ことわざに「トンビに油揚げをさらわれる」というものがありますが、あくまでもそれは例え話。実際にトンビが油揚げを狙うわけではないのですが、人間が持つ別の食べ物を狙って襲ってくるケースがあります。ユネスコ世界遺産に指定されている広島県の宮島で、持っていたパンをトンビに強奪された瞬間の画像がSNSに投稿されました。

 この「トンビにパンをさらわれる」瞬間の画像を投稿したのは、TwitterユーザーのKota Minatoさん。事件が発生したのは、久々に宮島へ出かけた際のことだそうです。

 Minatoさんによると「お昼ご飯に、勝谷菓子パン舗さんで広島名物の魚肉カツ『がんす』が入ったコッペパンサンド『うまいでがんす』を購入。宮島の表参道商店街を出たところの海辺で、鹿に邪魔されないようにと、塀に座って食べようとしました」というシチュエーション。

 食べる前に、海をバックにパンの写真を撮ろうとスマホを取り出した瞬間。「急に影が横切り、パンを持っていた左手に衝撃が走りました」と、Minatoさんはその時を振り返ります。

 一瞬のことで、何が起きたか分からなかったというMinatoさん。「気づいたら、目の前の砂浜にパンが無惨にも横たわっていました。飛び去るトンビのような鳥を見て、やっとヤラレタ……と思いました」Minatoさんの言葉には、楽しみにしていたパンを無駄にされた落胆の色が見えます。

 Minatoさんはパンをダメにされたショックもあり、恐らく普通にパンの写真があるだけだろうと思ってカメラロールのチェックは後回しにしていたそう。でも、しばらく経って写真を確認してみると、想像以上の決定的瞬間が写っていました。

トンビにパンを掴まれた瞬間(Kota Minatoさん提供)

 写真には、斜め上からものすごい勢いで降下してきたトンビの体と、パンにガッチリ食い込んだトンビの両足。トンビによる「狩り」の瞬間が克明に写っていたのです。「狙って撮れるものじゃないでしょうし、本当にタイミング良く、パンを掴まれた瞬間にシャッターが下りていた感じです」とMinatoさんも驚きの声。

 海辺ということもあり、上空にはウミネコやトンビが飛んでいる光景を目にすることがある宮島。しかし、Minatoさんにとっては初めての経験だったそうです。「ただ、ツイートへの返信などで見る限り、たまにあるようですね。宮島や海辺に住んでいる人たちの逞しさを感じました」

 あれだけの勢いでトンビが降下し、鋭い爪がパンに食い込んでいる様子を見ると、Minatoさんが怪我をしていないか心配ですが「幸い怪我はありませんでした。写真にあるように、うまーくパンだけをかっさらわれました」とのこと。目標だけを的確に掴み、すぐに上昇に移るというトンビの高い飛翔能力を見せつけられた思いです。

 Minatoさんは「宮島は鹿が多くて下に気をつけがちですが、上空もしっかり注意しないといけないですね。むしろトンビやカラスの方が危険かもしれません」と今回の経験を踏まえて語っています。「ツイートの返信にもありましたが、外で食べるなら屋根の下や、日傘を使うようにした方がいいかもしれません」とのアドバイスもしています。

 鹿の場合は近づく様子に気付きやすいものですが、空から狙っている鳥の場合、気配に気づかぬうち瞬間的に襲ってきます。人気の少ないところだと、より狙われやすくなりますから、食べる場所には注意した方がよさそうです。

<記事化協力>
Kota Minatoさん(@makooota)

(咲村珠樹)