5月27日、栃木県宇都宮市にある陸上自衛隊北宇都宮駐屯地で創立記念行事が行われました。今回の「宙にあこがれて」は、その様子をご紹介しましょう。


北宇都宮駐屯地は、宇都宮市街地の南部に位置し、陸上自衛隊の航空要員を養成する航空学校宇都宮校や、第12旅団に所属する第12ヘリコプター隊などがあります。元々は1943(昭和18)年に、中島飛行機宇都宮製作所(旧陸軍の四式戦「疾風」などを生産)と、それに付属する試験飛行用の飛行場として作られもの。そんな経緯もあって、現在も分割された敷地に中島飛行機の流れを汲む富士重工の宇都宮製作所・南工場があり、そこで生産された航空機の試験飛行などで、自衛隊と飛行場(宇都宮飛行場)を共用しています。同じ場所にあるのに自衛隊と富士重工で「北・南」と呼称が分かれてややこしいですが、自衛隊はここより更に南に「宇都宮駐屯地」があり、富士重工はすぐ北にかつて鉄道車両を作っていた「宇都宮製作所・本工場」(現在は航空宇宙関連機器を生産)がある為、それぞれの相対的な位置関係を表しているからなのです。

さて、この北宇都宮駐屯地の目玉。それは航空学校の教官で編成される展示飛行チーム「スカイホーネット」。操縦練習用に使用されている観測ヘリコプターOH-6Dを5機使用し、航空自衛隊のブルーインパルスのような編隊アクロバットなどを披露します。俗に「卵に串を刺したような」と表現される(英語でも「Flying egg」と呼ばれています)、愛らしいOH-6Dの機体フォルムに似合わぬ派手なフライトが見もの。

実際かなり機動力が高く、操縦していると「楽しい」機体なんだそうです。ただ、同乗者は機体の動きに付いていけず、アクロバティックな飛行をすると酔ってしまうこともあるとか。飛行機と違って真横や後ろにも動け、更にその場で回転もできるヘリコプターの特性もあり、ダンスしているようにも見える演技もあります。EXILEならぬ「ヘリザイル」あり、手をつないでフォークダンスするような演目あり、単機でクルクル回りながら移動する演目あり……目の前で展開されるだけに見やすく、そして楽しいものが色々。

ヘリコプターのアクロバットチームというと、オランダ空軍の「グラスホッパーズ」やイギリス陸軍の「ブルーイーグルス」などが知られていますが、陸上自衛隊でもここ北宇都宮駐屯地をはじめ、いくつかの駐屯地で見ることができます。ただ、ブルーインパルスのように常設のものではなく、創立記念行事限定の臨時編成の為、練習は通常業務の間をぬった1ヶ月程度の期間しかできないのが大変なところ。

かつてはスモーク発生装置を装着し、カラフルなスモークを出しての演技も行っていましたが、駐屯地が市街地に位置し、しかも飛行機と違って低い高度で演技する為に、発生した煙が周辺の住宅などに流れて苦情が出たこともあって、現在は行っていません。しかも専用機ではなく、操縦訓練に使用している機体をそのまま使うので、迷彩色の地味なカラーリングのままなのですが、今回は機体側面・ドアの窓部分に、操縦訓練で使用している識別版を応用した5色のカラーパネルを装着し、わずかながらも華やかさを演出していました。

ちなみに、この5色のイメージは「秘密戦隊ゴレンジャー」などの戦隊モノだそうです。1番機(リーダー)が赤、以降……という感じですね。個人的にこのカラーリングを見た時、一瞬競馬や競輪などの枠順を示す帽色を思い浮かべてしまったのは、当日が日本ダービー施行日だったからかもしれません……。

人気のスカイホーネットですが、使用機のOH-6Dが来年度限りで練習機から引退してしまう為、残念ながら来年の駐屯地祭が見納めになってしまう可能性が高いとのこと。OH-6Dに代わって導入される新型練習機、TH-480Bは機体が重く、OH-6Dのように軽快に動けない為、アクロバットに不向きだそうで……。あくまで練習機であり、アクロバット用の機体ではないのでやむを得ませんね。まだ未見の方、来年は「ラストショウ」として特別なことをやるかも……とのことですので要注目ですよ。

自衛隊の飛行展示としては、第12ヘリコプター隊のUH-60JA(43105号機)、茨城県の霞ヶ浦駐屯地(航空学校霞ヶ浦校)からやって来たAH-1S(73487号機)やOH-1(32616号機)のデモンストレーションも。純国産のヘリコプターであるOH-1も高い機動性を持っており、上昇して機体をひねり込む、飛行機で言うシャンデル(上昇反転)のような機動を見せてくれました。

