NASAは2020年4月10日(現地時間)、火星探査ローバー「パーセベランス」にヘリコプター「マーズ・ヘリコプター」を搭載する作業が完了したと発表しました。このヘリコプターは、地球以外の天体で飛行する史上初の航空機で、将来の有人探査計画に役立てられます。

 2020年夏の打ち上げを目指し、準備が進められている火星探査ローバー「パーセベランス」。ロケットに搭載される態勢にセットされた車体には、4月初めに駆動用の車輪(6つ)と火星着陸時の減速用パラシュートが装着されています。

 パーセベランスの任務は、火星の表面を走り回り、ところによってはドリルでボーリングしてサンプルを採取・分析することで、火星での生命の痕跡を探ること。あわせて、近い将来に予定されている有人火星探査計画に備え、基礎となるデータを収集します。

 パーセベランスには、小型のヘリコプター「マーズ・ヘリコプター」が搭載されます。これは、地球より大気密度の低い火星で航空機が飛行できるか、という実験を行うもの。

 将来予定されている有人火星探査ミッションで、効率的に火星を移動する手段として、地球と同じように航空機が利用できるのか。その設計はどのようにすればいいか、という課題に対し、実際に小規模な航空機を飛ばしてデータを収集しよう……という訳です。

 マーズ・ヘリコプターは、重量およそ1.8kg、直径1.2mのローターを上下に重ね、互いに反対方向に回転させることでトルクを相殺する、二重反転式ローターで飛行します。

 パーセベランスに搭載されている時には、パーセベランスの原子力電池から電源が供給されますが、飛行中にはローターマストの頂部に取り付けられた太陽電池で、飛行用モーターやデータ記録・送受信機の電源をまかないます。

 搭載作業では、パーセベランスの車体底部に取り付けられたマーズ・ヘリコプターとパーセベランスとの間でデータを送受信する回線を接続。問題なくデータのやり取りができることを確認しました。

 火星に到着したら、システムチェックを経て、パーセベランスから最大100m離れての飛行実験を30日間の日程で行います。この実験がうまくいけば、パーセベランスの走行予定コースに障害物がないか、上空から確認するという運用も可能になります。

 マーズ・ヘリコプターとパーセベランスの連携は、将来有人で火星探査を行う際にも、事前に地形を確認して宇宙飛行士が活動するテストケースともなります。地球以外で初めてヘリコプターが飛ぶ、というだけでなく、より安全に有人火星探査を実施する、という点からもマーズ・ヘリコプターの取り組みは注目されます。

<出典・引用>
NASA ニュースリリース
Image:NASA/JPL-Caltech

(咲村珠樹)