財布やパスケースなど、普段身近に使っている革小物。もしそれに命が吹き込まれ、恐ろしいクリーチャーになってしまったら……?

 そんなイメージで、不気味な、それでいてどこか可愛らしい小物作品を作っているレザークラフト作家がいます。普段はカバン職人として働いている「うさぎあれるぎ~」さん。作品について語ってくれました。

 レザークラフト歴は25年にもなるといい、革との出会いは学生の頃。叔母さんが引退するからと工具を分けてもらったことがきっかけで、革の表面に植物モチーフの模様を彫る「レザーカービング」から始めたそうです。

レザーカービング作品(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 その後、カバンを作る教室に通って一連の流れを学びました。技術に傾倒し、本職のカバン職人に就いてプロとして仕事をするかたわら、より高度で多様性のある靴作りの教室に通い、さらに独学で高級手縫靴の製法まで学んだのだとか。

靴の作品(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 革の扱い方を色々と学び、高度な技術を身につけた中で、現在のような作品を作るきっかけとなったのは数年前。プラモデルや造形作品を作りはじめた際、模型関係の塗装技術と、海外の樹脂粘土作家が作った作品に興味を惹かれ、そこにH・P・ラヴクラフト(「クトゥルー神話」と総称されるホラー作品で知られる)好きの要素が加わったのだそうです。

クリーチャーの小物入れやキーホルダー(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 クリーチャー作品自体は「作りはじめて1年程度と浅めです」とのことですが、これまで身につけたレザークラフトの技術が注がれ、革が自在に形を変えて、見るものの目を惹きつけます。触手を含めてすべて革で作られ、細かく貼り込まれた革のシワは、まるで生きているかのような生命感。

クリーチャーのフタつき小物入れ(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 目がギョロリとこちらを見つめているのが印象的ですが、これは「塗装のグラデーションがよく出やすいモチーフなので」選んでいるのだとか。元々、革と塗装は相性が悪いそうで、硬い目のパーツ部分だけを筆塗りで塗装し、ほかの部分は様々な革を細かく貼り込んで色合いを表現しています。

フタを開けたところ(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 おどろおどろしいクリーチャーを作っているのに反し、ご本人はホラーが苦手だと語ります。構想のため情報を取り入れる際もホラー映画を見られないほどだそうですが、作品については「作っている中で毎度目が合うので慣れました(笑)」と語ってくれました。

たくさんの目が(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 ただやはり、恐ろしすぎないよう心がけているそうで「少しコミカルな感じや、キモかわいいくらいのところを狙っているので、実物を見ると『思いのほか、かわいいな』っていう感想を持っていただけるかと思います」と、うさぎあれるぎ~さん。

小物入れの使用例(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 まだクリーチャー作品を作りはじめて1年程度ということもあり、今後もウロコ、触手、人形と少しずつ世界観を大きく広げていきたいとのこと。「いつかカバンと合わせて個性として出せればとも考えています」と将来の構想も明らかにしてくれました。

ウネウネ感の表現など見どころが多い(うさぎあれるぎ〜さん提供)

 これらのキモかわいいクリーチャー作品は、minneにて「CLW」の名称で販売されています。またInstagram(c_leather_works)も開設されているので、これまでの作品を色々見ることができますよ。

<記事化協力>
うさぎあれるぎ~さん(@c_leather_works)

(咲村珠樹)