刺繍の技法のひとつである「クロスステッチ」を用いて、主にゲームをテーマにしたファンアート作品を制作しているchikikoさん。8月22日にツイッターで公開した作品が「斬新すぎる」と話題を呼んでいます。

 その作品とは、ゲームはゲームでも昔懐かしいROMカセットの中の「基板」。はんだ付けされたチップやバッテリー、端子が刺繍によって完全再現されています。その発想はなかった……!

 chikikoさんが今作を制作したのは2021年6月ごろ。夫婦で電子工作アクセサリー作りを行っている、知人の新築祝いに何かプレゼントしたいと考えたのがきっかけ。電子工作に基板は欠かせないことから「こういう作品だったら喜んでもらえるかな」と思い、制作を始めました。

 モチーフとした基板はゲームボーイソフト「スーパーマリオランド2 6つの金貨」のもので、知人が初めてクリアしたという、思い出の詰まったソフトなのだそう。知人に基板の写真を送ってもらい、細部までよく観察しながら図案を起こしていきます。

chikikoさんが制作した図案

 完成した図案を元に刺繍を進めて行く工程の中で、chikikoさんが特にこだわったのは陰影を付けてより本物っぽく仕上げること。

 たしかに、チップの影になっている部分や、金具の光の反射などが、糸の使い分けによって見事に再現されています。その為の刺繍糸の色選びも慎重に行い、丁寧に作業を進めて行きました。

 こうして完成した作品は、まさに知人のソフトへの思いと、chikikoさんの技術が合致したからこそ生まれた、唯一無二の作品。

実際に刺繍した作品

作品の上部にソフトタイトルを記載

 その出来栄えについては「普段から遊び心のある作品づくりを心がけているので、そういう意味でもこの作品は私が目指したものが形になった作品だと思います」と、chikikoさん自身も納得の様子。

 完成した作品を知人にプレゼントしたところ、それは大層喜ばれたとのこと。贈答から1年以上が経過した今も、知人宅のゲーム棚に、ソフトと共に大切に飾られているそうです。

 以降は、基板をテーマにした作品は作っていなかったそうですが、今作が注目を集めたことをきっかけに、再度取り組むことを決意。次はどのハードの、どのソフトの基板を選ぶのか、レトロゲームファンとしては今から楽しみです。

<記事化協力>
chikikoさん(@aozorachiki)

(山口弘剛)