アナログで非効率な働き方、上司とクライアントとの板挟み、家事と仕事の両立、子育てをめぐる夫婦の感覚の違い……どこにでもありがちな、誰しもが何か一つは経験していそうな、そんな「もう嫌だ、もう帰りたい……」を漫画にした、さわぐちけいすけさんの漫画「僕たちはもう帰りたい」が、ライツ社より3月16日に発売され、読んだ人たちの心を大きく共感させています。

 仕事がデキるからさっさと定時に帰ると、周りからの視線が痛い……そんな、「お付き合い残業」が嫌で、帰りにふらりとその店名に惹かれて立ち寄ったスナック「もう帰りたい」に立ち寄った一人のサラリーマンが、同じく色々な「もう帰りたい」を抱えた人たちと、百戦錬磨な女マスターに迎え入れられたところから話は始まります。

 ちょっと変わってて賭け事好きな女マスターが、客が帰る際にかける言葉がヒントになって、職場や家庭の閉塞感を打破していく……様々な立場、職種、年齢、性別の人たちが集うスナックを軸に、そんな人たちがそれぞれの場所で気付き、行動していく姿は、読む人の心を揺さぶります。

 ネット上では既に、「読んでて『ホントこれだよ…』と何回呟いたか…」「登場人物の苦悩に強い共感を覚えます」「こんなバーが近所にあったら最高だな」「この本を各部署に1冊置くのはどうだろうか。滅茶苦茶好き。」といった声が。作品中に、「自宅にいるのにもう帰りたい」という場面があるのですが、自宅にいても何か居づらい感じ、落ち着かないような居心地の悪さを感じる時にやっぱり筆者も思います。「うちに帰りたい……」安心して甘えられる実家に帰りたい、という気持ちなのかな……。

 作者のさわぐちさんの特徴は、サラサラとした画力はもちろん、「妻は他人」と言い切れるほどの「客観的な目線」。時に冷たさすら感じるほどの目線で描かれた夫婦のハウツーがKADOKAWAより既刊の「妻は他人 だから夫婦は面白い」でたくさんの人の共感を得ているのであれば、「働く人」や「働き方」すら、独自の視点で切り取られたすごい作品が生まれるかもしれない……そんな意図を持って企画された本作も、また多くの人からの共感を得ています。

画像提供:ライツ社

(梓川みいな)