7月上旬のある晴れた朝。千葉県海沿いにある公園の駐車場で、一匹の犬が小屋や餌といった、犬にとっての家財道具一式とともに捨てられていたことが話題になったのをご存じでしょうか。

特にFacebookで大拡散された、通称「家付き捨て犬」。
炎天下の中、照りつけるアスファルトの駐車場でわけもわからず途方にくれる犬。人を見るときのおびえた目。状況を理解できていない表情。小屋の近くには水と餌……。

どういう事情で飼い主が捨てていったかは分かりませんが、後にこの子を引き取ることになる動物保護ボランティア「ぶんたの家」の方がネットに怒りの告発をしたことで、この様子は多くの人に知られることとなりました。

※追記:この記事には続きがあります。以下リンクより『「家付き捨て犬」から「別荘付きお嬢様犬」へ 拡散された捨て犬のさらにその後』を紹介しています。

【関連:「家付き捨て犬」から「別荘付きお嬢様犬」へ 拡散された捨て犬のさらにその後】

通称「家付き捨て犬」

▼Facebook
https://www.facebook.com/yasuhiro.nagatsuka.5/posts/721881514619611

■その後の話1:ボランティアにより引き取られた!

騒動になった当時、警察と動物愛護センターにより保護されたところまでが明かされていましたが、同じく現場には「ぶんたの家」スタッフも事情を知り駆けつけていました。

もともとこの子が発見された当初から引き取り打診の話があったそうですが、「捨て犬=遺棄事件」(動物を捨てる(遺棄)行為は犯罪となります)ということで引き取りまでに一ヶ月ほどの時間が見込まれていました。しかし実際は思いの外手続きが早くすみ、わずか半月ほどで「ぶんたの家」の一員に。

愛護センターでの引き取りの際は、流石に慣れない環境で過ごしたせいか一瞬だけ威嚇があったそうですが、現在は落ち着きを取り戻し本来のやさしい性格を見せているそうです。

■その後の話2:仮名は「アカツキ」に決定

さて、現在はというと「ぶんたの家」代表の永塚裕大さんの話では「ワンコは経過観察中ですが良い子ですね!」とのこと。また、名前については名無しのワンコと呼ぶわけにもいかないので、拾われた「夜明けの公園」にちなみ仮名で「アカツキ」と呼ばれているそうです。

ちなみにアカツキはメスだったとのことで、落ち着きをようやく取り戻したこともあり近日中に避妊手術を予定。性格は、比較的穏やかで「他の犬との共同生活で今の所問題になる行動は出ていませんが、小型犬には興味津々な行動を取ります」との話も。体の特徴から「コーギーミックスっぽい」とのことなので、コーギーの特徴「好奇心旺盛」が出てきているのかもしれませんね。

年齢は愛護センターの方は5歳前後、永塚さんの見立てでは3歳~5歳ぐらいに見えるそうですよ。

引き取りの時の写真

■その後の話3:里親募集開始!

保護から約1ヶ月。アカツキが落ち着きを取り戻しているということもあり、「ぶんたの家」から里親募集が開始されました。

里親になる条件は「アカツキを生涯愛し、幸せにすることのできる人」。この条件の中には、もちろん共に生きていくための経済力・住居状況等も含まれてます。

この手のかわいそうな犬・猫が話題になるたび「かわいそう」という気持ちだけで引き取り手に立候補する方がいますが、でも実際飼ってみると「家がやはり狭かった」「思ってたより吠えた」「しつけが難しい」という理由で、戻す人が少なからずいるそうです。
犬や猫はうんこやおしっこをしますし、お腹が減れば吠えたり鳴いたり、時に飼い主の気を引こうと行動することだってあります。犬なら散歩に行きたがります。ただ置いておくだけでいいバーチャルペットとは違います。

「良いことも悪いことも全てひっくるめて」アカツキを家族にする覚悟のある方。そういう方は、ぜひ「ぶんたの家」ホームページ経由にて、里親相談をしてみてください。なお、引き取りにはワクチンおよび避妊にかかる費用の一部負担が求められます。

また他にも「ぶんたの家」には新しい家族のお迎えを、首をながーくして待っている犬や猫がまだまだいます。もし今回アカツキと縁がなかった場合には、ぜひそうした子達へも目を向けてあげてください。

▼ぶんたの家

■これから動物を飼う予定の方へ

日本では年間10万頭からの犬猫が殺処分されています。数字でみるだけでもかなりの量です。今回はたまたまFacebookで話題となり注目されましたが、もし今後犬猫を飼いたい!飼う予定という人は「ぶんたの家」の子たちに限らず、近くで保護されている子達などへもぜひ目を向けてみてはいかがでしょうか。

ペットショップで売られるような子犬、子猫はいないかもしれません。
また完全なブランド犬ではなくミックスに雑種、さらにはお年寄りの犬猫も多いことでしょう。

当編集部では実は半年前から、「社員猫」が在籍しています。引越の時置き去りにされ、数年間は野良猫を経験。その後、病気となりボランティアの方に保護されたはいいけど長らくもらい手のなかったおじいちゃん猫。そういう子をあえて引き取り、死ぬまで面倒みるつもりで、スタッフ総掛かりで愛情をかけにかけまくってみました。すると、最初はちょっと臆病だったのが人なつっこくなり、見た目も愛されることにより自信をとりもどし、わずか半年間で風格さえ感じさせる渋い老猫へと変貌を遂げました。

ねこ社員近影

動物たちは愛情をかけてあげればかけるほど、必ずそれを体や目で示し返してくれます。血統書付きのブランド犬猫じゃないかもしれない。でも、命であることはかわりませんし、見た目は共に暮らせば自分の見方が変わってくるのでどんな子でもかわいく見えてきます。もしこれから飼おうという方は、ぜひぜひ候補の一つとして検討していただければと思います。

とはいえ、今すでに飼っている方たちは、今いる子達を幸せに。無理して引き取るのは単なる「犬猫屋敷崩壊」につながりかねないので、絶対それはやめてくださいね。動物を飼うことには無理は禁物ですよ!

(文:宮崎美和子)