが)目撃されるときには大洪水。」

(ウィキソース「百詩篇第1巻-17」より引用)

 ここでいう「イリス」とは虹の女神のこと。「虹は現れない」といった風に置き換えてよむといいでしょう。

 この箇所で予言として今流れているのは下2行。わかりやすく訳すると「乾いた大地はますます乾燥し、虹が目撃されるときには大洪水がおきるだろう」といったところなのですが、ここがオカルト界隈では「地震」や「津波」に紐付けられています。

 能登半島や地震といった言葉はなく、唯一かすっていそうなのは「大洪水」という一文だけ。でもそれ以外は全く無関係な内容なので、やはりどう考えても「強引解釈」としか言えません。

 もし仮にこの詩が予言ならば、前2行「40年間、イリスは現れないだろう。40年間、(それは)毎日見られるだろう」の箇所を、虹は雨が降らないと現れないので「長期の干ばつ」から「地球温暖化」に紐付けて解釈するほうが後の文ともつなげやすく、「旱魃の大地はますます乾燥」は「干ばつする面積が増え」とでもしたほうがソレっぽくなります。

 筆者によるなんちゃって予言解釈でこれをつなげると、「40年間、地球温暖化が進み、干ばつする面積が増え、極地の氷がとけて大洪水になるだろう」といったところ。

 もちろんこれは予言ではありません。現在ある環境問題と照らし合わせ、筆者が適当に文を紐付けただけです。ただしこれに「ノストラダムスの予言」という冠をかぶせると、よりソレっぽくなってしまうのが不思議であり、「予言ができるまで」とはこんなもの。

■ オカルト趣味で大事なのは「時をわきまえること」

 筆者は長年オカルト関係を趣味としておりますが、オカルト趣味で大事なのは「時をわきまえること」。実際災害が起きているときに変にまき散らすのは「デマ」でしかなく、最悪の事態「パニック」を引き起こします。

 特に気をつけたいのが「子どもたち」の心理。筆者くらいの40代以上の人は「ノストラダムスの大予言」や「1999年地球滅亡説」の洗礼をうけて育っていますが、今の子どもたちは「予言」が起こす混乱を全く経験せずに育っており、無駄に不安を与えるだけになります。

 オカルトや予言は、何も起きていない「平時だからこそ楽しめるもの」。今はまちがいなく楽しむタイミングではありません。何事もわきまえて行動するよう、心がけましょう。

<参考・引用>
岩波人文書セレクション「ノストラダムス予言集」百詩篇第1巻-17(P25)
ウィキソース「百詩篇第1巻-17

※初出時、一部誤りがありました。300年× 500年○でした。訂正しお詫びします。

(宮崎美和子)