また、昨年の東日本大震災を受けた、防災に関するものも。UH-1J(41870号機)による救助やUH-60JA(43105号機)による負傷者搬送、そしてCH-47J(52905号機)の放水(消火)実演、地上では消防車による放水実演など。実際、この北宇都宮駐屯地の消防車が、福島第一原発事故に際し、原子炉冷却の為の放水を行っています。また、着陸したCH-47J(52910号機)から儀仗隊が降りてきて、そのままファンシードリルの演技を披露するという演出もありました。

その他の飛行展示ですが、この北宇都宮駐屯地の飛行場(宇都宮飛行場)を基地として利用している栃木県警航空隊のヘリコプター「なんたい(川崎BK-117・JA6810)」によるホイスト救助の実演や、獨協大学病院(壬生町)を基地として運用されている栃木県のドクターヘリ(ユーロコプターEC-135・JA02HA)による患者搬送の実演もありました。これらのヘリコプターによる実演は非常に珍しいことで、いわゆる防災訓練でもこれだけまとめて見る機会はそうありません。

ちなみに、栃木県警航空隊が所有しているヘリコプターは、この「なんたい」のみなので、緊急出動に備えた状態のままでの参加。ドクターヘリも急患搬送に備えて予備機での参加でした。

続いて、地上展示機も見ていきましょう。もともと飛行機工場に付随する飛行場だった為、ヘリコプター主体の陸上自衛隊航空部隊がある駐屯地としては例外的なほど長い(旅客機も運用できる1700m)滑走路を持つ北宇都宮駐屯地。お陰でヘリコプターだけでなく、多彩な外来機も特色です。

まずは駐屯地の航空機。それぞれ飾り立てられた特別仕様で展示されました。これらは航空自衛隊のような「特別塗装」ではなく、創立記念行事限定で通常仕様の機体にカッティングシートを貼り付け装飾したもの。ですからすぐに元通りにすることができます。各々整備班が工夫を凝らしてデザインしており、素敵な機体に仕上がっています。これだけカッティングシートを使いこなしているので、隊内では「自前で痛車が作れるんじゃ?」という声も上がったとか。

スカイホーネットをフィーチャーしたOH-6D(31225号機)は、左右で違うデザインに。スターボードサイド(正面から見て機体左側面)には「あえて『萌キャラ』ではなく『かわいらしい』キャラ(担当者言)」をデザインしています。愛らしいフォルムのOH-6Dには、むしろこっちの方が似合うかもしれませんね。

連絡偵察用の固定翼機であるLR-1(22019号機)は、ついに今年限りで引退(用途廃止)です。三菱重工が開発したビジネス機MU-2をベースにした機体でしたが、1999(平成11)年から導入されたビーチクラフトB300(キングエア350)をベースにしたLR-2に全て置き換わります。首脚扉には、感謝のメッセージがありました。

UH-1J(41846号機)は迷彩の黒の部分に、細いテープで美しいチェック模様を施し、機体側面には津波で被災した青森県から千葉県までの市町村名(茨城県の鹿嶋市が、佐賀県の「鹿島市」と同じ表記になっているのはご愛嬌)を掲げました。また、第12ヘリコプター隊第1飛行隊のUH-60JA(43124号機)に施された装飾は当日までシークレットだったそうで、担当者は他の隊員達にデザインがバレないよう、機体の半分だけに装飾したとか。

この第1飛行隊は「飛竜部隊」という愛称を持っていますが、これは陸上自衛隊で最初にUH-60JAが配備された部隊であり、それを記念してUH-60JAのコールサイン「HIRYU」から採られたものだそうですよ。

その他航空自衛隊からは、茨城県の百里基地(ヘリコプターだと10分程度だそうです)から百里救難隊のUH-60J(98-4569号機)、埼玉県の入間基地から飛行点検隊のYS-11FC(12-1160号機)と第402飛行隊のC-1(98-1029号機)が飛来しました。短距離で離着陸できる機体とはいえ、このような大型機が参加できるのが、この駐屯地の珍しいところです。

YS-11FCの機体側面には「NEW AFIS(ニュー・エイフィス)」の文字が。これは新型の自動点検システム(Automatic Flight Inspection System)を装備した、というマーキング。同隊のU-125については順次このシステムに更新していくそうですが、YS-11FCについては機体が老朽化していていつ引退するか判らないので、今のところ一番機齢が若い(そして唯一のFC型新造機である)160号機にのみ装備するとのことです。

海上自衛隊からは、千葉県の館山基地から第21航空隊のSH-60J(8267号機)が参加。そしてアメリカ陸軍から、神奈川県のキャンプ座間に駐留する第78航空大隊のUH-60A(24418)がやってきていました。陸海空自衛隊と米軍のH-60シリーズヘリコプターがそろい踏みです。お陰で細部の違いも較べられて、ファンにはたまらないものとなりました。

