みなさま明けましておめでとうございます。一緒に母親の喪も明けた咲村珠樹です。「宙(そら)にあこがれて」今年の初めは、2010年最後の航空祭として、12月19日に宮崎県の航空自衛隊新田原(にゅうたばる)基地で行われた「新田原航空祭2010」のレポートをお届けしたいと思います。


航空自衛隊新田原基地は、宮崎県のほぼ中央部、新富町にあります。隣接する川南町・高鍋町などと並んで、宮崎県で畜産が盛んな地域(他に都城市・高原町・えびの市を中心とした県南西部)で、2010年の3月末から発生した口蹄疫では、その中心として甚大な被害を受けた地域でもあります。新田原基地に所属する航空自衛隊の皆さんも、夏まで家畜の殺処分や埋却処分に従事し、獣医師や関係者らとともに汗を流しました。

そんないきさつもあって、今回の航空祭では、口蹄疫からの復興を願って、ともに手を携えてがんばろうとの思いから「絆」というテーマで開催されました。基地の隊員さんの腕には、そのテーマ「絆」とヤシの木をデザインしたパッチがつけられています。

基地に所属するF-4EJ改・F-15J/DJ戦闘機をはじめとする全ての航空機にも、県をあげてのスローガン「がんばろう宮崎」の文字が記されています。

飛行展示も特別編成で、通常のものに加えて「口蹄疫復興祈念飛行」なども行われ、また青森県のアメリカ空軍三沢基地からは、太平洋空軍第35戦術戦闘航空団・F-16CJデモンストレーションチームが初登場して花を添えました。

写真は新田原基地所属機(F-15×6・F-4EJ×5・T-4×3)による、異機種編隊飛行。宮崎を応援するため、頭文字の「M」をかたどっての飛行です。異機種編隊は、それぞれ飛行機の性能が異なるので、実はちゃんとした編隊を組むのが難しいのです。しかし、ここに所属する飛行隊は、それぞれパイロットの養成(第23飛行隊と、対領空侵犯任務を兼ねる第301飛行隊)や、空中戦訓練の敵方を務める(飛行教導隊)部隊なので、パイロットは教官資格を持つ凄腕ぞろい。ビシッと決めてくれました。

他の飛行展示の写真も載せたいのですが、この新田原航空祭は、快晴率が高く、戦闘機の飛行展示の迫力で知られる一方、会場から滑走路方向が終日逆光になり、写真が撮りづらいことでも有名でして……。特に動きの速い戦闘機の飛行展示については、申し訳なくも撮影がうまくいきませんでした。

代わりといっては何ですが、新田原基地に初めてやってきた「ブルーインパルスJr.」の展示走行の様子を。

この「ブルーインパルスJr.」、ブルーインパルスのパイロット以外の隊員(主に整備士さんたち)によって組織されたクラブ活動で、自費で購入した三輪バイクをブルーインパルスの使用機・T-4のように改造(機首の番号も実際と同じ)して、コミカルな編隊走行を見せる、航空祭では人気のアトラクションです。今年はツインリンクもてぎで行われたインディカーシーズのレース「インディジャパン300マイル」でも展示走行を見せていました。今回でショーの「華」だった、女性自衛官(WAF)のコスプレをした男性ナレーター(ライダーの中に女性がいます)、かずりんさんが14年にわたる在籍を経て卒業するとあって、コアなファンには感慨深かったようですね。こちらの「機体」にも、宮崎を応援するメッセージ「がんばって宮崎」「がんばろう宮崎」が記入されていました。こんなスペシャルなマーキングは、今回が初めてとのこと。

ブルーインパルスJr.は、太平洋空軍第35戦術戦闘航空団・F-16Cデモンストレーションチームの目にもユニークに映ったようで、展示が終わったあと、メンバーがバイクに乗り込み、記念写真を撮っていました。

将来、三沢基地の航空祭で、米軍によるこんな展示が見られるかも!?

