鳥類の耳って、普段は羽の中に隠れているのでぱっと見では分かりません。しかし耳のある部分の羽をかき分けると、ちゃんと存在しています。そんなちょっと驚きな画像がツイッターで話題になりました。

 「ワシの耳ってどこにあるの? とよく聞かれます。 はい、ここにあります!」と、写真で紹介したのは猛禽類医学研究所の獣医師である齊藤慶輔さん。ワシの目とくちばしから少し離れたところをかき分けると、そこには穴がぽっかり。これがワシの耳なのだそうです。

 鳥好きには、耳の穴があること自体は割と知られているみたいですが、その大きさに「かなり大きくてびっくりしました」「そこに穴があるのは知ってましたが、思ってたより大きかったです」「耳の穴大きいんですね パックリしててビビりました」と言った反応が続々。

 ちなみにこのワシは、齊藤獣医師によると、「オジロワシ」という種類で、「種の保存法」で国内希少野生動植物、文化財保護法で天然記念物に指定されている絶滅危惧種なのだそう。で、この耳の穴の大きさではどのくらい聞こえるのか聞いてみたところ、「そのような研究はされていないと思われます。音声の到達距離は気象条件にもよりますし。観察などによる実感としては200~300メートルは聞こえていると思いますが、科学的な根拠はありません」との話。まだその生態に関する謎は多そうです。

 こんなに大きな耳の穴で、水が入ったりしないのか少し心配にもなったのでその辺りも聞いてみたところ、「耳の穴は普段羽毛の下に隠れておりますし、水の中に潜る種ではありませんので大丈夫だと思います」との事。羽毛は水をはじくので、雨に濡れても羽毛が耳を守ってくれていそうです。

 猛禽類医学研究所は、北海道釧路市にある環境省釧路湿原野生生物保護センターを拠点に、保全医学の立場から、絶滅の危機に瀕した猛禽類の救護や傷病原因の究明(環境省事業)、調査研究、保護活動を行っている世界的にも珍しい野生動物専門の動物病院です。写真のオジロワシも、傷病個体の診療の際に啓発活動に役立てるために撮影されたもの。

 研究所では、環境省事業として傷ついた希少猛禽類の保護、治療、リハビリテーションを一貫してチームで行っているほか、回復した個体を野生復帰させ自然環境下での行動生態を明らかにするため、追跡調査も実施しています。常に最新の医療機器も備えた施設での医療活動を行っていますが、希少猛禽類の救護活動については、「種の保存法」で指定された種(特に国が保護増殖事業を行っているシマフクロウ、オオワシ・オジロワシ)についてのみ餌や治療費の一部が環境省から支給されるにとどまっており、他の傷病鳥の治療に必要な医薬品や餌そして治療費(手術費を含む)、専門治療に必要な各種医療機器は、国内外の研究機関との共同研究、各種指導業務、講演会や著書による収入などを充てながら、研究所が独自で捻出しているという実態。野生生物の保護活動は厳しい状態にあるといえます。

 研究所では、HPやSNSによる啓発活動も盛んに行っており、今回注目されたツイートもその一つ。ヒトが自然を脅かし、人為的な野鳥の事故も増えている現状、研究所ではこうした野生生物の保全に力を入れる為にもこういった啓発活動を進めています。

<引用・参考>
猛禽類医学研究所公式HP

<記事化協力>
猛禽類医学研究所 齊藤慶輔さん(@raptor_biomed)

(梓川みいな)