子どもは思ったことや感じたことを素直にストレートに言葉にすることがあります。楽しい、面白いと思ったことも、嫌だ、変だ、と思ったことも。そして、悪意のない純粋な気持ちから出るということは、大人なら大概分かっています。その純粋さゆえに出た言葉をたしなめた、ある母親の注意の仕方が素晴らしいとネット上で話題になっています。

 「コスサミの時、着替えてオアシスへ向かうレイヤーさんの波に乗って歩いてたら家族連れのちびっこが変な格好の人がいっぱいいる!って言ってたの。そしたら母親が、みんな楽しんでやってるのにあんたが言った一言でずっと嫌な思いしたらどうするの!!って注意したのね。すごく良い注意の仕方だと思った」と、その場に居合わせてそのやり取りを紹介したのは、コスプレイヤーのあーちゃむさん。

 ちなみに、コスサミというのは、先日名古屋市を中心に開催された、「世界コスプレサミット」の略称。世界中から有名コスプレイヤーが集結し、多くのコスプレイヤーたちが名古屋の中心部から愛知県内の各地で開催されたイベントに参加しました。

 一般参加のコスプレイヤーもかなり多く、会場となったところではあちこちで撮影会が行われるのですが、ハイクオリティなコスプレをする人たちに加え、ネタに走るコスプレイヤーもチラホラ。

 きっとそのちびっこは、自分とは違う普段着ではない、変わった格好をしている人たちばかりの会場の様子に驚きを隠せなかったのでしょう。普段の街にはいない格好の人が大勢いたら、コスプレもイベントも知らない子どもからしてみたら、奇妙に見えてもおかしくはありません。

 しかし、母親がたしなめた「みんな楽しんでやってるのにあんたが言った一言でずっと嫌な思いしたらどうするの!!」という言葉はその子の心に届いたのでしょう。その後、「ちなみにこの後ちびっこ、初音ミクがいるー!!!かわいいー!!!って声あげてて、親からの注意を素直に受け取って褒め始めたのが可愛すぎた」と、あーちゃむさんがその様子を続くツイートで報告していました。

 誰かが何かを楽しんでいる時に、水を差されるようなことを言われるのは、誰だって良い気分にはならないものです。そして、その水を差すような言葉は、無知や偏見から出てくることが多く、人の気持ちを思いやれないゆえに言葉という「形」になって出てしまうものです。コスプレ文化に偏見を持っている人でも、多くの人は「黙って」その場を通り過ぎるかと思います。しかし、思ったことを何でも口にしてしまう人も中にはいます。もしかしたら、子どものころから、思ったことを何でも口にしないということを注意されずに育ってきた人かもしれませんし、もとよりそういう特性を持っている人かもしれません。

 なんにせよ、まずは自分が感じていること、思ったことが全てではないこと。倫理や法に触れない、また他の人が嫌な思いをする言動でない限り、様々な世界があり、様々な楽しみ方があり、それを否定する権限は誰にもないということを、幼少時から身近な大人が教えていくことが必要でしょう。そして、私たち大人自身も、自分に偏見の目がないか、楽しんでいる人に水を差すようなことをしていないか、今一度振り返ってみる必要があるかもしれませんね。

<記事化協力>
あーちゃむさん(@splash_achamu)

(梓川みいな)