『サドンアタック』HP 神奈川県警は6月25日、ネクソンが運営するオンラインFPS『サドンアタック』において、『チートツール』を使用し運営を妨害したとし、少年3人を「電子計算機損壊等業務妨害容疑」で書類送検した。

 『サドンアタック』は、日本では2007年から開始されているオンラインゲームサービスで、1日約1万人がプレイする人気ゲーム。しかし人気の反面、今回の『チートツール』と呼ばれる不正プログラムが横行し長年問題となっていた。

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『サドンアタック』HP

■チートツールとは?

 『チートツール』とは、わかりやすく言えば、ゲームを有利にするために行う「イカサマ改造」のこと。キャラクターを基本以上に強化したり、普通できない裏技が使えるよう改造を施したりすことを言う。似たもので『BOTツール』というものも存在する。こちらは本来手動で操作するべきところ自動で動かせるようにする改造。
どちらも、今回のネクソンに限らず、多くのゲーム会社では『利用規約』で禁じている。

 特にオンラインゲームの世界では現実世界と変わらぬ経済が存在しており、『チートツール』を使ったキャラクターは時として、ゲームバランス以上にアイテムを獲得し、物価・ゲーム内貨幣価値に大きな影響を与えることがある。

 さらに、不正に強化されたキャラクターは一般のキャラクター以上に強いため、今回の『サドンアタック』のような、対戦をメインに楽しむゲームの場合、他が太刀打ちできないキャラクターが存在することになり、場合によっては他プレイヤーのゲーム進行を妨害することにも繋がる。

 すなわち、存在自体がゲーム世界でのバランスを大きく狂わせ、他ユーザーにまで悪影響を与えることになるのだ。

■『チートツール』使用者が摘発されるのは初

 「警察に積極的に取り締まって貰えば良い」。そう思う人もいるかもしれないが、実は『チートツール』に関し刑事事件に発展したのはこれが全国初となるそうだ。

 長年この問題が放置されてきたのには訳があり、『チートツール』を直接的に取り締まる法令がないからである。
それに、問題が発生しているのは、あくまでゲーム内世界であり、現実ではないため、警察が積極介入しにくいというのも理由の一つに挙げられる。

 今回のケースではネクソンが被害報告をし、積極的情報提供を行ったという状況があるため、警察も満足に動けている。
さらには、少年らがツールを使用することで、「電子計算機損壊」(コンピューターやサーバーにある電磁的記録の機能や効用を阻害する行為)「業務妨害」などの実害があったため、直接的ではないものの、与える影響が悪質と判断され摘発に繋がったようだ。

 ちなみに今回については国内で発生した事例のため摘発できているが、過去ゲーム業界関係者から聞いた話によると『チートツール』を使うようなプレイヤーは海外からのアクセスが多いという。
ゲーム企業を狙ったサイバー攻撃や不正ツールの発信源を調べていくと、中国・アメリカ等からのものが多いそうだ。
その場合、発信源が海外からと分かった時点で捜査は暗礁に乗り上げ、前例ができたにせよ、海外からのアクセスに関しては、今後も無法状態が続くことが予想される。

■今回の事例はじゃぁ無駄ってこと?

 今回ネクソンが行った対応は、ゲーム業界全体に重要な意味を残すことになる。
『チートツール』の使用は、ゲーム会社独自に設ける『利用規約』で厳格に禁止されていたものの、先にも述べたように直接対応する法令はなく、刑事事件に発展するケースもこれまでなかった。
一般にもその認識は浸透しており、これまで違法性はないと判断されていたため、使用する人が後を絶たなかった。その証拠に、今回書類送検された少年2人は、使用の他『チートツール』の開発・販売も行っていたそうだが、2011年から2013年までの間に販売した相手は約4千人にものぼったという。

 しかし、今回のケースでは使用することで及ぼす悪影響が認められており、例え海外ユーザーについては無法状態だとしても、少なくとも今回のような国内のケースには今後十分な抑止力を発揮していくことになるだろう。

■『チートツール』販売業者は大慌て!

 今回摘発の第1報があったのは6月25日(水)14時頃。それから一夜明けた今朝、ネットで検索してみたところ、今まで『サドンアタック』の『チートツール』を販売していた業者や、作り方を紹介していたサイトが軒並み扱いを終了していた。中にはサイト自体を閉じたところもあるようだ。
まだ残っているところも多少あるが、これも情報が伝わるにつれ徐々に消えていくだろう。

業者HP

 なお、現在は『サドンアタック』やネクソン関連の販売のみを終了し、他社ゲームは扱いを継続しているところが多い。しかしこれも、各運営会社の今後の対応によっては販売終了を余儀なくされるのではないだろうか?それに、これを機に『チートツール』の利用者は国内では激減することだろう。誰だって自分のことがテレビで報道されるのを見たくは無いはずだから。