新型コロナウイルス感染予防で外出自粛や3密(密集、密接、密閉)の回避を求められているなか、スポーツ庁は慢性的な運動不足による筋力の低下を防ぐために運動の留意点と運動方法をホームページ上で掲載しています。

 特に高齢者の場合は、運動不足になると体力が減少しやすく生活習慣病等の発症や骨粗しょう症、認知機能が低下する危険性が高まるといった「健康二次被害」が起こる可能性が高くなります。

 社会福祉士である筆者は障害者施設に勤務して、障害者の方に健康管理の方法や健康増進について助言をしてきました。障害者施設にも高齢の方がいて、転倒の危険性を気づかう場面が多く筋力を維持するために運動をすることは非常に重要であると断言できます。

 特に高齢になると老化による筋肉量の減少により、運動機能が落ち、肉体疲労がたまりやすくなります。それゆえ外出することに消極的になりやすく、運動不足を引き起こす可能性は高まります。

 スポーツ庁が公開している運動方法には具体的な運動への取り組み方を図解や写真で掲載しており、幅広い年齢を対象にしつつ高齢者の方でも比較的とりくみやすいものになっています。

■ 運動器症候群「ロコモ」って知ってる?

 高齢者は運動不足になると「ロコモ」という状態になる危険性が高くなります。「ロコモ」とはロコモティブシンドローム(運動器症候群)の略で、筋力が低下して立ち上がることや歩くといった力が低下することをさします。健康で長生きをし、将来介護を必要とせずに生活をするためにはロコモの進行を抑える必要があります。

 スポーツ庁のページでは、高齢者でも無理なく室内で行える運動として、「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」を紹介しています。ここでは「片脚立ち」と「スクワット」の重要性を解説。この運動では、バランス能力をつけ、下肢筋力の増強に力をいれることで転倒の危険性を下げることを目標にしましょう。

ロコモを防ぐ運動

▼片脚立ち
 体のバランス能力を維持するために重要となります。転んでケガをしないために、必ずつかまるものがある場所で行う必要があります。また安全に行うために、両手や片手をつけて行いましょう。姿勢を真っすぐにして、床につかない程度に片脚を上げることを左右1分間ずつ、1日3回行うと効果的です。

▼スクワット
 下肢筋力をつけるために行います。片脚立ちと同じく安全面に配慮して、つかまるものがある場所で行いましょう。まず肩幅より少し広めに足を広げ、つま先は30度開きます。この時、膝がつま先より前に出ないようにして、おしりを後ろにひくように身体を沈めます。膝への負担をかけすぎないために、膝は90度以上曲げないようにします。

 スクワットが難しい場合は、イスに座って机に手をついて立ち座りを繰り返すことでも同様の効果が見込めます。スクワットをしている時は息を止めずに深呼吸をしながら、5~6回繰り返します。1日3回行うことを目標とします。

■ 日常生活にも「ながら運動」を

生活アクティブ体操の方法その1

 「生活アクティブ体操」として、生活の中での「ながら運動」について詳しく体操方法も掲載しています。慢性的な運動不足に効果的で日々のストレス発散としての運動は重要です。

 この項目の中で日常生活に組み込める体操は「台所で体操」「テレビを見ながら体操」「トイレに立ったついでに体操」。

▼台所で体操
 日常生活で転倒の危険性を下げることを主な目的とし、下肢筋力の増強に期待が持てます。膝の曲げ伸ばし、足の内回しや外回しを行う方法といった台所で行うことができる下肢筋力を高める方法を実践している写真を掲載しています。

▼テレビを見ながら体操
 脚の血流を良くすることに重点を置いています。足腰の血行が悪くなってしまうと疲労感がたまりやすくなり、むくみや冷えにつながります。足首の曲げ伸ばし、股関節をほぐす、腰ひねりやお尻伸ばしをすることにより、血流の流れを改善することができます。

生活アクティブ体操の方法その2

▼トイレに立ったついでに体操
 立った時にできるストレッチや体操を解説しています。背中や腰をほぐすこともまた、血流をよくする効果が期待できます。トイレの壁に両手をつけて行う壁押しやトイレから出る前にスクワットを行う。トイレ出入り口での運動不足に効果的な体操を写真で掲載しています。

 体をほぐすといった運動は、ゆっくりと1日5回から10回を目安に行います。必ず安全面を考えて無理なく運動することはとても大事です。そして体に痛みがある時は運動・体操は控えて安静にすることが重要です。

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 慢性的な運動不足の問題は高齢者に限ったことではありません。スポーツ庁では子どもや競技団体やアスリート向け、全世代に向けた運動方法を紹介しています。運動は筋力をつけるだけではなく、ストレスの解消にもつながるので楽しく体を動かすことがモチベーションの維持に重要になります。

<出典・引用>
スポーツ庁公式サイト

(室崎陽光/社会福祉士)