2018年8月2日(現地時間)、スウェーデン政府はアメリカからペトリオットPAC-3対空ミサイルを導入すると発表しました。総予算は100億クローネ強で、追加取得の予定はありません。この1年間で、ロシアに近い立地条件にあるNATO加盟国のPAC-3導入が相次いでおり、ルーマニア、ポーランドに続いてスウェーデンが3か国目、ヨーロッパ全体ではすでにドイツ、ギリシャ、オランダ、スペインが運用しており、この1年で導入国がほぼ倍増したことになります。

 スウェーデンが導入するのは、現在開発が最終段階を迎えているPAC-3の最新バージョン、PAC-3 MSE。従来のPAC-3よりミサイルの直径を大きくし、有効(迎撃)射程距離を延長したものです。これまでのものは1基のキャニスターに4発ミサイルが装填されていますが、PAC-3 MSEではミサイルの直径が大きくなったため、3発装填されます。発射機1基につきキャニスターを4つ装備できるので、発射機1基あたりの弾数は12発。

 PAC-3 MSE取得を表明した国は、アメリカをはじめ日本、ルーマニア、ポーランド、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)に続きスウェーデンが6か国目。ペトリオット・システムの導入国としては16か国目となります。

航空自衛隊第3高射群第9高射隊のPAC-3(Image:U.S.Army)

航空自衛隊第3高射群第9高射隊のPAC-3(Image:U.S.Army)

 今回のPAC-3取得は、アメリカ陸軍が窓口になるFMS(有償軍事援助)の形式。編制に関わるノウハウの伝授までがパッケージングされたものとなります。

 今回の導入について「PAC-3はスウェーデンの防空において最も重要な能力のひとつです。スウェーデンの防空は航空機、情報連携、対空防御が一体となって運用されるものです」とエンゲルブレクソン空軍大将はコメントしています。

 これまでスウェーデンの中距離対空ミサイルシステムは、1960年代に構築されものを母体としていました。このところ高度化する弾道ミサイルの脅威に対処するため、PAC-3 MSEの導入に踏み切ったということのようです。

 今回の合意を受けて、スウェーデン軍ではこれからPAC-3調達に向けて、実務的な手続きに入る予定です。

Image:Lockheed MartinU.S.Army

(咲村珠樹)