さて、会場に流れるBGMですが、ここ新田原では、隊員選曲のアニソンがガンガン流れることでも知られています。今回聞いていた中で、一番多くかかっていたのは、作品では『マクロスF』の各曲、曲単体では『ストライクウィッチーズ2』OPの「STRIKE WITCHES 2 ~笑顔の魔法~」でした。『ストライクウィッチーズ2』のキャッチフレーズ「守りたいから私は飛ぶ!」は、航空自衛隊の任務と共通のものがありますし、思い入れがあったのかもしれませんね。

続いて、地上展示機の中で目立った機体をご紹介しましょう。まずは地元、新田原基地・第23飛行隊のF-15DJ・部隊創設10周年記念塗装機(82-8092号機)。午前中は展示飛行を行いました。部隊マークである、宮崎県・都井岬の野生馬を垂直尾翼と機首に、そして機体後半部を黒い炎に染め上げたデザインです。この部隊マーク、地元の焼酎の銘柄になぞらえて「日向の黒馬(ひむかのくろうま)」と呼ぶ人もいるとか。

そして、山口県は岩国基地より飛来した、アメリカ海兵隊VFMA(AW)-224「FIGHTING BENGALS」CAG(飛行団指令)機のF/A-18D(左)と、VFMA(AW)-242「BATS」CO(飛行隊長)機のF/A-18D(右)。VFMA-224のトラ模様は、部隊マークがベンガルトラであることにちなんでのもの。VFMA-242の方は、垂直尾翼にコウモリ(BAT)が描かれていますね。

アメリカ海軍・海兵隊では、士気向上のために、飛行団指令機(機首の番号下2ケタが「00」の機体)と飛行隊長機(機首の番号下2ケタが「01」の機体)に派手な塗装を施しているのが特徴です。

他の地上展示機は、航空自衛隊では
新田原救難隊のUH-60J(58-4563号機)
春日ヘリコプター空輸隊(福岡県・春日基地)のCH-47J(87-4486号機)
航空総隊司令部飛行隊(埼玉県・入間基地)のU-4(85-3253号機)
飛行点検隊(埼玉県・入間基地)のU-125(29-3041号機)
第12飛行教育団(山口県・防府北基地)のT-7(46-5914号機)
第13飛行教育団(福岡県・芦屋基地)のT-4(26-5808号機)
第41教育飛行隊(鳥取県・美保基地)のT-400(41-5051号機)……T-400初号機
第401飛行隊(愛知県・小牧基地)のC-130H(75-1078号機)
第402飛行隊(埼玉県・入間基地)のC-1(08-1030号機)
第403飛行隊(鳥取県・美保基地)のYS-11P(62-1153号機)
第6飛行隊(福岡県・築城基地)のF-2A(53-8130号機)
第501飛行隊(茨城県・百里基地)のRF-4E(57-6909号機)
が参加。

写真は第13飛行教育団のT-4。こちらの塗装は、ブルーインパルスの塗装を赤くしたような形(細部のデザインは違います)で、愛称が「レッドドルフィン(ドルフィンはT-4の愛称)」、ファンからは「レッドインパルス」として親しまれています。

陸上自衛隊は、佐賀県の目達原駐屯地から、西部方面ヘリコプター隊のOH-6D(31292号機)とUH-1J(41882号機)、そして第3対戦車ヘリコプター隊のOH-1(32622号機)とAH-1S(73442号機)が参加。第3対戦車ヘリコプター隊は、最新のAH-64Dアパッチ・ロングボウを実戦配備している唯一の部隊なのですが、残念ながらAH-64Dは不参加でした。

海上自衛隊からは、鹿児島県の鹿屋基地から、第1航空隊のP-3C(5052号機)と、第211教育航空隊のSH-60J(8251号機)がやってきていました。

午後に入ると、陸上自衛隊・習志野駐屯地(千葉県)からやってきた第1空挺団の落下傘降下展示。

入間基地から飛来した、第402飛行隊のC-1に乗り込み、降下します。今回のように遠隔地での航空祭で降下展示をする際、第1空挺団は習志野駐屯地もよりの、大型機用滑走路がある海上自衛隊・下総基地(千葉県)に移動し、入間基地からやってきたC-1に乗って、会場となる基地まで移動することになっています。ちなみに、降下に使用した落下傘ですが、手早く折りたたんで専用の袋に入れ、習志野まで持ち帰ります。第1空挺団の専門の部署(後方支援隊落下傘整備中隊)にて、再度使用できる状態に折りたたまれるそうですよ。

