モバイルカードゲーム「クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)」の公式eスポーツリーグ「クラロワリーグ」、そのチーム世界一を決める「クラロワリーグ 世界一決定戦2018」が2018年12月1日、幕張メッセで開催され、初代世界王者には中国代表のNova Esports(ノヴァイースポーツ)」が輝いた。

 幕張メッセに作られた試合会場は、プロレス、それもWWEのイベントのような雰囲気。まさにeスポーツの闘技場といった感じに仕上がった。舞台は日本ということもあり、和太鼓(江戸助六太鼓)による演奏も行われた。


 準々決勝、開幕戦のカードは北米王者Immortals(イモータルズ)と地元日本のPONOS Sports(ポノススポーツ)。2v2でのコンビネーションに自信を見せるPONOS Sportsが初戦をストレートで下すも、続く1v1ではImmortalsのスーパーエース、Royal選手が評判通りの強さを見せ、ライキジョーンズ選手にストレート勝ち。1セットずつ獲得するイーブンとなり、1v1の勝ち抜きの戦となるKOH(キングオブヒル)へ。ここで2番手のライキジョーンズ選手がすばらしい働きを見せた。thegod_rf選手、OHH YEAHHHH選手を連続で退け、ついにRoyal選手を引っ張りだし、1v1での雪辱を期したが、残念ながら敗退。勝敗はみかん坊や選手とRoyal選手との最終決戦にゆだねられた。みかん坊や選手は代名詞ともいえるエアバルーンでの攻撃がハマり、Royal選手を撃破。PONOS Sportsがベスト4へ名乗りを上げた。





KOHでah選手に勝利したライキジョーンズ選手

 敗退したImmortalsは、PONOS Sportsの戦い方について「事前に予測していいた戦術と違うところがあり、それで対応が後手後手に回った面があった」とコメント。日本の観客に囲まれる状況で、ホームタウンアドバンテージやアウェイの雰囲気でナーバスになった面はあったのか、という質問には「観客の盛り上がりはすごかったが、逆にいつもアメリカで感じるような『勝たなければ』というプレッシャーから解放される面もあった」と、純粋にゲーム面でPONOS Sportsが上回ったとの認識を示した。

 もう一つの準々決勝は欧州代表Team Queso(チームケィソ)とアジア代表KING-ZONE DragonX(キングゾーンドラゴンエックス。2v2でTeam Quesoが取るが、1v1でKING-ZONE DragonXが巻き返し、勝負はKOHへ。

 Team QuesoはエースのSoking選手を1番手に起用し、一気に叩く布陣。これに対しKING-ZONE DragonXはエースX-bow master選手を2番手に、そして最後にHo選手が控える形。Soking選手が幸先よく初戦を制し、エース対決に。熱戦はX-bow master選手が勝ち、ゲームは後ろにHo選手も控えるKING-ZONE DragonXのターンに。最後はHo選手がCuchii Cuu選手に圧勝し、KING-ZONE DragonXがベスト4に勝ち上がった。



 合宿までしてチームワークを鍛え上げてきたTeam Queso。敗戦のショックは大きかったようで、メンバーが肩を抱き合ったまましばらく動くことはなかった。個人戦とは違うチーム戦ならでは光景。敗れたものの、仲間として築き上げたものは、きっと今後にも役立つに違いない。

 ミックスゾーンに現れたTeam Quesoは、まだ敗戦のショックが抜けきらない様子。Soking選手は、報道陣からの「X-bow master選手との対戦が勝負の分かれ目になったのではないか」との問いに「全力を尽くしたのだけれども、相手の戦術が上回り、こちらのやりたいことをさせてもらえなかった」とコメント。

 これでベスト4にはアジアのチームが3チーム揃うことになり、eスポーツ先進国の欧米チームが早々と姿を消す展開に。欧米のファンは、これを番狂わせと見るだろうか。これまであまり情報のなかったアジアのチームの戦いぶりに驚きを感じていたかもしれない。

 準決勝第1試合は、日本のPONOS Sportsとラテンアメリカ代表のVivo Keyd(ヴィヴォキード)。もともと5人までで構成されるチーム戦に4人で勝ち抜いてきたVivo Keyd。実は、この世界一決定戦でVivo Keydは、ビザの関係で選手1人と監督、コーチが来日できないという試練に見舞われている。時差のある中リモートでコーチングを受けられはするものの、やはり会場の雰囲気などの情報はコーチ陣には届きにくい。それでもシード権を獲得した実力がPONOS Sports 戦でも発揮された。

 PONOS Sportsが得意とする2v2で、Vivo Keydがいきなりゲーム1を先取。ゲーム2でPONOS Sportsが巻き返してタイに持ち込むが、ゲーム3は再びVivo Keydが取り、2-1でVivo Keydの勝利。Vivo Keydはこの勢いのまま1v1も勝ち、ストレートでPONOS Sportsを下して決勝進出を決めた。

