名古屋の大須と言えば、東京の秋葉原に並ぶ電気街とオタクの街、というイメージの人が多いかもしれませんが、長いアーケード街とともに佇む神社仏閣は、歴史をそのままに伝える場所も未だ多く残っています。今回はその大須の中心部ともいえる「万松寺」から北へ行ったところにある、ウサギの神社「三輪神社」にお邪魔してきました。


 三輪神社は境内にある由緒書きによると1570年、奈良桜井三輪町から現在の矢場町交差点付近にある小林城に移った城主、牧若狭守長清(まきわかさのかみながきよ)が、生まれ故郷の三輪山に鎮座している大物主大神(大国主大神・大黒様)を勧請し祀ったのが起源とされています。尾張十六代藩主である徳永義宣公も合祀しています。

 そして入り口にある鳥居は三輪鳥居あるいは三つ鳥居と呼ばれるもので、明神鳥居とよばれる真ん中の鳥居の他、左右に1つずつ鳥居をもつ珍しいつくりになっています。おそらく奈良桜井の大神神社にあるものを真似たものだと考えられますが、全国的にみてそこまで数多くある鳥居ではありません。ちなみにこの鳥居、正式には「茅の輪くぐり」のくぐりかたと同じ。中央の鳥居から左右八の字にくぐります。茅の輪くぐりを知っている人ならピンとくるかもしれませんが、知らない方でもし行く事があれば神社のHP「三輪鳥居」のページで作法をチェックしてから行くといいですよ。


 筆者が三輪神社にお参りに行ったときはちょうど毎月8日に行われる「大黒まつり」が行われており、夏の境内には地元で活動する作家の神凪唐洲さんの出版記念サイン会や地元を拠点とするクリエイターやメーカーのブース、地元有志のステージなどが行われており賑わいを見せていました。

 こちらの神社には至る所にウサギの置物があり、本殿の前には御影石で作られた「撫でうさぎ」なるものも。このウサギの頭をなでるとご利益があるのだとか。大国主大神といえば大黒様のことでもありますが、大黒様と縁の深い生き物が「ウサギ」。日本の神話である「因幡の白兎伝説」でも有名なウサギは大黒様のお使いであるとともに、「国造りの神様」として、縁結び・家内安全・交通安全・厄除けの守護をつかさどる大黒様を象徴。この為か、境内の至る所にウサギの置物やモチーフが見え隠れしています。神社の歴史を物語るかのような大きな樹木の切り株にあいた穴の中には、たくさんのウサギの置物が。手水の周囲にも石燈籠のところにも気が付けばウサギ。ウサギ好きには堪らない、とってもウサギな神社に。



 こちらの三輪神社、もう一つ特筆すべき見どころが。それは、クスノキに刺さった大きな矢。この矢は武将たちが矢の練習を行っていた「矢場」がこの場所にあった事を意味しています。クスノキの幹に完全に飲まれた矢は朱塗りで大きく、歴史を感じさせます。この矢にも縁結びの神話が古事記の代から伝えられており、この神社が縁結びに強い力を持つ事をうかがわせています。矢が刺さったクスノキは今も青々とした葉を茂らせ、その太い幹には多くの赤い糸が縁結びの願掛けとしいて結ばれています。






 社務所には縁結びのお守りの他、ウサギの刺繍が可愛らしい御朱印帳や豊富な種類の御朱印を授与してもらえます。御朱印は、神社の例祭にちなんだその日限定の御朱印もあるとの事。筆者も、6種類の御朱印から大黒祭り限定の御朱印と、大黒祭りの後に行われる「幸宮祭り」の御朱印を授けて頂きました。このご朱印、昨今のブームの為か授与してもらう人がとても多く、この日も長蛇の列。前日の七夕祭りの時にも大雨の中、多くの人が七夕限定の御朱印を授与してもらいに並んでたのだとか。筆者も2種類の御朱印を頂くまで3時間くらい待ちました。御朱印を早めにゲットしたいという人は、午前中にお参りするのが良さそうです。また、お祭り毎に限定の御朱印もあるので気になる人は要チェックですよ。




 御朱印を頂けるまでの間、本殿にお参りして参拝のご縁を頂けたことに感謝の意を捧げ、境内をひとしきり見て回ってもまだ時間に余裕があったので、大須の街並みを久しぶりに歩いてきました。昔からやっている靴屋、古着屋、かばん屋、服屋、そして住民の台所とも言うべきスーパー、暑い夏にぴったりの冷茶を店頭販売しているお茶屋さんなど、昔からの大須の商店街の味わいも残しつつ、アーケードから少し外れると食べ歩きグルメや、ヲタ活が捗りそうなあんな店やこんな店も……。

 時間の都合で献血ルームに寄れない事を悔しがりつつ、もうすぐ閉店するというゲーセンを尻目に再び三輪神社へ。御朱印を頂き、新しいご縁も頂けた今回の三輪神社参り。福の神とウサギさんが幸福を招いてくれそうな、ハッピーな気分になれる神社でしたよ。


(梓川みいな)