そして、航空祭のショウストッパー(トリ)として登場したのは、今年創設50周年を迎えた、松島基地の第11飛行隊「ブルーインパルス」。12月1日付で着任した、4番機要員(TR)の堀口1尉にとっては初めての航空祭。まずはナレーターとしてデビューを飾ります。

整然と整列行進して飛行機に乗り込む「ウォークダウン」を経て、各機はエンジンをスタートさせ、正面に立つ整備員と手信号で合図しながら、プリタクシーチェック(出発前点検)を開始します。エンジン出力や操縦系統、計器の動作に異常がないか、一つ一つチェックしていきます。念入りに整備していても、たまに計器の表示が異常を示したりすることがありますが、そういう場合は予備機(飛行機は7機用意され、うち6機が使われます)に速やかに乗り換える措置がとられます。ちなみにこれは「第2エンジン出力20%」を表す手信号。

展示飛行が始まります。1~4番機による「ダイヤモンド」課目、5・6番機による「ソロ」課目、6機そろった編隊飛行課目によって構成されるブルーインパルスの曲技飛行には、会場上空の気象条件に応じて第1~第4の区分に分かれた演技構成があり、離陸してから5番機が現時点での天候を確認し、それを受けて編隊長である1番機が演技区分を決定します。もちろん、天候は刻々と変化しますから、たえず状況に応じて演技区分は途中からでも変更されるようになっており、飛行中の安全を確保しています。

今回は雲ひとつない青空、微風という絶好の条件で、もちろん制限のない「第1区分」をフルで実施。真っ白なスモークが大空を切り裂くさまを、つめかけた8万人(基地側発表)の観客が堪能しました。

ただ、第1区分とはいうものの、観客のリクエストにより、ソロ課目の中で「ハーフスローロール」が初代ブルーインパルス(F-86F)時代の技を復活させた新技「バック・トゥ・バック」(本来は第3・第4区分で実施)に変更されました。……実は、ソロ課目については5番機に構成が任されており、午前中のメンバーサイン会を終えたブリーフィング(飛行前会議)で、実施する演目の詳細が決められるそうなんです。もし見たいものがあるなら、サイン会の時にリクエストすれば、うまくいくと実施してくれるかもしれませんよ。

左は、5・6番機が描いたハートマークを、4番機が矢となって射抜いていく「バーティカル・キューピッド」。右は創設50周年を記念して、今年から採用された新技「サンライズ」です。編隊宙返りを終えた後、各機が日の出のようにスモークを引きながら分かれていきます。

ダイヤモンドの最終演目、初代から50年脈々と演じ続けられている伝統の「ローリング・コンバット・ピッチ」(ファンの間の略称は「ロリコン」)、ソロの最終演目「コークスクリュー」が終わり、さあ着陸……と思いきや、飛行機がなかなか帰ってきません。とここで、ナレーターの堀口1尉が
「ここで皆さんに、我々ブルーインパルスから、一足早いクリスマスプレゼントをお届けします!」
会場正面を見ると、6機が三角形を二つ重ねた「ツリー」隊形で、しかも着陸態勢のライトを点灯させ、スモークを引きながらやってくるではありませんか!

イルミネーションに雪をいただいた、ブルーインパルスによるクリスマスツリーです。これにはみんな歓声をあげて……嬉しいサプライズとなりました。

2010年の最後を飾る新田原航空祭は、このようにしてつつがなく終了しました。個人的には、戦闘機パイロットになった後輩の同期や元同僚の人とめぐり会ったり、知り合い(元コミケットのコスプレ担当スタッフ)の第1空挺団時代の教官にめぐり会ったりと、人の縁を感じる航空祭でもありました。1月23日には、那覇基地(那覇空港)で2011年最初(2010年度最後)の航空祭が開催されます。ちょっと早めの卒業旅行で行ってみてもいいかも!?

■ライター紹介
【咲村 珠樹】

某ゲーム誌の編集を振り出しに、業界の片隅で活動する落ちこぼれライター。
人生のモットーは「息抜きの合間に人生」
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