カナダのボンバルディエ(英語読み:ボンバルディア)は2020年2月13日(現地時間)、A220(旧称:ボンバルディエCシリーズ)生産を手がけるエアバス・カナダへの出資分を全てエアバスとケベック州政府に売却し、民間旅客機事業から完全撤退すると発表しました。

 カナダのケベック州に本拠を置くボンバルディエは、民間旅客機部門からの撤退を進めており、リージョナルジェット旅客機のCRJ事業を三菱航空機に売却したほか、小型ジェット旅客機のCシリーズも2018年7月にエアバスと提携し、合弁会社のエアバス・カナダを設立するとともに、名称をA220ファミリーへと変更していました。


 今回、ボンバルディエとエアバスが共同で発表した声明によると、ボンバルディエは保有するエアバス・カナダの株式を5億9100万米ドル(約648億8323万円)で売却。まず6000万米ドル(約65億8713万円)が2020年から2021年にかけて支払われ、その後残りの5億3100万米ドル(約582億9610万円)分をボンバルディエが受領し、エアバス・カナダの将来における資金調達から解放される、としています。

 この結果、エアバス・カナダの株式保有比率はエアバスが75%、ケベック州政府が25%となります。ケベック州の事業所で働く3300名以上の雇用は保障されるとのこと。ケベック州政府の持ち分は、2026年にはエアバスに移管できる契約になっています。

 発表によると、エアバスがボンバルディエCシリーズを「エアバスA220」として売り出すようになった2018年7月以来、受注は2020年1月末現在で65%の伸びを見せているとのこと。「エアバス」のブランドが航空会社の興味を引きつける要因になっているとともに、その事業規模の大きさからアフターサービス面の安心感も得ているのかもしれません。

 ボンバルディエのアラン・ベルメールCEOは「今回の取り引きは、事業の再構築(リストラ)を進める我が社にとって、民間機からの戦略的撤退を意味します。ボンバルディエがこれまで民間機の分野において、多くの成果と多大な影響を及ぼしたことを誇りに思います。同時に、ケベック州における民間航空宇宙事業から撤退するものの、その雇用を維持し、業界をより強くする方法が選択できたことも誇りに思っています。A220のプログラムが、エアバスとケベック州政府の力によって、長く成功を収めることを確信しています」というコメントを発表。ケベック経済において大きな位置を占めるボンバルディエが民間航空分野から撤退しても、その雇用が守られる結果になったことを強調しています。

 ケベック州には、A220の胴体とコクピットセクションやA330の胴体を製造しているステリア・アエロノーティック(ボンバルディエ子会社)がありますが、こちらも今まで通り、エアバスの製造に携わるとのこと。また、ボンバルディエも航空機事業から完全に撤退するわけではなく、ケベック州政府やステリアと進めている新しいビジネスジェット開発計画(AILE)は継続することになっています。

<出典・引用>
ボンバルディエ ニュースリリース
エアバス プレスリリース
Image:Airbus

(咲村珠樹)