社会人になると経験する名刺交換。そんな名刺交換の駆け引きをモチーフにしたボードゲーム「斎藤vs中村」が、ゲームマーケット2022秋にてAlbatross Boardよりリリースされました。

 差し出してしまった不備のある名刺を、相手に知られず回収できるかを競う、仁義なきバトルの幕開けです……。

 2022年10月29日・30日に東京ビッグサイトにて開催された、日本最大級のアナログゲームの祭典「ゲームマーケット2022秋」の新作としてリリースされたのが、名刺交換を題材とした「斎藤vs中村」です。高校時代の友人同士が集まって結成されたボードゲームサークル「Albatross Board」にとっては、これが初めての作品。

「斎藤vs中村」パッケージ(Albatross Board提供)

 ゲームの設定は、サラリーマンであるプレイヤーが、名刺交換で差し出した名刺にミスがあったと気づくところから始まります。取引先や自分の同僚・上司にこの失態が知られたら、自分の評価が下がってしまいます。なんとか先方に気づかれず、速やかに名刺を回収できるか……を競う内容です。

 設定でも分かるように、各プレイヤーは全員、自分の渡した名刺にミスがあることに気づいており、逆に受け取った方はミスに気づいていません。いかにほかのプレイヤーを出し抜き、自分の名刺を回収できるかが勝利の鍵となります。

 プレイヤー数は最大4名。それぞれ「斎藤」「佐々木」「中村」「上田」となり、各プレイヤーあたり5種類ずつの「基本カード」、7種類の「特殊カード」によってプレイヤーの行動が決定されます。

基本カードと特殊カード(Albatross Board提供)

 ゲーム開始時、まずプレイヤーは配られた名前カードで自分の名前を確認します。これは自分だけに分かるようにし、ほかのプレイヤーに知られないようにしなければなりません。

名前カード(Albatross Board提供)

 また、各プレイヤーは「基本カード」を4枚ずつ手札にしてスタート。残った「基本カード」は、2枚だけ捨て札として表にしておき、あとは裏返しにして山を作っておきます。「特殊カード」は、すべて裏向きで山を作ります(2人プレイ・3人プレイでは使用しない札があるので抜いておきます)。

ゲーム開始時の状態(Albatross Board提供)

 任意の方法で順番を決めたら、まず特殊カードを山から1枚取ります。特殊カードを引いたら、特殊カードを1枚使用することができます。

「特殊カード」を引く(Albatross Board提供)

 その後、自分以外にプレイヤーを誰か指名し、基本カードを交換します。この際、基本カードはプレイヤー全員に公開した状態で交換し、誰の手元に誰のどういう基本カードが交換されたかが分かる状態。

「基本カード」を交換(Albatross Board提供)

 この行為を順番に繰り返していき、自分の基本カードがすべて(手持ちプラス交換で手に入れた4枚)揃ったら「証拠隠滅!」とコール。その時点で勝者となります。

「証拠隠滅」の状態(Albatross Board提供)

 ただし、コトはそう簡単には進みません。特殊カードによる効果のほかに、特殊行動として相手をゲームから脱落させる「告発」と「裏告発」、自分が勝ち逃げできる「定時退社」が各1回だけ使え、うまく相手を陥れることも可能。

 特殊カードの効果と特殊行動を使いこなし、ほかのプレイヤーを出し抜いて「証拠隠滅」できるか。とっつきやすいカジュアルさがありながら戦略性も高く、ほかのプレイヤーの正体が誰なのか、腹の探り合いも醍醐味のひとつです。

 特殊カードの効果や特殊行動を中心としたルール策定や、ゲームバランスの設定には、かなり苦労したとのこと。何度もテストプレイを重ね、調整していったそうです。同時にカードやパッケージ、説明書の見た目にもこだわり、ピクトグラムを多用して親しみやすいデザインを心がけたとのこと。

 「家族や友人など、内面をよく知る人たちと遊ぶと、相手の考えていることを予想しやすくて面白いのではないでしょうか。現代日本を生きるすべての方々、特に斎藤さん、中村さん、上田さん、佐々木さんには是非とも遊んでいただきたいと思っています(笑)」

 自分はどういった戦略で「証拠隠滅」を目指すのか。そしてほかのプレイヤーはどんな戦略で臨んでいるのか。プレイ中の心理戦だけでなく、終了後に答え合わせする時も楽しそうですね。

 初めて出展者として参加した「ゲームマーケット2022秋」で、この「斎藤vs中村」は来場者から大好評。持ち込み分はわずか2時間で完売してしまい「気になっていたのに!」と惜しむ声を多くもらったんだそう。ゲーム内容の説明をした際も、コンセプトが面白そうだという感想をもらったのだとか。

 これから作品を作ってみたいという方に対しては、自身の「斎藤vs中村」もミーティングの名目でメンバーが集まり、おしゃべりしながら少しずつ形にしていった、という経験も踏まえ、次のようなアドバイスをしてくれました。

 「仲間と一つの作品を作り上げるという過程では大変なことも多々ありますが、とても達成感があります。特にゲームマーケット出展は、学生時代の学祭のような楽しさがあると感じています。やってみたいという気持ちが少しでもあるのであれば、とりあえず走り出してみることをおすすめします」

 次回作についても、いくつかのプロジェクトが進行中とのこと。「どのゲームが次回作になるかはまだ定まってはいないですが、2023年秋のゲームマーケットでの公開を目標に複数のゲームを考案し、それぞれテストプレイを進めております」といいますから、今から楽しみですね。

 ゲームマーケットでは“瞬殺”だった「斎藤vs中村」はBOOTHでの通販が始まっており、11月末には発送が始まるとのこと。サークル「Albatross Board」の公式サイトにて販売ページが案内されています。

<記事化協力>
Albatross Board(@AlbatrossBoard)

(咲村珠樹)