「うちの本棚」、今回は横山光輝の代表作のひとつであり、半ば伝説的に語られる『レッドマスク』を取り上げます。「スーパーマン」と同じ能力を持つレッドマスク。そのストーリーはなかなか複雑で読み出すと止まりません。

奄美大島から転校してきた秋庭五郎という少年は、成績優秀の上に運動神経もずば抜けていい。五郎が転校してきたころ、ギャングの逮捕に協力する謎の空飛ぶ超人が新聞で報じられた。


赤いマスクをつけいてることから自らレッドマスクと名乗るその超人こそ、五郎だったのだ。

実は五郎の父はX星という惑星の生き残りであり、地球人の女性との間に生まれたのが五郎であった。ちなみにアメリカで活躍する「スーパーマン」も五郎の父と同じX星人だという。

空を飛び超人的な力を発揮し弾丸も受け付けない身体であるレッドマスク・五郎だが、かかとだけが弱点であった。そのため五郎の父も同じマスクをつけて五郎を手助けするようになっていく。

物語は「スペード団の巻」「透明人間の巻」の2話からなっているが、それぞれのエピソードの中でも五郎がプロ野球の球団にスカウトされて試合に出たり(「スペード団の巻」)、敵である透明人間が途中で殺され闘う相手が変わるなどなかなか複雑な展開を見せている。

また本作は「スーパーマン」に言及シーンがあることから単行本化できないという噂もあったのだが、言及シーン自体1ページ強であり、その気になればいくらでも描き変えできるシーンであり、作品のストーリーに影響はない。さらに中村書店で刊行されている事実もあるので、別の理由で再刊行されなかったと考えるべきだろう。
『宇宙船レッドシャーク』そしてこの『レッドマスク』と横山の代表作としてプロフィールなどでたびたび作品名があげられていながら気楽に読めない状況が続いていたのは、作者自身に単行本化をためらう理由があったのではないだろうか。共に「レッド」が付くのも奇妙な感じだ。

中村書店版そしてアップルBOXクリエート版と共に現在では入手の難しい本作なので、ぜひ復刻および再刊行してほしい作品である。

初出/講談社・おもしろブック(1958年~1960年)
書誌/中村書店・横山光輝全集(刊行巻数未確認)
   アップルBOXクリエート(全5巻)

(文:猫目ユウ)