日本のお隣の国、台湾。お茶や食、夜市などのほか、レトロな建物も魅力のひとつ。各地には日本統治時代の公共建築をはじめ、個人の住宅にも素敵なレトロ建築が存在します。

 台湾の文物を再現した雑貨を手がける作家さんが、招かれたご友人の家を許可を得てTwitterに投稿。雰囲気あるレトロな空間が注目を集めました。

 ぶちこさんは「台湾再現雑貨necco」の名称で、台湾のビルや面格子をモチーフにしたステンドグラス作品などを作っています。先日久しぶりに台湾へ行った時のこと。台南に住むご友人が、ぶちこさんがレトロな宿に泊まっていることに驚き、次のような言葉をかけてくれたそう。

 「そんなに古いの好きならうちにくるといいよ!古いから」

 レトロな建物と聞き、ぶちこさんはご友人の家へ。ご友人にSNSへの掲載許可を得て、今は使っていないスペースを中心とした建物内の素敵な写真をTwitterに投稿しました。なお本記事でご紹介するにあたり、再びご友人の許可をいただいています。

 ぶちこさんによると、この建物は台南市の中心部にあり、外装はタイル張り、鉄窓花(防犯のため窓や入り口のドアに設置された装飾鉄格子)が魅力的なビルとのこと。ご友人のお祖父様の代から住んでいるそうで、建物の前部分は会社、後ろ部分を現代風に改装した住居として使っているんだそう。

 写真の中で特に印象的なのが、シャフトがなく、かご部分がむき出しになっている1960年代に設置されたというレトロなエレベータ。ドアも格子戸(シャッター)式で、かご自体はワイヤロープではなくチェーンで吊られて昇降する仕組みになっています。

かご部分がむき出しになったレトロなエレベータ(ツイートのスクリーンショット)

 かごの左右にはガイドレールがあり、落下事故を防ぐ安全装置も付いているようだとのこと。以前は荷物運搬用のリフトとして使われていたそうですが、現在は足を悪くしたご友人のお母様が階をまたいで移動する際に使われているのだとか。まだまだ元気に動いているんですね。

 腰のあたりで色が分かれた2トーンの内壁は、いかにも昔の事務所という感じ。手すり部分が赤く塗られた階段も曲線の装飾が軽やかで、えもいわれぬレトロ味を感じさせてくれますね。

階段の手すり装飾もレトロ(ぶちこさん提供)

 最上階は、もともと屋上テラスだった場所に屋根を架けた構造。模様(型押し)ガラスの入ったドアに続く廊下部分の壁は、腰の高さまでがジントギ(人造石研ぎ出し)仕上げとなっており、建物が昭和戦前期あたりのものではないかと思わせます。

最上階の様子(ぶちこさん提供)

 屋上テラスだった部分を屋内にしたため、ここには窓の内側に鉄窓花が残されています。建物に面した通りからは高さがあり、人の目が届きにくいためか、デザインはシンプルでモダンなもの。

元は屋外に面していた鉄窓花(ぶちこさん提供)

 それでも細い板をねじりながら交差させ、交点をリベット止めにしたデザインは、鉄窓花の名の通り、小花が並んで咲いているかのよう。そっけない格子戸にせず、こういう部分にも潤いのある装飾を施しているのは、レトロな建物ならではですね。

シンプルながら可愛いデザイン(ぶちこさん提供)

 今は使われていない部屋には、古びたステレオセットが残されています。これはご両親の引っ越し祝いに贈られたものだそう。残念ながら、今は壊れて動かないそうです。

ご両親の結婚祝いに贈られたという古いステレオ(ぶちこさん提供)

 レコードプレーヤー部分の窓には「新居誌喜」という言葉が朱書きされています。これは「お引越しおめでとう」といった意味だそうで、引越しを祝う贈り物であることが分かります。

レコードプレーヤーの窓には「新居誌喜」の文字(ぶちこさん提供)

 建物を紹介することについて、ぶちこさんがご友人に許諾を求めたところ、ご本人は「こんなの好きな人いるの!?」という反応だったんだとか。古い建物にずっと住んでいる側としては、逆に見慣れている分、新鮮な反応に驚いてしまうのかもしれませんね。

 街中に溶け込むように建っているレトロな建物。修復の行き届いた保存建築とは違い、今も人が暮らしている「生きた建物」だけに、また独特な光を放っているのも魅力といえるでしょう。台湾の新たな魅力に気づかせてくれるツイートでした。

<記事化協力>
ぶちこ@台湾再現雑貨neccoさん(@Jm7nC

(咲村珠樹)