読者の皆さんが初めて遊んだオンラインゲームってなんですか?

 筆者はウルティマオンライン(Ultima Online)が初めて遊んだオンラインゲームなのですが、人によっては一代ブームとなったラグナロクオンライン(Ragnarok Online)やリネージュ(Lineage)といった韓国産MMORPGなどを挙げる方も多いかもしれません。

 2000年初頭より韓国産MMORPGなどが大流行し、皆がパソコンの前に齧り付いた時代はほんの少し前でしたが、その時代にはMMORPGをはじめとする沢山のオンラインゲームが配信され、皆さんも楽しんでいたことかと思います。

 今回はその中からMMORPGの金字塔とも言える作品、ウルティマオンライン(以下UO)をご紹介いたします。

ウルティマオンライン ログイン画面

 UOのサービス開始はなんと1997年(平成9年)。米国で1997年9月に発売され、日本でも同年10月に発売されています。

 今でこそ光回線が当たり前のように家庭で利用されていますが、サービス開始当初は電話回線を使った通信で遊んでいる人が大半でした。電話回線を使うということは遊んでいる時は電話を使えず、家族に怒られた経験のある人も多いのではないでしょうか?夜家族が寝静まったあと「テレホーダイ」※のサービス時間である23時を目標に回線を接続する……なんてゲーマーも多かったことかと思います。

※テレホーダーとは:固定電話のオプションサービス。月額固定料金で23時から翌朝8時までの間、指定電話番号への通話が使い放題になる。プロバイダのアクセスポイントを登録して使用していた。

 パソコンのスペックも今から考えると非常に低い時代ではありましたが、元々2Dグラフィックスで構成されたゲームは通信環境を除けば快適に動作する軽さと、最初期のオンラインゲームとしては破格の自由度が魅力のタイトルでした。

 レベル制ではなくスキルの割り振りを自分で設定してキャラクターを成長する楽しみ、ゲーム内での生活を自由に謳歌できることが最大の魅力。ゲーム内イベントを申請すればゲームマスターが手作りで建築物を作ってくれる、などユーザー、運営両方が協力するなどの「みんなで作り上げている感覚」というのが魅力的でした。

 ……余談ですが、筆者はゲーム内で複数のギルドが合同で楽しめる「クラフトアイテムやドロップアイテムを販売するためにバザーを開きたい」と申請したところ、ゲームマスターがマップに手を加えて即席のステージなどを構築。それを見て「なんて自由なんだ!」と画面の前で感動した記憶があります

 その反面、あまりの自由度の高さから「何をしていいのかわからない」、「わからないのですぐに遊ぶのを止めてしまう」、「街の外に出るといきなり他のプレイヤーに殺されてしまう」など、自由であるが故のデメリットなども沢山存在していました。

 対人戦禁止ワールドであるトランメル、初心者向けの街であるヘイヴンが設置されてからそういったことは少なくなったかと思いますが、先輩プレイヤーが初心者を見つけてギルドへと勧誘、そのまま育成する、なんて光景もよく見られたものです。

 この時代のオンラインゲーマーは割と大らかな人が多く、UOはサーバートラブルも頻発することが多かったので、1日ゲームができないというのも割と多かった記憶があります。

 意気込んで回線を繋ぐがゲームを起動しようとしてもコネロス……ガッカリしながらその日は就寝する……という記憶も多く存在しています。

 ブリタニアの中で生活し、泣き、笑い、そして協力して遊ぶというMMORPGの原点はここにあると言っても過言ではない何かがそこには存在しており、今なお沢山のオンラインゲームの中で特別な立ち位置にあるといえます。

 リアルマネートレード(RMT)、これもまた今ほどタブー視されてはおらず、多くのプレイヤーが軽い気持ちで利用していた時期でもあります。

 ゲーム内のゴールドを販売するだけではなく、ブリタニアは深刻な土地不足であったため、ゲーム内の住居は莫大な資金もしくはリアルマネーで購入するしかない状況も生まれました。

