身の回りでどんどん対応が進むキャッシュレス決済。コロナ禍の折にはキャッシュレスで賽銭を受け付ける神社やお寺も出て話題になりました。

 そんな中、4月27~28日に京都で開催されたDIY愛好家たちの祭典「Maker Faire Kyoto 2024」で、お金を投げ入れる元来のスタイルを保ちながらキャッシュレス決済にも対応するという「賽銭箱」のデモンストレーションが登場。来場者をはじめSNSでも驚きの声が上がりました。

 手掛けたのは、ものづくりチーム「荻窪三万円」。キャシュレス決済が浸透している中、お賽銭についてはまだ小銭を投げる習慣が残っている点に着目し、スマホを小銭のかわりに投げ込むユニークな賽銭箱を作り上げました。

 木材を組み合わせた賽銭箱の表面にはレーザーカッターで加工した「浄財」の文字があしらわれ、普通に寺社においてあってもまったく違和感のない出来栄えです。

賽銭箱外観

 決済用のQRコードを表示させたスマホを投げ込むと中に組み込まれたリーダーがコードを読み取り、その後モーター駆動で箱の下からスマホが手元に返却される仕組み。「荻窪三万円」メンバーの爲房新太朗(ためふさ・しんたろう)さんいわく、色々な角度から投げ込まれたスマホを確実に読み取る部分の設計に特に苦労したそうです。

内部構造

 現在対応している決済手段は「LINE Pay」のみ。今回はデモンストレーションということで開発者向けの「サンドボックス」と呼ばれる動作試験用の機能を利用しているため、実際にお金が請求されることはありません。

 「あくまで『スマホを賽銭箱に直接入れる』という面白さを体験してもらうためのプロダクト・展示としています」(爲房さん)

 実際に会場では500人ほどの来場者がこの賽銭箱を体験。しかし多くは「スマホを投げることに抵抗がある!」という反応だったそうです。

 「デモ用に非常に頑丈なスマホをわざわざ買って用意しており、いくら投げられても大丈夫ですとお伝えしているのですが、やはり『やってはいけないこと』という先入観が拭えないようです。当たり前ですが……」(爲房さん)

 一方、QRコード決済が広く浸透している国の参加者からは「ぜひ自国で導入してほしい」と非常にポジティブな反応が聞かれたとのこと。

 爲房さんは「『未来のお賽銭』と言い張る姿にクスッとなってもらえればうれしいです」と語っています。

 この「キャシュレス賽銭箱」、次回体験できる予定は未定ですが、実際に設置されたら、また新しい参拝の楽しみが生まれそうですね。

<記事化協力>
爲房新太朗さん(@stamefusa)

(天谷窓大)