バリアフリーという言葉が聞かれるようになりしばらくたちますが、まだまだ当事者ではないと気付かない部分は多いというのが現状。全盲の方にとっては「電車の連結部にある空間」を「ドアと間違えてしまう」問題がTwitterに投稿され、反響を呼んでいます。

 この問題をTwitterに投稿したのは、浅井純子さん。ご自身も全盲で、現在は盲導犬のヴィヴィッドくんと暮らし、お仕事をしているほか、TwitterやYouTubeで目の不自由な人はどのような感覚で生活しているのか、またヴィヴィッドくんを例に盲導犬とはどういう存在かという情報を発信していらっしゃいます。

 浅井さんは、全盲の方が鉄道を利用する際、ホームに潜む危険を次のようなツイートで紹介しました。

「全盲のホームでの転落事故の1つに『連結部分』があります。どうして?と思われるかもしれませんが、実はドアの部分と勘違いしてしまうのです。もし、連結部分に向かっている人を見かけたら、ひるまず声をかけていただけたら嬉しいです」

 浅井さんに話をうかがうと全盲の方、特に白い杖を使って駅のホームを歩いている方の場合、ホームにドアの位置を示す視覚障がい者向けの表示がないため、車両に白い杖を当ててドアの位置を探しているとのこと。車体に空間があると「ドアかもしれない」と判断し、次に車内の床を確かめて乗り込んでいるそうですが、発車メロディが鳴っているなどして急いで乗らなくてはいけない場合、車内の床を確かめる余裕がなく、車体の壁がない空間を「開いているドア」と瞬間的に判断してしまい、乗り込もうとして歩を進め、ちょうど落とし穴のようにホームから車両間の隙間に転落する事故に遭ってしまうのではないか、との推論を語ってくれました。

電車の連結部はドアと誤認しやすい(画像撮影協力:オオツキwayタイジさん)

 盲導犬のヴィヴィッドくんと暮らし始めて7年目となった浅井さんですが、それ以前は白い杖を使っていました。白い杖に頼って歩く感覚について浅井さんは、絶えずどこかに自転車や看板などが置かれてないか?どこにも人がいないか?と集中して歩いていたそうで「自転車の車輪に杖を入れてしまったり、たまたま自分が白い杖で確認した場所が障害物を避けて歩いた瞬間ぶつかって転けたりとか、そんな事は私自身はよくありました」と語ってくれました。

 筆者も以前、盲導犬を体験する際に目隠しして白い杖を使って歩いた経験があるのですが、白い杖の先が触れる感覚に集中しなければ安全に歩けないのと同時に、周囲の状況把握にまで脳の処理能力が追いつかない感じでした。現在は多くの鉄道会社で、車両の連結部に「転落防止ホロ」が取り付けられていますが、それでも白い杖が触れる高さに空間が残されている場合があり、ドアと誤認してしまうことはあるように感じます。

 大都市圏を走る鉄道を中心に、転落事故防止のためホームドアの設置が進んでいますが、すべての駅に設置されるまでは時間がかかります。それまでは、私たちの目が事故防止に役立ちます。もし連結部に近づこうとしている視覚障がい者の方がいた場合「そこはドアではありませんよ」と誘導し、事故を未然に防ぎたいものですね。

 ただし、筆者の実体験からすると、白い杖で歩いている方は杖の先に意識を集中しているため、急に肩を叩いたりすると驚かれてしまうかもしれません。手助けする際は近づいて声をかけ、相手がこちらを認識してから体に手を触れるなどした方がいいように思います。

 浅井さんはYouTubeチャンネル「暗闇からAloha」で普段の暮らしぶりを、そして「目の見えないじゅんじゅんと盲導犬ヴィヴィッドのポケットチャンネル」で、ヴィヴィッドくんを例にした盲導犬の紹介をしています。

 動画の中には、外出時に視覚障がい者の方がどのような危険を感じ、気をつけているかといったものもありますので、手助けする際の参考にしてみてはいかがでしょうか。

<記事化協力>
浅井純子さん(@nofkOzrKtKUViTE)
画像撮影協力:オオツキwayタイジさん

(咲村珠樹)