猫って意外と義理堅いところがある様で、困っているところを助けてあげると、「猫なり」の、返礼品を持参してくることがあります。この記録は、現在進行中で起きている、地域猫による恩返しかのような差し入れの実態を記したものです。

 事の発端は、弊社社長(以下社長)が、会社近辺をテリトリーにしている地域猫(近所のボス猫、通称ベンさん・ベンガルトラっぽい事から)を世話をしたこと。4月のある日、ベンさんは前脚も後ろ脚も引きずるような歩き方で、腫れも見られる状態でした。しかし、かなり警戒心が強く、なかなか近寄るのもままならない……。

 大の猫好きである社長、ご長寿だった猫社員1号を今年2月に亡くしてしばらくは完全にペットロス状態でしたが、そんなベンさんの様子をみて居ても立っても居られなくなった様子。そこで軒先に簡易宿泊所を設置し、雨風を防げ、落ち着いて寝る&トイレができるようにしてみました。猫用の餌も、猫社員1号に出していた猫缶が残っていたので、水と一緒に餌も食べやすいように置いておいたのです。

 そんな日々がしばらく続き、簡易宿泊所で寝泊まりしているベンさんの様子を見るも、やはり顔を合わせると「シャー!!」。かなりの人間不信の様子……。それでも、餌を食べて寝泊まりしていくごとに、だんだん足の具合も良くなってきたようで、そのうち宿泊所に泊まりに来ることがなくなってしまいました。そして弊社では、今度は弱り切った別の猫を助けるという出来事が。後から来た子はそのまま、猫社員2号(ラッキー)としてともに働く(?)ことになったのでした。

 そんなこんなで数か月……。

 「先日から会社の玄関に、カマキリや、芋虫の死骸が置かれる異変がつづいていました。何かの嫌がらせなのかと思っていたら、理由が今朝判明。虫の死骸置き去り犯人は、猫社員が来る前に社長が助けた足を怪我した近所の地域猫さんでした……。いや、そのお礼はもう……お気持ちだけで」と、何気なくフォロワーさんに近況をツイートしたのは中の人1号こと編集長。それが、まさか3万こえてRTされるとは、その時誰も予想だにしていませんでした……。

 このツイート、現在進行形で拡散され続けており、「リアル猫の恩返し」「ごんぎつねの世界だ……」といった感想が続々。そして寄せられる体験の数々。小さいものだと昆虫類や爬虫類、ネズミなど、大きいものだとモグラや蛇、鳥類まで……様々な返礼を受けた経験が寄せられています。完全室内飼いが推奨されている現在、こうした光景は段々減りつつありますが、田舎の方や地域猫がいるところでは、まだまだこうした「恩返し」的な行動は見られているようです。

 なかには自分のお気に入りのおもちゃや、どこから出てきたのか、落ちていた食料を持ってくる猫、金柑の実を持ってくる猫もいたそう。鳥を活き絞めにしてくれたり、食べやすいように解体してくれたりという、気の利いた猫もいるようですが……。種の違いって、時に悲しいすれ違いを引き起こすものですよね。人間側からしたらほぼ叫びます。

 さて、このツイート、この頃はラッキーちゃんの近況や、名古屋支部所属の猫嘱託社員1号2号の猫ツイートをちょくちょくしていたこと&ベンさんについてはこれまでほぼ触れていなかったがため、「ラッキーちゃんが猫の恩返しをしている」と勘違いをされた方も多かった様子……。

 編集長は、「いや~……元からのフォロワーさん向けにちょっとつぶやいたつもりが~……」などと供述しておりますが、ツイッターで発信すること自体、全世界に向けて発信しているって事くらいもう10年以上この業界でやってんだから分かるでしょ!と筆者が言うと、ぐうの音も出なかったようです。

 なお、このツイートで、カマキリを持ってきたと書いていましたが、社長に確認してみたところ、実はナナフシだった(しかも中身がはみ出ていた)そうで、不器用ながらも返礼を律儀にしてくれるベンさん、実はすごく賢いのでは?と思わずにはいられません……。

 地域猫としての顔も広いようで、保護して間もないころのラッキーちゃんが外にパッと出て行ってしまった事があったのですが、探しているとき通りかかったベンさんに対し社長曰く「お願い」したところ、その日の晩にラッキーちゃんがベンさんに付き添われて会社に帰ってくる……という出来事もありました。もしかしたら、話せば通じ合えるような気がするのですが、ベンさんがいつも臨戦態勢なのがいかんともしがたいところ。

 「こうなったら社長が保護して猫社員にしちゃいなYO」とというリプライも頂いていますが、顔を合わせれば挨拶が威嚇の「シャー!!」なベンさんが人に対して心を開くまでには、まだまだ長いことかかりそうです……。

 ちなみにラッキーちゃんは、編集長が飲んだ帰りの酔っぱらった勢いで、ガリガリにやせてふらふらになっていた猫を捕獲し、そのまま連れ帰ったことで猫社員2号になったという、わりと野性味あふれるいきさつだったわけですが、この話は、いずれまた詳しくお話しようと思います。

(梓川みいな)