1984年、劇場公開にあわせて「風の谷のナウシカ」を題材としたゲームがテクノポリスソフトより発売されました。

 「風の谷のナウシカ」「ナウシカ危機一髪」「忘れじのナウシカ・ゲーム」の3本です。

 当時はパソコンゲームを扱っているお店は少なく、有名パソコンショップか大型書店でしか取り扱いがなかった事も手伝ってか、現在では極めて希少なゲームソフトとなっています。

 インターネットが普及してからも、その希少性ゆえにゲームの詳細は時間の流れとともに忘れ去られ、検証することも困難だったことから長い間このゲームには様々なウワサが飛び交っていました。

 筆者(くろすけ)はジブリグッズの主に「非売品コレクター」として活動をしていますが、それ以外にスタジオジブリに関する様々な資料を読みあさることも趣味としています。またこの3作品については、「風の谷のナウシカ」だけソフトがなくて箱と説明書のみ、「ナウシカ危機一髪」は完品、「忘れじのナウシカゲーム」はソフトのみ所持で箱、説明書がない状態でそれぞれ所持しています。

 そこで今回はパソコンゲーム版「風の谷のナウシカ」3作品の制作背景やゲーム内容を、手持ちのゲームソフトの説明書に加えて当時の雑誌記事を元に振り返ってみようと思います。

■ 「風の谷のナウシカ」ゲーム3作品が生まれた背景

 1982年、徳間書店より創刊されたパソコン雑誌「テクノポリス」の創刊1周年記念イベントとして、1983年5月号にて読者を対象とした賞金総額300万円のゲームソフトコンテストが開催されました。

 当時は他にも、データイースト・エニックス・サンソフト・アスキーなどの主催で読者公募のゲームコンテストが多く開催されており、その中からドラゴンクエストでも有名な堀井雄二さんのような逸材も輩出されました。

 コンテストの応募締切りは同年8月末で、当初の結果発表は12月号を予定していましたが、当選作の審査・発表・製品化の遅れにより実際の発表は1984年4月号となっています。

 その後、大賞1作品・各部門優秀賞4作品の計5作品がテクノポリスソフトのブランドで製品化され、1984年3月21日に発売。

 受賞作5作品中の2作品が「風の谷のナウシカ」を題材としており、内1作品は大賞受賞作品となっているのには驚きですが、他の作品に比べるとアドベンチャーシーンに動きを取り入れたり、フライトシミュレーター要素を入れたりと他作とは一線を画す作りになっているのが受賞の一因にもなっています。

■ 「風の谷のナウシカ」for PC-8801.mkII

 ではまず、テクノポリス大賞を受賞した「風の谷のナウシカ」for PC-8801.mkIIからご紹介。

 制作したのは、当時大学4年生だった岩西さん。(パッケージにフルネームなど記されていますが時間がたちすぎているため、あえて学年と名字のみの紹介とします)

 本作のジャンルはアドベンチャーゲームで、主にナウシカが風の谷の村で旅立つためのアイテムを探していくアドベンチャーパートと、メーヴェに乗って腐海を旅するフライトシミュレーターパートの2つから構成されています。

 従来のアドベンチャーゲームの移動にありがちなコマンド選択によるシーンの切り替えに岩西さんは違和感を抱いていたことから、この作品での移動はキャラクターを実際に操作して画面上を動いて移動するということをウリの一つとしています。

 その他にも遠いものは小さく、近いものは大きくといった具合に絵に遠近法を用いるなどマシンスペックの制約を克服するために様々なアイデアと工夫が見られるのも特徴です。

 ちょっと個人的に気になったのは、オープニングに出てくるナウシカと王蟲のグラフィックデモなのですが、これの元になった絵というのはナウシカの前売券が初出だと思うんです。

 ナウシカの前売券の発売が1983年10月8日ですから、プログラムコンテストの時にこの画をゲームの中に使えるわけもないので、このグラフィックに関しては製品化に至るプロセスで挿入されたのかなと考えられます。

 あと、タイトル画面に出てくるテトの色が青になっているのも気になっていて、劇場版のナウシカの絵が初公開されたのがアニメージュの1983年11月号(10月8日発売)。

 実はこの号に載っているテトの色がやはり青になっていることから、それを元にしているのではないか?それとも当時のマシンスペックによる一画面の発色制限の関係からの偶然の産物なのか?と。

