鶏肉を生のまま食べる鶏刺しって食べたことありますか?

鹿児島県と宮崎県の一部では既に江戸時代には好んで食べられていたという記述が見つかっているほど歴史ある食文化で、鹿児島のスーパーでは、鶏刺しを魚の刺身と同じく定番で扱う店が多いそうで普段から親しまれている一品です。 数年前の焼酎ブームの影響から、全国でも鶏刺しを扱う店が増え、その知名度は徐々に高まりをみせています。

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鶏刺し

しかし昨今、生肉による食中毒があちこちで発生。中には死亡例もあり、動物の生肉食についてはかなりの注意が必要だとされています。

そんな中、鹿児島県人はカンピロバクターで食中毒になることはない、という意見が多々まことしやかに囁かれており、実際に鹿児島出身で幼少期から鶏刺しを当たり前のように食べていた人はカンピロバクター症になったことがないという人が多いようです。

■カンピロバクターとは

食中毒としてノロウィルスの次に患者数が多い細菌です。1998年以降に人の死亡例はありませんが、2015年に起こった北海道の焼肉屋での食中毒死亡事故では感染者から検出されており、一因なのではと報道されました。
症状は下痢、腹痛、発熱で潜伏期間は3日~7日と別の長め。症状が収まってからも四肢に力が入らなくなるギラン・バレー症候群を発症する可能性があるため、注意が必要です。

■考えられる理由・大酒飲みだから?

鹿児島県人がカンピロバクターに強い理由としては、腸内環境が整っている説、鶏の生食に対してガイドラインを設けて他県よりも徹底的な滅菌に力を入れているという説、鶏刺しを幼少期から食べ続けてきた食生活という環境要因から獲得した抗体や免疫があるという説など色々あるようですが、現在までに解明はされていません。

鹿児島県民の謎 生粋の鹿児島県民はカンピロバクターに強い?

しかし鹿児島県内で起こったカンピロバクターによる食中毒事故の被害者は成人の場合県外出身者が多いという話もあり、鹿児島県人の体内からカンピロバクターが検出されていても無症状であるため菌とバランスよく共生できる腸内環境なのではないかという説もあるようです。

ちなみに鶏刺しを扱うお店では、注意書きの欄に「鹿児島では昔から鶏刺しを食べていて免疫があるのか、カンピロバクターによる食中毒は聞かない」と前置きしつつ、県外者やお年寄り、小さい子供、体の弱った人にはごく稀にカンピロバクター食中毒にかかる可能性があると説明しています。どうやら専門家の人にとっても、鹿児島県民がカンピロバクター食中毒にかかることは珍しいことと考えられているようです。

また、鹿児島県は焼酎の名産地であることから酒の消費量が全国で1位です。お酒を多く飲む人の腸内では活性酸素が多く発生していることが報告されていますが、これは老化の原因となり有害なものとされている一方で体内に侵入してきた菌を殺してくれるという作用もあります。鶏刺しを食べて焼酎を飲んだらアルコール消毒できた、ということには残念ながらなりませんが、お酒を多く飲み続ける日常で発生した活性酸素がもしかするとカンピロバクターを殺してくれているのかもしれないという仮説も立てることができるのではないでしょうか。

芋焼酎

腸内フローラがひとりひとり違うことがようやく解明されつつある昨今、この謎に関しても解明される日は近いかもしれませんね。

▼参考
鹿児島大学医学部「カンピロバクター腸炎」
東北大学大学院工学研究科「長年にわたって大酒飲みの人の腸内フローラはどうなっているのか?」(PDF

(文:大路実歩子)