「お魚くわえたどら猫」という有名な歌詞がありますが、ツイッターでは「お魚くわえたお魚」の写真が投稿され注目をあつめています。どうしてこうなった?

 投稿したのは、画家でイラストレーターのかわさきしゅんいちさん。主にいきもの関連書籍の挿絵を担当しており、2023年3月出版の「新種発見物語」(岩波ジュニア新書)では表紙を担当。絵本「うみがめぐり -自然をみつめる絵本-」(仮説社)という著書ももっています。

 かわさきさんは仕事で「いきもの」を描いているだけではなく、根っからの「生き物好き」。

 今回の「お魚くわえたお魚」も、400円という安さに加えて「観察できる生き物が増える」という一石二鳥の「お得感」もあり購入してみたそうです。

 ツイッターでは「サバを咥えながら絶命したイナダが激安だった(網の中で爆食いしたと思われる」と紹介されていましたが、結果はどうなったのか?かわさきさんに詳しい話をうかがっています。

--写真の「お魚くわえたお魚」はどこで購入したものでしょうか?

近所の鮮魚店で400円で売られていたので普通に買いました。安かったので。パックに入れられている時点でサバのおしりが口から飛び出ていました。

--売られていた時点でおしりが口から飛び出ていたんですね……魚の扱いになれていない私のような者からしたら、購入自体すごい勇気だなと思いました。

サバは捌く際に取り除けばいいだけなので購入時に特に不安はないです。

魚を捌いてみると胃の中に別の生物が入ってることってよくあるんですが、生き物好きの自分にとっては観察できる生き物が増えるってことでもあるんでむしろお得感があります!胃や腸は捌く時に取り除くので間違えて一緒に食べるとかもないですし。

--胃の中も観察対象なんですか!「いきもの」を描くとはそこまで観察するものなんですね。

胃の中とは別でよく見るとウオノエやカイアシ類などの寄生虫が口の中や表皮にいることもあって、そのへんも見つけたら嬉しい!って感じです。

--改めての確認ですが、購入した2尾の種類を教えてください。

大きい方はイナダ、くわえられているのはマサバですね。背側の縞模様が特徴的なのですぐわかりました。

--口に入っているお魚(マサバ)を取り出す時はそのまま引っこ抜いたのですか?

口から引っ張ろうとするとヒレが返しになっていて微動だにしないんです。なのでお腹を捌いて内臓をとるときに、お腹の中に手をつっこんで引っ張り出しました。

--捌いてみてイナダの胃の中はどうでしたか?

胃の中は空でしたが、このくらいのサイズの魚はよく網に捕まった際に混獲された他の魚を爆食いすることがあります。

--網の中で爆食い!たしかに網の中に沢山のお魚が入っている映像をみたことがあります。あのときに魚が魚を食べちゃうことがあるとは知りませんでした。

以前同じくらいのサイズのサバを捌いたら中から小魚が3尾ほど出てきました。

--このあとどうやって食べたのでしょうか?2尾とも食べられましたか?

くわえられていたサバは消化はされておらず食べられないほどではなかったのですが、それでも痛みがまぁまぁあったので食べずに捨てました。

イナダの方は刺身、照り焼き、塩焼き、味噌汁にして家族でいただきました。おいしかったです。

お魚を捌くのは一見ハードルが高そうですが、普通の三徳包丁でもできますし、いまならYouTubeに魚種ごとの捌き方解説が必ずあるのでそれを見ながら誰でも挑戦できます。

ただ自分で捌いて刺身等生食にする場合は、中毒を引き起こすアニサキスがよくいる魚などがいますので、魚種ごとの注意点をよく調べてからにすると安心です。

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 「お魚くわえたお魚」という、ふだんスーパーなどでは見かけない状態で売られていた今回のイナダ。

 私(記者)のような、魚の扱いに慣れていない人間からしたら、おもわずギョギョッとしてしまう存在ですが、安くて美味しい、しかも観察する「好奇心」があれば、確かにお得感しかありません。

 最初は「お魚くわえたお魚」に対する興味からのインタビューでしたが、「いきもの」を主に描く画家・イラストレーターとしての魚への視点、さらには扱いまでもうかがうことができ、インタビューした私にとっては一石二鳥どころか三鳥も四鳥も得られた気分です。

 かわさきさん、今回は貴重なお話ありがとうございました。

<記事化協力>
かわさきしゅんいちさん
 Twitter:@nupotsu104
 HP:https://kawasakishunichi.tumblr.com/

(宮崎美和子)