 一番小さい住宅は3万円程度、巨大なお城は45万円と、びっくりするような金額で販売され、メディアでそのことが取り上げられたこともあったようです。これも多くのプレイヤーがゲームを遊び、そこに市場価値が生まれたことが要因ともいえます。

 近年、ビットコインなどで海外のマイニング事業者がパソコンを大量に並べているという、マイニング工場が取り沙汰されたことがありますが、UOのゴールド販売業者はこの時代から既にそういう体制を作り上げていました。もちろん当時も問題視されましたが、ファッションと同じで時代は巡るのだな、とニュースを見て考えてしまいました。

 ただ多くのプレイヤーがゲーム世界に集中したのはほんの一時期。月額利用料金の値上げや相次ぐ仕様変更、マンネリ化、家庭の事情などにより、次第にプレイヤーの心が離れて行き、多くのプレイヤーがブリタニアでの夢のような生活を捨てて行きました。

 どうして引退をしてしまうのか、当時プレイヤーだった筆者は気がつくといなくなってしまう仲間に戸惑い、悲しみを覚え、そしていつしか仲間のいない世界に魅力を感じなくなっていきました。アニメオーバーロードの最初のシーン……主人公モモンガと同じ気持ちをきっと当時のプレイヤーだった方は共感できるのでないでしょうか?

 ……果たして何が原因だったのでしょう?

 時代の変化もそうだったかもしれませんが、実は現在のソーシャルゲームの中でも盛んに言われているUX、ユーザーエクスペリエンスの課題をクリアできなかったことが、UOというゲームの最大の欠点であったと言えると思います。

 ブリタニアという世界は素晴らしい体験をもたらしますが、その体験に至るまでの刺激的な導線、わかりやすく親切なUIなどは存在せず、「やって覚える」「言われて気がつく」の繰り返しによって成り立っていた気がします。

 諦めずにチャレンジをし続けるプレイヤーには極上の体験を、そうではないプレイヤーに対しては只々難しいゲームという印象を与えてしまっていたことが、このゲームの敷居をあげてしまった可能性があると考えます。

ゲーム内

 仕様変更で追加された新しいシステムは初心者には理解しにくいものが多く、古参のプレイヤーですら覚えることが多く、新しい仕様変更についていけない、という声は割と頻繁に聞くフレーズだったのです。もっとライトに、MMORPGを遊びたいというニーズにはUOは少し重量のあるゲームであると言わざるを得ません。

 2022年現在では既に日本でのサーバー運営は終了しており、フェルッカに所持していた筆者のタワーも既に電子の海の中へと消えているようです。とはいえ、サービス自体は海外に移管し引きつづき行われており、日本人プレイヤーもまだまだ健在です。

当時知り合いだった女性プレイヤー(実はリアルで直接会っていて、大変綺麗な女性でした)とブリタニア内交換日記をしていましたが、あれは誰か知らないプレイヤーに見られてしまったのでしょうか……真実は既に電子の中へと消え去ってしまいました。あゝ青春の甘酸っぱい思い出と、あれだけは直接人に見られたくなかったな、という後悔のようなものを今更感じました。本当に何を今更、という話ではありますが。

 その後入れ替わるように台頭してきたのが、韓国産MMORPGに代表される新世代のオンラインゲーム群。次回からはPCMMORPG市場を一気に席巻していった韓国産MMORPGについてお話ししていきます。

<参考・引用>
ウルティマオンライン公式サイト(英語)
※掲載画像はウルティマオンラインゲーム内のスクリーンショットです。2022年12月2日筆者撮影。

【上村健太郎:筆者プロフィール】
神奈川出身、東京在住。オンラインゲーム業界において長らくプロモーションやプロデュースなどを担当し、数多くのタイトルを立ち上げ、そして終了させてきた苦い経験の持ち主。
私生活では妻と二匹のビーグル犬よりも地位の低い生活を満喫中。