オーストラリアで2019年9月に発生した原野火災(ブッシュファイア)は、首都キャンベラやシドニーのあるニューサウスウェールズ州の沿岸地域全体に拡大し、2020年1月6日現在もなお延焼中です。軍は地元消防と連携し、全力で被災者救援にあたっています。

 オーストラリアの原野火災(ブッシュファイア)は、乾燥した夏であることも災いし、ものすごい勢いで延焼しました。2020年1月6日現在、火災はゴールドコースト南方からニューサウスウェールズ州の海岸に沿った地域全体を中心に広がり、ウォレマイ国立公園、イェンゴ国立公園、カナングラ=ボイド国立公園、ナタイ国立公園、ビューダワン国立公園のほぼ全域が焼失。シドニー近郊にも火の手が上がっています。

 オーストラリア国防省はこの事態に統合任務部隊(Joint Task Force=JTF)を編制。陸海空軍が共同で、地元消防当局と被災者救援にあたる「ブッシュファイア・アシスト」作戦を発動しました。

 広大なオーストラリアでは、乾燥した日が続くと原野火災(ブッシュファイア)が自然発生するため、消防当局は各種の消防用航空機を保有しています。オーストラリア空軍は、これら消防機の運用をサポートしています。


 このほか、被災者支援のために輸送機で物資を輸送。前進基地となっているアルバトロス海軍航空基地の管制塔からも火災の黒煙が見え、飛行場にも燃えた木の破片が飛んでくるという、とても緊迫した状況です。



 オーストラリア陸軍は、地元消防と連携して火災の消火活動にあたっています。シドニー北西のリッチモンドでは、第5師団に所属する工兵連隊が出動。地元ニューサウスウェールズ州消防とゴスパーズ・マウンテンでの消火活動に従事しています。

 また、陸軍ヘリコプター部隊は、支援物資の輸送にあたっています。


 海軍はドック型揚陸艦チョールズ(L100)、強襲揚陸艦アデレード(LHD01)、キャンベラ(LHD02)、航空訓練艦シカモアがビクトリア郡の町マラクータ沖に進出し、被災者の救出にあたりました。周辺海域は火災の煙で空が赤く染まり、視界もききません。


 上陸用舟艇を出し、避難してきた住民を乗せて艦へと運びます。住民だけでなく、大切な家族の一員であるペットも救出。


 各艦は浮かぶ避難所として、館内に仮設のベッドを設置。あわせて、積載した救援物資を被災者に提供しました。

 また、アデレードとキャンベラの艦載ヘリコプターMRH-90は、逃げ遅れた人がいないか捜索と救難にあたりました。眼下は火の海。高齢者など、火の回りが速すぎて避難しきれなかった被災者を発見すると、救難員が降下して救助を行います。




 オーストラリアの原野火災(ブッシュファイア)は2020年1月6日現在も延焼中で、鎮火の見込みはたっていません。オーストラリア軍と地元消防の奮闘は、これからも続きます。

※初出時、火災発生を「2019年12月」としていましたが、オーストラリア軍が統合任務部隊を組織して対処にあたったのは「2019年9月5日」からでした。お詫びして訂正します。

<出典・引用>
オーストラリア国防省 ニュースリリース
Image:Commonwealth of Australia, Department of Defence

(咲村珠樹)