東南アジアへ行くと、日本の自動車が余生を送っている姿を時々見掛ける事もありますが、日本生まれの鉄道も頑張っていたりします。ミャンマーで撮影されたとある駅の様子が「すごく昔の名古屋駅っぽい」とSNSで話題になりました。

 この駅のホームには、現在のJR太多線でも活躍していたJR東海の「キハ11形」が停車していますが、上からホームを見下ろす形で撮影されたその列車の行先方向幕には「岐阜」の文字。高山本線かな?そしてもう一つの写真に写し出されたホームの様子、どことなく数十年前の名古屋駅の中央線といった風情。ホームの真ん中にあるのは立ち食いのきしめん屋さんかな?でもそこに映る人々の雰囲気はやっぱり異国の雰囲気。


 この写真を撮影したのは、ツイッターユーザーの“しろくま”さん。「こちらは数年前の名古屋駅の様子です。当時はまだ高架化しておらず、きしめん屋も外にありましたね。懐かしい風景です。」と冗談でミャンマーの駅の様子をツイッターに投稿したところ、「奥にツインタワーがあるし、止まってる列車は岐阜行だし、まぎれもなくかつての名古屋駅ですね。」「タイっぽい建物が見え隠れしてるけど、JRの車両だからここは日本だし、主が名古屋って言ってるからここは名古屋だな!(名推理」「ああ、まだ桜通り口だったかな、あちらの方にノミ屋とかときしめん屋や立ち飲み屋が多くあったなぁ……懐かしいねぇ。」「昔の名古屋駅懐かしい」など冗談に乗って名古屋扱いする人が続出する一方、「危うく釣られかけた」「ミャンマーじゃないか」と、一瞬本気に取りそうになる人も。名古屋在住の筆者も、2枚目の写真を見て「昭和の頃の中央線ホーム??」と一瞬釣られかけました。

 この風景、しろくまさんがヤンゴン中央駅で撮影したもの。その写真に映っている列車は、日本がミャンマーへのインフラ支援の一環として日本から譲渡されたものです。2015年、JR東海がキハ11型を運行していた路線に新型ディーゼル車、キハ25形・キハ75形を導入するに際して、ミャンマー鉄道省の要請により、廃車予定となっていたキハ11形16両をミャンマーに寄贈したものが、非電化地域のミャンマーで現在も活躍しています。ミャンマーの鉄道はレールの幅(軌間)が1000ミリと、日本のJRなどが採用している1067ミリと近いので、車両がほぼそのままで使えます。このため、JR東海キハ11形以外にも、開戦直前に軍によって輸出されたC56形蒸気機関車をはじめ、日本で活躍していた鉄道車両が、JR、私鉄問わず数多くミャンマーで第二の人生を送っています。

 ミャンマーは東南アジア地域の中でも今後の発展が重要な国。しかし、イスラム系少数民族であるロヒンギャと多数派である仏教系民族との対立が激しく、多くのロヒンギャが隣国のバングラデシュへ逃れて国際的にも問題として取り上げられていたのは記憶に新しいところ。現在、モンスーンによる洪水でロヒンギャ難民のキャンプの多くが被害に遭ってしまい、現在はその復旧作業なども合わせて進められています。日本もUNHCRの一員としてロヒンギャ難民を保護支援するほか、外交面でもミャンマーへの金銭的な支援やインフラ整備の支援を行っています。

 民族や宗教同士での紛争が起こる事自体、あまり日本に住んでいるとピンと来ないかもしれませんが、今なお民族や宗教の対立に端を発する紛争によって、痛ましい出来事が続いています。昭和の経済成長期のような雰囲気を持つ写真ですが、その陰にあるミャンマーが抱える問題にも想いを馳せていきたい。この風景を守りたいなと思う筆者、個人的に何かできる事を考えてみたいと思います。

<参考>
ミャンマー | 各国における取り組み – JICA
UNHCR 日本
Helping Host Communities

<記事化協力>
しろくまさん(@shirokuma_ed452)

(梓川みいな)