この他にも公的機関としては、宇都宮市の隣、芳賀町にある栃木へリポートから、栃木県消防防災航空隊のヘリコプター「おおるり(ベル412EP・JA09TG)」も参加。コクピットにはオオルリ(栃木県の県鳥)のマスコットぬいぐるみも置いてありました。ひとつの県の消防防災ヘリ・警察ヘリ・ドクターヘリが勢揃いして展示されるのも珍しいことです。この「おおるり」も、緊急時に備えた待機状態のままで飛来しており、外来機の中では最初に帰っていきました。

敷地が隣接し飛行場を共用している(というか、元々の地主)富士重工からは、自社製品である社有機の富士FA-200「エアロスバル」(JA4039)と富士ベル205B(JA6181)が参加。FA-200は、戦後唯一量産された国産の民間用単発機であり、中島飛行機の伝統を受け継ぐ数少ない存在です。現在双方とも、ほとんど飛ぶ機会はないとか。富士重工の車「スバル・エクシーガ」のマーキングがされたヘリコプターの205Bは、時折ボーイング787の中央翼部分を製造している半田工場(愛知県)との行き来に使われたり、車の宣伝(CMやカタログ)に使われたりしているそうです。

実はヘリコプター(205B)の方は年に一度の大規模な定期点検中で、色々部品が取り外されています。この展示に際し、ひとまず外板だけを取り付けて、工場から文字通り「引っ張って(牽引して)」来たとか。敷地が隣接し、なおかつ製造・点検している会社だからこそできることですね。しかし、この機種は自衛隊のUH-1Jと兄弟(UH-1Jの民生型が205B)なんですが、外形は一緒でも塗装が変わると結構印象が違います。

またこの北宇都宮駐屯地創立記念行事は、ジェネラル・アビエーション(自家用機など、定期航空会社以外の民間航空)の機体が多数参加することも大きな特徴です。なかなか米軍や自衛隊の航空祭では見られないことで、駐屯地との良好な関係がうかがえますね。

その中からいくつかをご紹介しましょう。AOPA-JAPAN(日本オーナーパイロット協会)に加盟するオーナーパイロットの機体から、パイパーPA28R-200アロー(JA3580)とモールMXT-7-180Aスターロケット(N666JA)。

このPA28は2010年、アメリカ空軍横田基地で毎年行われている「横田フレンドシップデイ」に、日本の民間機として初めて招待された記念すべき機体。当時、参加に尽力したアメリカ軍の責任者は「日本の民間航空(ジェネラル・アビエーション)との交流に寄与した」ということで、その後出世したそうですよ。MXT-7は「N」から始まる登録記号を持つアメリカ国籍の機体ですが、オーナーはドイツ人。しかも飛行しているのは日本国内と、少々ややこしい感じです。しかも「666」というと『ヨハネの黙示録』に出てくる「獣の数字」とか、映画『オーメン』に代表される「悪魔の数字」などと言われますが、オーナーさんによると「登録時にリクエストして付けた番号だけど、特に意味はない」とのこと。

続いてご紹介するのは、宇都宮ヘリコプター倶楽部が所有するロビンソンR22(白いJA7862と赤いJA7980)や、栃木県航空協会のアマチュア・アクロバットチーム「レッドスバル」に所属する富士FA-200(JA3947)など。FA-200は元々ロール(横転)やループ(宙返り)など、軽いアクロバット飛行ができるようになっている機種ですが、このJA3947は強制的にエンジンオイルを供給するインバーテッドオイルシステムを装備している為、連続背面飛行などもこなせる特別仕様。この仕様のFA-200は、今回展示された富士重工の社有機(JA4039)を含め、国内に3機しかないレアものです。

この他にも、この宇都宮生まれのFA-200をはじめとした数々のジェネラル・アビエーションの機体(小型機・モーターグライダー・ヘリコプター)が参加し、地上展示されていました。空が好きでオーナーパイロットになった方々ならではのお話も聞けるので、航空ファンならずとも楽しめるんじゃないかと思いますよ。

今回は「一般来場者に楽しんでもらう為」と、訓示や来賓挨拶を中心とした式典を取りやめて、その分イベントを充実させたのが良かったかもしれません。航空機の展示だけでなく、栃木県警白バイ隊のドリル(デモ走行)などもあり、本当に盛りだくさんの内容でした。

自衛隊・米軍・民間機と様々な機体が参加し、ヘリコプターの展示飛行も充実した北宇都宮駐屯地創立記念行事。次回はぜひ、お出かけになることをお勧めします。

(文・写真:咲村珠樹)