 こちらは3作品に総じて言えるのですが、ゲーム内で使用されている楽曲に関しても同様にコンテストの時点では入れることができないので、やはり製品化に際してテクノポリスソフト側か制作者側の方で後から追加したのではないかと考えられますね。と、気になるところをつらつらと書いてみました(笑)

■ 「ナウシカ危機一髪」 for PC-6001mkII.6601

 お次はキャラクター部門優秀作受賞の「ナウシカ危機一髪」 for PC-6001mkII.6601のご紹介。

 制作したのはME. HER HOUSEという大学生の男女5人組のグループ。本作のジャンルはシューティングゲームになっており、4つのシーンから構成されています。

 ゲーム序盤のシーン1と2では、ガンシップに乗り込んで迫りくる土鬼(ドルク)の飛行ガメや浮砲台を倒していきます。

 シーン3では飛行ガメに吊られた王蟲の幼生を助けて蟲使いの村を破壊するのが目的。

 シーン4では風の谷への帰りに羽蟲の大群と鉢合わせてしまうので、鏑玉(かぶらだま)で蟲たちを気絶させて無事に風の谷へと帰還するというオーソドックスなゲーム内容になっています。

 ここでまたちょっと個人的に気になったことを……。ゲームの説明の一節に「トルメキアの戦車隊、コルベットなどからの激しい攻撃をかわしながら」とあるんですが、トルメキアの戦車隊もコルベットもゲームには出てこないんですけどネ……(笑)


■ 「忘れじのナウシカ・ゲーム」 For MSX ROMカートリッジ

 さてさて最後は一度聞いたら忘れられないタイトル「忘れじのナウシカ・ゲーム」 For MSX ROMカートリッジのご紹介。

 3本あるナウシカのゲーム中、このゲームだけはコンテスト作品ではなく、テクノポリスソフトの第2弾として1984年8月25日に発売されました。(当初は6月25日発売だったが延期になる)

 製作者はYukiちゃんという方で、本作があまりに難しいことからテクノポリス誌上で攻略記事の執筆もされておりました(笑)

 本作のジャンルもシューティングゲームの体を取ってはいるのですが、目的はあくまでも風の谷へ侵攻してくる土鬼(ドルク)との停戦。故にゲーム中で撃墜しても良いのは、風の谷へ侵攻してくる飛行ガメだけとなっています。

 途中で出てくる王蟲に攻撃すれば怒りに我を忘れて風の谷へ向かってくるし、浮砲台へ攻撃してしまうと土鬼(ドルク)との停戦交渉自体ができなくなって即ゲームオーバーとなってしまうので、むやみな発砲は自分を苦しめるだけなので注意したいところ。

 ゲームの流れとしては、自機であるガンシップとメーヴェそれぞれの特徴をうまく使いながら、飛行ガメや浮砲台をやり過ごして土鬼(ドルク)の本国に乗り込み、まずは停戦交渉を成功させます。

 次にその足で風の谷へ引き返し、来る途中ですれ違った浮砲台に停戦を伝えれば浮砲台は引き返すので、そのまま風の谷へ無事に戻れば1面クリアとなります。


■ 3作品とも原作の内容に準じたゲーム

 このように3作品とも原作の内容に準じたゲームになっており、特に逸脱した内容があるわけではないのですが、冒頭でも述べたように、この風の谷のナウシカのゲームには事実とは異なるウワサが流れていた時期がありました(ここでは敢えて内容の記述は控えます)。

 たしかに今見れば30数年前のゲーム画面は表現力に乏しく、できることも今に比べたら少なかったかもしれません。しかしゲーム本編の内容まで曲解し、ただ面白がるのはいかがなものかと思うのです。

 今やインターネットは情報を収集する上で必要不可欠な存在になっていますが、正しい情報も間違った情報も流れています。

 全ての情報に裏付けを取る必要はないとは思うのですが、自分の興味を持った事象に対してぐらいは流れている情報を鵜呑みにするのではなく、裏付けを取るようにしていきたいものですね。

 なお、今回の記事作成にあたっては、NPO法人ゲーム保存協会の理事長・ルドン ジョゼフさんにご協力をいただきました。このコロナ禍の中でも快くアーカイブの利用をさせてくださり、誠にありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

<記事化協力>
NPO法人ゲーム保存協会

(くろすけ/Twitter:@kurosuke4313