スウェーデン市民緊急事態庁(MSB)は2021年1月28日(現地時間)、森林火災に対処するための消防機について、2020年に締結したサーブとのオプション契約を行使し、追加の2機とそれに付随する運用員などの供給を要請したと発表しました。森林火災が本格化するシーズンを前に、市民緊急事態庁の消防機は4機体制に強化されます。

 スウェーデン市民緊急事態庁は2020年4月、サーブに対し2機の消防機(ウォーターボマー)と付随するパイロットなどの業務パッケージを発注しています。契約期間は2023年までとなっていますが、オプションとして2020年の実績に基づき、さらに2機を増備する契約も付帯されていました。

サーブが運用するエア・トラクターAT-802Fファイアボス消防機(Image:SAAB)

 国土の多くを森林地帯が占めるスウェーデンでは、森林火災は特に警戒しなければならない災害で、2018年の大規模森林火災以降、政府は森林火災に対する備えを強化しました。森林火災は市街地と違って道路が整備されていないため、地上から消防車が到達できないことも多く、消化活動は航空機による空中消火が頼りです。

 サーブでは、小型で使い勝手のいい水上消防機として知られる、アメリカのエア・トラクター製AT-802F「ファイアボス」の運用パッケージを用意しています。パイロットや整備士など、必要なものがオールインワンパッケージとなっており、発注者は業務委託するだけでいいので、森林火災など季節性の火災に対し、機動的かつ効率的に消防体制を整えることが可能です。

 エア・トラクターAT-802Fは、農薬散布などに使用されるターボプロップ農業機AT-802をベースに、空中消火機能を追加した水上消防機。800ガロン(約3028リットル)ある農薬用のタンクを消火剤タンクに転用し、湖など水源に着水して補給を繰り返すことで、1時間あたり3万5000〜5万リットルもの空中放水が可能となっています。

AT-802Fは水上機のため着水して補給が可能(Image:SAAB)

 サーブの提供する消防機はスウェーデン南部のニュヒェーピングを拠点とし、活動を開始した2020年6月だけで4回の森林火災に出動。地上から消防車が到達できない場所においても、効果的な消火活動を実施したといいます。

 これら2機の消防機は、EUの市民緊急事態・人道支援部門である「rescEU(レスキュー)」の枠組みにも組み込まれており、北欧諸国で発生する森林火災に広く活用されました。スウェーデン市民緊急事態庁でオペレーションを担当するセクションのトップ、ペトロネラ・ノレル氏は「昨年の貴重な経験の結果、私たちは4機の消防機を活用することで、より強く柔軟な体制を構築しようと決断しました」と語っています。

 スウェーデン市民緊急事態庁のカミラ・アスプ事務局長代理は「サポートの必要性は今後数年間で増加するでしょう。私たちはそれに対応しなければなりません。気候変動により、森林火災のリスクは高まっています。北欧諸国では消防機の数が不足しているので、さらに2機追加する必要があると判断しました」と語っています。

 サーブでサポート&サービス部門を統括するエレン・モーリン氏は「スウェーデンにおける国家完全保障の一翼を担っていることに誇りを感じるとともに、さらに消防機が2機増備され、体制が拡充されるのを楽しみにしています。森林火災への迅速な対処は、国にとって非常に重要なことだと認識しています」と、スウェーデン政府のオプション行使を歓迎するコメントを発表しています。

 消防飛行隊が拠点を置くニュヒェーピングからは、デンマークの首都コペンハーゲンやフィンランド東部まで2時間以内、スウェーデン北部のルレオまでは3時間以内に到達可能。2021年は4機体制となり、これまで以上に迅速かつ複数の火災に対処できる体制を整備して、森林火災シーズンを迎えます。

<出典・引用>
スウェーデン市民緊急事態庁 ニュースリリース
サーブ プレスリリース
Image:SAAB

(咲村珠樹)