オリンピックを来年に控え、外国からの観光客を増やそうという“インバウンド”という言葉がよく聞かれるようになりました。各地で外国人に対応できるよう、案内板に外国語の表記がプラスされたり、外国語のできる職員を配置したりと「おもてなし」の体制が徐々に整えられています。でも、そうでないところで緊急事態に遭遇したら、やはり言葉の通じない外国(日本)で心細い思いをしてしまうことでしょう。とある外国からの観光客がそんな場面に遭遇した時、たまたま通りがかってカタコトの言葉で助けた経験を描いた漫画がTwitterで話題になっています。

 このまんがをTwitterに投稿したのは、漫画家、イラストレーター、講師、会社員etc…とマルチに活動する、まちだりつさん。「さっきあったこと」として、ホテルの前で途方に暮れている外国人を翻訳アプリを使ったカタコトの外国語で助けた話を描いています。

 知人と一緒に帰宅中、知人が車を駐めている駐車場へ歩いていたまちださん。急にカタコトの日本語で「スミマセン!」と呼び止められます。見ると観光客とおぼしき外国人女性が2人、ホテルの前で「クローズ!ホテル!ホテル、ハイレマセン!」と困っている様子。確かにこのホテルの建物は明かりが消えていて、入口も開かず休業しているようです。

 カタコトだけどジェスチャーで聞いたところ、管理会社に電話しても出ないとのこと。知人が周りを調べたところ、建物の入り口はここのみ。しかし宿泊予約を受け付けているわけですから、営業していないはずはありません。

 ホテルの名前で検索し、同じ系列のホテルが出てきたので電話して聞いてみると、今いるホテルの建物は改装中の旧館で、新館は営業中とのこと。旧館と隣り合っておらず、離れた場所にあるため分からずに、旧館の住所でたどりついたら(改装中で)閉まっていた……ということだったようです。営業中である新館の場所をホテルに聞くと、近い場所にあることが判明。しかし予約したホテルの新館が「近くにありますよ。ここからこの道を……」という道案内を外国語で伝えるのが難しい、と判断したまちださん。直接案内した方が早いと「ホテル・オールド。ニュー・ホテル、ゴー!!」と、かなりざっくりした英語で外国人女性観光客2人を新館へ連れて行くことに。

 知人がホテルまで車で送ろう、その方が早いから……ということになり、これで一安心。そこへ翻訳アプリで「私たち今日初めて日本に来ました。とても怖かったです」と、その外国人女性は気持ちを伝えてくれました。確かに、初めて来た言葉もほとんど分からない外国で、泊まるはずだったホテルの建物が閉まっていたら……どうしたらいいか分からず、頼るものもない状態だし女性ということもあり、とても怖かったろうと思います。

 まちださんは「初めて来た日本で怖い思い出のまま帰ってほしくない」と思い、エゴではあるけど「日本を好きでいてもらいたい」と、翻訳アプリで「大変でしたね。今日はゆっくり休んでください。日本を楽しんでください。ホテルには連絡しています」と書いて彼女たちに示します。ちゃんと翻訳されているかわかりませんが、安堵した表情で伝わったことが分かったそうです。

 彼女たちをホテルのフロントまで案内し、別れたまちださんら。別れ際にお礼のお菓子ももらったそうで「道中お気をつけて!」という、粋な外国語ができるように言葉を学ぼうと決意もしたそうです。

 このエピソード、とても共感するものがあります。筆者はなぜか「困っている外国人」に助けを求められることが多く、先日もお年を召したお母さんと一緒の外国人女性が地下鉄のきっぷ売り場で困っている場面に遭遇。まちださんと同じく「スミマセン」と声をかけられたので話を聞いてみると、東京スカイツリーに行きたいんだけど、どうやっていったらいいか分からない、最寄り駅はどこ?とのこと。「とうきょうスカイツリー」駅は東武線なので地下鉄の路線図には載っておらず、半蔵門線押上駅で降りれば同じことなので、そこまで行けばいいと教え、途中までは一緒の電車に乗ると話すと「乗り換えの駅まで一緒にいてくれると助かる」と頼まれ、一緒に電車に乗ることに。

 電車内で話を聞くと、カリフォルニアからお母さんと一緒に日本観光に来たとのことで「地下鉄とか、たくさん路線があって迷っちゃう」と苦笑していました。途中で分からなくなった時のために、乗換駅と乗るべき路線、降りる駅を書いたメモを渡して別れましたが、自分でも初めて行った場所で道に迷ったら不安なように、それが外国だったら……と考えると、その不安は察するにあまりあります。

 ことわざに「情けは人の為ならず」といいますが、外国人に親切にして、日本でのいい印象を抱いて帰国してもらえば、また外国で日本の評判が上がるでしょうし、日本人が外国に行った時も「ちゃんとした人に違いない」と思われるかもしれません。困っている人を助けて損はない、そういう風に思える心の余裕も持って、2020年のオリンピックを迎えたいものですね。

<記事化協力>
まちだりつさん(@crow00613)

(咲村珠樹)