京都の年末の風物詩といえば、京都四條南座の「吉例顔見世興行」。国の登録有形文化財である南座の正面に、出演する俳優の名前を書いた「まねき」と呼ばれる看板が並ぶさまは、伝統的な歌舞伎芝居の雰囲気を今に伝える貴重な文化遺産です。

 今年2018年は、南座発祥400年であるとともに、2016年以来続いていた耐震補強と内装設備の更新工事を終えた南座に、ようやく芝居が帰ってくるという記念の年でもあります。それを記念して、祇園の街を出演俳優が練り歩く「お練り」が、過去最大規模で行われることになりました。

 江戸時代初期の慶長年間にルーツをさかのぼることのできる京都・祇園の南座。南座の歴史は京都における芝居の歴史ともいえます。1906(明治39)年から京都生まれの白井松次郎・大谷竹次郎兄弟の松竹合名会社(現:株式会社松竹)が経営に当たり、以来100年以上にわたって南座の興行が行われてきました。

 今回の「當る亥歳 吉例顔見世興行」は、南座新開場と発祥400年を記念して2018年11月と12月の2か月にわたって行われますが、まず11月は二代目松本白鸚さん・十代目松本幸四郎さん・八代目市川染五郎さんの親子三代襲名披露興行(11月1日初日・11月25日千穐楽)として行われ、華やかな顔見世にさらにめでたい色彩を添えることになります。代々実力とともに華を持ち合わせた松本幸四郎家三代の演目では、夜の部で口上を終えたのちの「勧進帳」で、弁慶役者として知られる松本白鸚さんが冨樫、そして弁慶に松本幸四郎さん、義経に市川染五郎さんという親子三代の共演が見ものです。

 また、上方歌舞伎の役者陣では、昼の部に片岡仁左衛門さんの忠兵衛による「封印切」で和事の粋を見せ、夜の部「寿曽我対面」では片岡孝太郎さんの十郎、片岡愛之助さんの五郎に、片岡仁左衛門さんの工藤佑経という配役で華やかさを演出しています。

 松本幸四郎家親子三代の襲名披露に、上方歌舞伎の役者がそろって出演するという、まさに顔見世という豪華な興行ですが、これにあわせ、京都府、京都市、祇園商店街振興組合をはじめとする地元地域の関係各方面の理解と協力を得て、祇園の街を出演者が練り歩く、伝統の「お練り」が開催されることになりました。

 会場直前の10月27日、南座前から八坂神社西楼門前の東大路通(祇園石段下交差点)までの約400メートルに及ぶ祇園商店街のアーケードに色鮮やかな幟や提灯が設えられ、2013年3月27日に東京・銀座で開催された歌舞伎座開場時の銀座・春のパレード「GINZA花道」開催時をしのぐ総勢約70名の歌舞伎俳優が晴れやかに練り歩きます。

 顔ぶれは中村時蔵さんをはじめ、2018年1月に親子三代襲名をした十代目松本幸四郎さん、八代目市川染五郎さんなど。最年少は中村勘九郎さんの次男、中村長三郎さん5歳です。

 2013年の歌舞伎座新開場時に行われた銀座通りでの「GINZA花道」では、あいにくの雨になってしまいましたが、京都の晴れ渡る空の下、華の歌舞伎役者たちが舞台同様に咲き誇るさまを見守りたいものです。

情報提供:松竹株式会社

(咲村珠樹)