Rolaporon選手とJavi14選手の握手

 PONOS Sportsのみかん坊や選手は、2v2での戦いについて、デッキ構築の時間が3分しかなく、十分に対策が取れなかったとコメント。自信を持っていた2v2を落としたことが大きかったことをうかがわせた。戦った感想を問われると、相手のデッキを読んで対策をしていても、スキル面で上をいかれてしまった、と特に選手個々の強さに差があったと感じていた様子。2017年に開催された個人プレイヤーの世界一決定戦(ロンドン)にも出場していたフチ選手は「海外だとアナウンスが聞き取れないことがあったんですが、日本ですと皆さんの応援なども聞こえたので、本当に優勝したかったです」と、悔しさをにじませていた。

 準決勝第2試合は中国のNova Esports(ノヴァイースポーツ)とアジア代表KING-ZONE DragonXというアジア勢同士の対戦。2v2をNovaが取るもKING-ZONE DragonXが1v1を取り、勝負は勝ち抜き戦のKOHへ。ここでNovaの1番手、Legend選手が無双の強さを見せ、一気に3人抜きを達成してNova Esportsが決勝進出。


 試合後のKING-ZONE DragonX、キャプテンのHo選手は韓国メディアから敗因を聞かれると「特にミスなどがあったとは思えない。全体的にNova Esportsの実力が僕らよりも上だったということなんだと思う」と実力差を感じた様子。次のシーズンに向けてのアプローチについては「まだ何も確定していることはないが……」と答える横から、コーチが「一応、明日ディズニーリゾートに行くくらいだね」とコメント。ティーンエイジャーらしい「今後の予定」に、思わずその場が和んだ。

 決勝はVivo KeydとNova Esportsという、シードチーム同士の対戦となった。実は、2017年の個人プレイヤー世界一に輝いたセルジオラモス選手は、ラテンアメリカのメキシコ出身であり、チームとしてはNova Esportsに所属している。今回はNova Esportsの選抜メンバーに入れなかったセルジオラモス選手だが、ラテンアメリカ勢の存在を感じさせるような決勝の組み合わせとなった。

 その雰囲気を盛り上げるべく、江戸助六太鼓による演奏と、獅子の精が舞うといった日本をフィーチャーしたハーフタイムショウが行われた。



 決勝は2v2の対戦のあと、1v1を3セット行って勝敗を決めるという方式で行われる。2v2は3人の団結力が強いVivo Keydが取ったが、観客席からの「Nova 加油!」という応援のコールが響く中、1v1の対戦ではNova Esportsが3連勝。初代チーム世界一のトロフィーはNova Esportsのもとへ。


優勝した瞬間のLciop選手


破れて頭をかかえるJavi14選手


 Nova EsportsのLciop選手は「この1か月間綿密な準備をしてきて、それが実って嬉しい。監督やほかの選手に感謝したい」とコメント。優勝の要因についてAuk選手は「チームが一丸になれたのが大きかったと思う。しかしほかのチームも強く、特に準決勝のKING-ZONE DragonXには苦戦しました。勝てたのは練習試合をたくさんしたこと、そして応援の声もありがたかった」と語った。

 監督、コーチ不在の中、わずか3人で決勝までを戦ったVivo KeydのKiki選手は「3人で戦ったのはつらい面もあったけれども、団結してプレイできたと思う。3人でのつらさというのは、やはり監督やコーチなど、プレイヤー外からの視点で気づきを与えてくれたり、気分を落ち着かせてくれたりするフォローをしてくれる存在がいなかったことです」と振り返った。Gabo選手は「トロフィーを持って帰れなかったのは悔しいですが、存在感は示せたと思います。これから続く選手たちの励みになればいいと思っています」とコメント。個人世界一のセルジオラモス選手を輩出したラテンアメリカのeスポーツ界を代表して戦ったこの大会を総括していた。

 終わってみれば、Nova Esportsの選手層の厚さを感じさせる大会となった。2017年の個人世界一プレイヤーであるセルジオラモス選手ですら、この選抜チームには入れなかったことはその象徴ともいえる。決勝戦での1v1でNova Esportsが3連勝したことでも、チームメンバー間での競争の激しさ、その中で切磋琢磨して実力を磨き上げていったということが、この優勝につながったのだろう。

 実況を担当したキャスターの岸大河氏は、この世界大会が日本で開催されたことに関して、これまでのリーグ戦実況を通じて日本でもeスポーツの認知度が上がってきていると実感したと同時に、eスポーツファンに貴重な機会を味わっているんだ、ということを伝えるため、1か月にわたって色々考えぬいてきたと語った。また、プレイヤー経験のキャスターとして、選手それぞれの「勝ちたい」という思いや、ファンやこの場に立てなかったプレイヤーの気持ちも全部背負って戦っているんだ、ということを伝えたかった、とコメントした。

 解説を務めたドズル氏は、この世界大会をきっかけに「クラロワ」に限らず、様々なeスポーツの大会が開催されてほしいとコメント。また、今回世界のトップチーム、トッププレイヤーのプレイぶりを目にしたことで、日本以外のプレイヤーやチームを応援する人が増えてほしいと語り、もっとeスポーツのすそ野が広がってほしいという希望も語っていた。

 日本でeスポーツの世界大会が開催されたという貴重な機会。そして世界トップの戦いを目にしたことで、よりeスポーツのすそ野が広がり、より深くファンになるという人が増えるきっかけになってほしいと感じた大会だった。

取材協力:Supercell

(取材:咲村珠樹)