1990年から1991年にかけ、NHKにて放映されたTVアニメ「ふしぎの海のナディア」。

 ジャンとナディアによるボーイ・ミーツ・ガールなストーリー展開と、劇中登場する様々なメカとSF設定により、多くの少年少女を魅了した1990年代を代表するアニメです。

 そんな冒険譚に魅了されたかつての少年が、物語のキーアイテムである「ブルーウォーター」を再現しました。

 「子供からのオファーシリーズ『ブルーウォーター作って』ちょうどクリアレジンの出力で試したいことがあったので作ってみました。一体成形で中にモールドしてみたかった。成功~。」

 榎木ともひでさん(以下、榎木さん)が、そんなつぶやきとともにTwitterに投稿した4枚の写真。そこに写し出されていたのは菱形の造形物。

 青く透き通るその見た目は、空よりも鮮やかでまるで宝石のよう。さらに内部には、何やら古代文字のような紋様も刻まれています。

 榎木さんが投稿したのは、「ふしぎの海のナディア」において、主人公のナディアが着用し、オープニングテーマの曲名にもなった「ブルーウォーター」。これを作ったのは、他ならぬ榎木さんご自身。

 榎木さんの職業はフィギュア造形師。作品群は多岐にわたり、近年は東京都町田市にある「スヌーピーミュージアム」で限定発売されているカプセルトイや、海外限定で販売展開されているポケモンフィギュア、さらに美術家の村上隆氏のアート作品「デビルko2」の原型を手掛けたりと、活動範囲は世界に及ぶ人物です。

 そんな榎木さんもまた、「ふしぎの海のナディア」に大いに魅了されたひとり。

 「放映当時、僕は中学生だったんですが、ナディアの『日常から非日常な出来事に巻き込まれる』冒険ストーリーに魅了されました。また、超古代文明の科学力の設定に胸を熱くし、毎週ワクワクしながら見ていましたね」

 そう当時を振り返る榎木さんですが、今回ブルーウォーターを作るきっかけは、別にありました。

 「実は小学生になる僕の娘が、Amazonプライムでナディアを観てハマりまして。それで、『ブルーウォーターを作って』とせがまれたのが理由なんですよ(笑)」

 榎木さんは今回、ブルーウォーターの再現をレジンを用いて行っています。しかし、ブルーウォーターといえば、先述の通り、光を照らすと浮かび上がってくるような、内部にある独特の紋様が最大の特徴です。レジン細工は、固形物のようなものを混ぜ込んで作ることはありますが、ブルーウォーターのような細かな模様のついたものとなると、かなり困難な作業になるのでは。

 「なので、『クリア素材の塊の内部に中空で模様を描く』という方法でチャレンジしてみたんです」

 この榎木さんのアイデアですが、まず専用ソフトで作ったデータを、光波形3Dプリンタで出力。このデータというのが、「UVライトにより固まるレジン液を一層ずつ固めて出力」というもので、つまりデータの時点で、ブルーウォーターの中の文字が空洞になった「中空」になっています。

 ただし、これを施しても、「中」にレジン液が残ってしまうと、当然ながら文字は出現しません。

 そこで榎木さんは、この文字を一筆書きのイメージで全て繋げることに。さらに空気の抜け穴と、液の抜け穴をいくつか空けます。

 そんな「文字バイパス」データを制作し、さらにクリアレジンで3Dプリントして作られました。

 まるで理科の実験かのような製作過程。しかしながら、この作業自体もかなりの難作業で、榎木さんも「長期戦」を覚悟していたそうだったんですが……。

 「それがなんと1回で成功してしまったんですよ。『これは難しいぞ』と思っていたんですが、あっさり出来てしまいました(笑)」

 なんという“一発回答”。これにはジャンも思わずうらやむのでは。

 そうして作り上げた「原石」を青くして、先端に引き輪をつけた金の留め具を外枠にはめ込み、さらに革紐をつけ「首飾り」に。これにより先ほどの青いレジンアートは、榎木さんをはじめとしたかつての少年少女たちが、目を輝かせながら見ていた「ブルーウォーター」に変貌。

 さらに榎木さんは、今回の投稿のリプライ欄にて動画も投稿。ブルーウォーターをぐるっと回転させて実物の立体感を伝えています。

 リプライ(返信)欄には、先述の森川美穂氏が歌った「ブルーウォーター」を口ずさむ方も続々と現れ、榎木さんが生み出した輝きが、多くの方に伝わることとなりました。

 ちなみに今回反響を呼んだ投稿のリプライ欄には、更に多くの人が反応しそうな写真も掲載しています。

 そこに写っていたのは、なんと往年の名作ジブリ作品「天空の城ラピュタ」にて登場する『飛行石』と、ブルーウォーターとのツーショット写真。

 「これも娘にせがまれまして(笑)」と、榎木さんは愛娘のために「飛行石」も作ったそうですが、こちらもシータが着用していた本物そっくりの大傑作。

 人気フィギュア造形師を容易に動かす娘さんの影響力に、少々怖れを抱きつつも、この「夢の競演」には、筆者を含めた多くの「元少年少女」たちが胸高鳴るものとなっています。

 まさに「子供が抱く好奇心」がきっかけで生み出された傑作。しかしそれは、大人になっても決して色あせることもないこともまた確かなようですね。

<記事化協力>
榎木ともひでさん(@eyewater_e)

(向山純平)