とても悲しいお知らせをしなければなりません。レッドブル・エアレース・ワールドチャンピオンシップが、2019年をもって終了することが2019年5月29日、公式サイトで発表されました。残された開催は、6月のカザン大会、7月のハンガリー大会、そして9月7日・8日に予定されている日本の千葉大会がレッドブル・エアレース最後のレースとなります。

 伝説的なエアロバティック・パイロット、ピーター・ベゼネイ氏の発案により、エアロバティック・パイロットの高度な操縦技量を存分に発揮して戦う「3次元のモータースポーツ」として2003年、オーストリアで始まったレッドブル・エアレース。2005年からは国際航空連盟(FAI)認定の世界選手権シリーズとなり、初代ワールドチャンピオンには、アメリカの故マイク・マンゴールド選手(元アメリカ空軍F-4パイロット)が輝きました。

 2009年からは初のアジア人パイロットとして日本の室屋義秀選手が参戦。そして2015年には初の日本でのレースが、千葉県千葉市の幕張海浜公園を舞台に開催されました。空気で膨らませた高さ25mのパイロンで形作られた「エアゲート」をコースに配置し、高度20mほどの低空を横だけでなく縦の旋回を繰り返して駆け抜け、タイムを競うレースフォーマット。それは初めて間近に見た日本人の心をも鷲掴みにし、レースを主催するレッドブル・エアレース社(オーストリア)のスタッフをして「もっとも熱狂的な観客たち」と評するまでになりました。以来、千葉大会は現在まで毎年開催され続けています。





 レースに参戦しているパイロットたちも「千葉のファンは最高だ!」と、異口同音に我々メディアに伝えるほど。地元の室屋選手だけでなく、ほかのパイロットのことを熟知し、ピート・マクロード選手の大好きな「品川巻(海苔巻きあられ)」を差し入れするなど、それぞれのファンが心を込めたプレゼントをするのも恒例の風景となりました。



 千葉大会では2016年、2017年と地元の室屋選手が連続優勝。連覇を達成した2017年、室屋選手はワールドチャンピオンの座につきました。ゼネラル・アビエーション(定期航空会社、自衛隊などを除く民間航空)後進国である日本出身の選手がエアレースでチャンピオンを獲得するというのは、ある意味自動車のF1でワールドチャンピオンになるよりも難しい奇跡的な出来事でした。



 惜しまれつつも幕を閉じることになるレッドブル・エアレース。中断を挟んで17年におよぶ歴史の最後のレースは、9月7日・8日に千葉市の幕張海浜公園で開催される千葉大会ということになりました。世界で最も熱狂的なファンがいる日本で、最後のレースが行われるというのはある意味運命的なものなのかもしれません。決勝が行われる9月8日は、2016年にハンネス・アルヒ選手(2008年のワールドチャンピオン)がオーストリアでヘリコプター事故により命を落とした日でもあります。

 千葉大会でのフィナーレに向けて、残るレースを記憶に刻みつけましょう。

<出典・引用>
レッドブル・エアレース プレスリリース

(咲村珠樹)