弾道ミサイル防衛(BMD)の要であるイージス艦。そのイージスシステムの最新バージョンによるミサイル迎撃試験が2018年10月26日にハワイ沖で行われ、模擬ミサイル標的を撃墜することに成功したとアメリカミサイル防衛局(MDA)が発表しました。これは日本と共同開発しているもので、海上自衛隊の護衛艦向けに実装される予定です。

 ハワイ沖で行われた「スタンダードミサイル-45」と題されたこの試験は、カウアイ島にある太平洋ミサイル発射試験場から発射された模擬弾道ミサイル標的を捕捉・追尾し、迎撃用のSM-3ブロックIIAミサイルを発射して撃墜するというものです。これは9月に行われた海上自衛隊の護衛艦あたご(DDG-177)で行われた試験と基本的に同じで、アメリカの艦船でも問題ないか検証する目的がありました。

 試験されたのは、ロッキード・マーティンが開発しているイージスシステムの最新版、イージス・ベースライン9.C2(BMD5.1)というもの。レーダーなどのハードウェアは従来のものと同じで、制御するコンピュータプログラムのバージョンアップとなっています。今回の試験ではアメリカ海軍のミサイル駆逐艦ジョン・フィン(DDG-113)のコンピュータプログラムをベースライン9.C2にアップグレードして行われました。

 駆逐艦ジョン・フィンの搭載するAN/SPY-1Dレーダーは、カウアイ島の太平洋ミサイル発射試験場から放たれた模擬ミサイル標的を捕捉。進路を追尾しつつSM-3ブロックIIAミサイルを発射して、見事にミサイル標的に命中、撃破に成功しました。AN/SPY-1DレーダーとSM-3ミサイルの複数で同じ標的(ミサイル)を追尾し、互いに補い合って誤差を修正して弾頭を命中させるということに成功したため、より確実性の高いミサイル防衛が実現できることを実証したといえるでしょう。



 今回の試験はコンピュータプログラムのアップグレードに伴うものでしたが、レーダーを開発しているレイセオンは、アメリカ海軍のアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の最新版、フライトIII用に性能向上型のAN/SPY-6(V)を開発中です。これは現行のAN/SPY-1Dとほぼ同じ大きさながら、およそ30倍の感度を持つとされており、より精度の高いミサイル検知・追跡能力を持つ予定となっています。

 現在イージスシステムは、艦隊防空よりも弾道ミサイル防衛の比重が高まっているため、一層の性能向上が期待されています。

Image:U.S.Navy/U.S.Missile Defense Agency/Raytheon

(咲村珠樹)