在日アメリカ軍基地の近くには、軍人さんが足繁く通う常連の店があります。全国に5店あるメキシコ料理店「マイクス」も、そんなアメリカ軍人御用達のお店。

 本店的存在である神奈川県相模原市の東林間店に行き、店主さんに色々うかがってきました。もちろん、魅力的な料理も味わってきましたよ。

 メキシコ料理店「マイクス」は東林間店のほか、佐世保店(長崎県佐世保市)、ハンビー店(沖縄県北谷町)、横須賀店(神奈川県横須賀市)、横田店(東京都福生市)と全国に5店舗。そのどれもが在日アメリカ軍基地や駐屯地(キャンプ)からアクセスしやすい場所にあります。

アメリカ軍人に人気のメキシコ料理店「マイクス」東林間店

■ 元海軍パイロット(水先人)が初代店主

 店主の鎌田信行さんによると、店名の「マイクス(Mike’s)」は、初代店主のマイクさんにちなんだものだそう。マイクさんは長年アメリカ海軍に在籍し、横須賀海軍施設(CFAY)でハーバーパイロット(水先人)をしていた人物で、退役後の2000年にお店を開いたのだといいます。

「マイクス」店主の鎌田信行さん

 今は情報があふれていて、英語で食事のできる店をスマホで検索することができますが、開店当時は数少ない「アメリカ軍人が安心して食事できる店」として、口コミで人気が広がったのだとか。もちろん、地元の方にも本格的なメキシコ料理が食べられる店として定着しています。

 アメリカ軍人の中でも、空母の艦載機部隊(CVW-5)に所属するパイロットたちから人気だという「マイクス」。海の元パイロットが開いた店に、空のパイロットたちが集まるというのも面白い話ですね。

店にあるパイロットたちの寄せ書き

 お店にはパイロットたちの寄せ書きがたくさん。特にVFA-195「ダムバスターズ」のパイロットたちからは「岩国に移転する前までは、第二のホームみたいな感じで来てくれました」と鎌田さん。

店に掲げられたVFA-195の寄せ書き

 海軍パイロットたちは10人くらい集まって来店することが多いそうで、食事風景は「まさに『トップガン』に出てくるシーンみたいです」と鎌田さんは教えてくれました。会計時には、壁にかけてあるソンブレロの中に全員がクレジットカードを入れ、お店のスタッフに1枚選んでもらって「その日の会計担当」を決めるんだとか。

ソンブレロは「支払い担当」を決めるゲームに使われることも

 空母艦載機部隊が岩国に移転して以降は、最寄りのアメリカ陸軍キャンプ座間に勤務する軍人の比率が高くなったそうですが、海軍と陸軍、そして海軍の中でも船乗りと航空機パイロットでは食事のノリが違い「同じ『アメリカ軍人』といっても文化はそれぞれ違いますね」と鎌田さんは語ります。

キャンプ座間に駐留する第78信号大隊からの感謝状

 また、アメリカ軍人に購読者が多いアメリカの新聞「Stars and Stripes(星条旗新聞)」が選ぶ、環太平洋地域のベストレストラン第1位に3年連続で輝いたこともあるんだとか。軍人たちから熱烈な支持を受けていることが分かりますね。

■ アメリカ軍人が愛するメキシコ料理

 マイクスのメキシコ料理は、テキサス州でアレンジされた「TEX-MEX(テクス・メクス)」と呼ばれるものが主体。チキンを使った様々なメニューが並びます。

TEX-MEX(テクス・メクス)料理

 もちろん、伝統的なメキシコ料理も。具をトルティーヤで包んだエンチラーダやブリトー、具をトルティーヤで挟んで焼くケサディヤ、もちろんタコスもあります。

伝統的なメキシコ料理も

 色々な料理をまとめて味わえるセットメニューも充実。違う組み合わせのセットを頼み、シェアして楽しむのもよさそうです。

セットメニューも充実

 ドリンクは各種のマルガリータ(フローズンマルガリータ)、特にフルーツを使ったものが名物。グラスのほかにもピッチャーでも提供されており、鎌田さんによるとアメリカ軍人の場合、取り分けるのではなく「寒い時でも、外のテラス席でピッチャーから直に飲むんですよ」というから驚きです。ノンアルコール版も提供されています。

名物のマルガリータをはじめ豊富なドリンクメニュー

名物のフレッシュフルーツマルガリータ

 開店は17時ですが、開店と同時にお客さんが来店。客層を見ていると、日本人と外国人が同じくらいの比率に見えました。

開店と同時にお客さんが

 キッチンを担当しているのは、店主の鎌田さんを含めて2人。次々入る注文に忙しく対応していきます。店内の飲食だけでなく、新型コロナウイルスの流行からは、持ち帰りの注文がとても多くなっているのだとか。

キッチンの様子

調理中の様子

提供される料理

 ほとんどの料理に使われているトルティーヤは、工場で委託して作ってもらっているオリジナルレシピのもの。ナチョスなどのチップスも、キッチンで注文ごとに切り分けて揚げています。

オリジナルのトルティーヤ

トルティーヤを切り分けてチップスを作る

 タコス用のトルティーヤも、専用の器具に挟んで形を作り揚げています。刻んだレタスやトマトも、すべて店内で手作りされています。

タコス用の揚げ型

盛り付けられるタコス

■ 「マイクス」自慢のメニューを実食

 それでは、人気メニューのモントレーファヒータ(税別1580円)を注文。税別580円をプラスしてタコサラダに入れて食べるのが人気だというので、その通りにしてみました。

タコサラダに入ったモントレーファヒータ

 野球グローブのように大きな揚げトルティーヤの中に盛られたサラダとモントレーファヒータ。ビールで溶いた衣でふんわり揚げたチキンに、ソースとチーズをかけて焼いたボリュームたっぷりのメニューです。

 チキンに絡んだチーズがとろーり。チーズ好きにはたまりません。サラダにはアボカドのグアカモレ、サワークリームと2種のディップが添えられ、トルティーヤを割って載せながら食べると美味しいですよ。

チキンに絡んだチーズがとろーり

 デザートには、サボテン(カクタス)をイメージしたアイスクリームカクタスを選んでみました。サボテンのトゲにも、花びらにも見えるトルティーヤチップスには、シナモンシュガーが振られています。

アイスクリームカクタス

 チョコレートソースでデコレーションされたバニラアイスクリームとホイップクリーム。トルティーヤチップスはサクサクの食感で、スイーツとしても味わえるのが素敵です。

トルティーヤチップスでアイスを食べるのもいい

 訪問中、お客さんは次々訪れ、屋外のテラス席も含めて満席に。アメリカ軍人だけでなく、地元の方々にも愛されていることが分かりました。

メキシコ料理店「マイクス」東林間店の外観

 メキシコ料理店「マイクス」東林間店は、小田急江ノ島線の東林間駅東口から線路沿いを相模大野方面に歩いてすぐ。黄色い塀が目印です。公式サイトには各店舗の情報が掲載されているので、お近くの店を訪れてみるといいかもしれません。

<取材協力>
メキシコ料理店「マイクス」東林間店
神奈川県相模原市上鶴間6-31-13 1F
営業時間:17時〜22時(水曜、木曜定休/年末年始休業の場合あり)

(取材・撮影:咲村珠樹)