ドイツの電子機器メーカー、ヘンソルドは2019年8月22日(欧州中央時間)、アメリカ海軍の新しい沿海域戦闘艦インディアナポリス(LCS-17)に同社の汎用捜索レーダーTRS-4Dが装備され、運用試験を完了したと発表しました。アメリカ海軍の沿海域戦闘艦にTRS-4Dが装備されるのは、これが初めてのことです。

 TRS-4DはCバンド(4~8GHz)の周波数帯を使用する汎用レーダー。エネルギー効率に優れた窒化ガリウム素子を使用し、最大半径250kmの範囲を1秒未満の頻度で捜索、同時に1000以上の目標を追跡可能なアクティブ走査式フェイズドアレイ(AESA)マルチビーム・パルスドップラーレーダーです。

 その目標探知能力は高精細で、RCS(レーダー反射断面積)0.01平方メートルの物体も探知可能。これから増加する、ステルス性能を持った航空機や艦艇にも対応することができます。

 ドイツ海軍のバーデン・ヴュルテンベルク級フリゲートでは、艦橋構造物上部に4つのアンテナを配置しているTRS-4Dですが、アメリカ海軍の沿海域戦闘艦用ではマスト上に設置される回転式レーダーとして使用されます。これまでの沿海域戦闘艦に採用されていたレーダーが回転式のため、艦の設計を変更せずに設置するようになった訳です。

 ヘンソルドがアメリカ海軍用として、これまでに納入したTRS-4Dは、インディアナポリスに装備されたものと、セントルイス(LCS-19)に装備予定の2セット。これ以外に8セットの発注を受けており、うち6セットはすでに工場での完成試験に合格しています。

 ヘンソルドのマネージング・ディレクター、ケン・ロイ氏は「TRS-4Dのシステム特性は、沿海域戦闘艦が直面する任務にとてもよくマッチしたものです。AESA技術によって小さな目標も高い精度でき、素早い探知頻度は艦にとって、迫り来る相手に対処できる時間的余裕をより大きなものにしてくれるのです」と、沿海域戦闘艦の任務に対する相性の良さを強調しています。

 アメリカ海軍は、沿海域戦闘艦インディアナポリスの就役式典を2019年10月26日に予定しています。インディアナ州バーンズハーバーで行われる式典では、マストにTRS-4Dを装備したインディアナポリスの勇姿を見ることができるでしょう。

<出典・引用>
ヘンソルド プレスリリース
Image:Lockheed Martin/Bundeswehr

(咲村珠樹)