漫画サイト・コミックウォーカーで「おじさんと女子校生」を連載している、漫画家・加藤マユミさんが「閃輝暗点って知っていますか?」という漫画をツイッターに公開したところ、多くの人が「自分も同じ症状ある!」と共感を寄せています。

 若い人に多くみられる「片頭痛」。頭全体か片方がズキズキと痛み始め、吐き気や嘔吐に繋がる程のひどい痛みとなる片頭痛がある人は意外と多くいます。しかし、その片頭痛が起こる前兆にみられる現象について、うまく説明しにくい事もありなかなか知られていなかったり理解されていなかったりという事も。

 そんな片頭痛と、その前兆の「閃輝暗点」について加藤さんが漫画で自身の症状を説明しています。

 漫画の中で加藤さんは中学生くらいの頃から閃輝暗点を伴った片頭痛が起こるようになったと話しており、その症状や対処法、どうして漫画にしてみたかを描いています。



 この状態について加藤さんに詳しくお話を聞いたところ、発症した当時から年4回くらいの頻度で閃輝暗点を伴った片頭痛が起きていたそうです。30歳を過ぎた頃から閃輝暗点の後の頭痛は起こらなくなる時も出てきてあっても弱い物との事。

 ストレス下の状態では発生せず、仕事の締め切りが終わった次の日などストレス状態から解放された時に閃輝暗点が発生する事が多く、最近ではヨガをやった後に発生しているそうです。

 10代~20代にかけてかなり症状が辛かったにもかかわらず、頭痛が起きても受診には至らず閃輝暗点が起きた時に市販の内服薬を飲む事で頭痛を抑えていたそうですが、最近になって閃輝暗点が長く発生し、原因も分からなかった事があり、ネットで自身の症状を調べて脳疾患の可能性もあるかもと思い脳神経科へ受診、MRIの検査もしたそうです。

■頭痛の種類と緊急度

 頭痛と一口に言っても、脳梗塞や脳出血・クモ膜下出血などの脳血管疾患で、早急な処置が必要な緊急性の高いものから一時的なもので、薬を飲んで寝ていれば大丈夫なものまで様々。頭痛は血管や神経の異常から発生する「一次性頭痛」と先述した脳血管疾患や腫瘍などの他の病気により引き起こされる「二次性頭痛」の2種類に大別されます。

 命に関わったり、後遺障害が発生する可能性が高い二次性頭痛であるかどうかを診断するためには、普段の症状の有無を把握しておくことが重要ですが、脳腫瘍の場合はじわじわと頭痛以外の症状が進行して、他の脳機能障害が見つかった時には既に腫瘍が大きくなってしまっていることがあります。また、脳の動脈にできたこぶ状の奇形が破裂寸前まで大きくなってから頭痛などの症状が出るなど、少しずつ症状が進んでから一気に破裂して出血を起こすクモ膜下出血などの血管の破裂は、普段あまり症状がない人が突然ののたうち回るような激しい頭痛に見舞われる、といった症状がみられます。
 
 この為、頭痛が起こった時はまずすぐに命に関わる疾患でありそうな激しい頭痛であれば即救急車を呼んでもいいのですが、それ以外の場合は見過ごされがちになりやすいものです。
 
■片頭痛を含む一次性頭痛について

 命に即関わらない場合でも、頭痛が良く起きる時は神経内科や脳神経外科、頭痛外来に一度受診しましょう。自己判断でこのくらいの頭痛なら大したことない、と見過ごしていると命に関わる脳の病気を見過ごしてしまい、結果的に重い症状となり得ます。

 医師による診察とMRIなどの検査による脳の血管や腫瘍の有無などのチェックを行う事で、一次性頭痛と二次性頭痛を分ける事ができますが、MRIで問題ないと言われても何か心配という事であればセカンドオピニオンを紹介してもらう事もできます。紹介状や検査結果の写しを病院側で用意してもらって、より専門性が高い医療機関に受診した事で「最初の病院では見つけきれなかった脳の病気を見つけてもらう事ができた」という事例もあります。

 一次性頭痛には大きく分けて、片頭痛、緊張性頭痛、群発頭痛の3種類に分類されますが、片頭痛と緊張性頭痛は混合して発生しやすい事が知られています。
 緊張性頭痛は肩こりや目の疲れなどから起こる事が多く、体を動かす事で楽になる事もありますが、肩こりなどからの頭痛だと思ったら実は片頭痛であったというのもよくある話。片頭痛は様々な身体的・精神的ストレスが引き金になるほか、気圧差や天候などの環境的な要因、また女性では月経周期が引き金になる事も。

 片頭痛では閃輝暗点などの予兆が起こる場合と、起こらない場合がありますが、閃輝暗点以外にも眩しさをいつもよりも強く感じるようになったり、髪の毛や皮膚に感じるピリピリ感が出たり、普段使っている眼鏡や腕時計が不快になって使えなくなったりという前兆がみられます。これは三叉神経という脳の幹部に炎症が起きている為に、神経の過敏状態が起こり片頭痛とその予兆の症状に繋がります。

 閃輝暗点は片頭痛の20~30%に起こるのですが、片頭痛患者の約7割にこの神経の過敏状態「アロディニア」がみられるという研究結果が出ています。片頭痛は男性よりも女性に発症が多く、10代の発症も女性の方が高くなっています。ピークとなる好発年齢は男性は20代、女性は30代といわれていますが加藤さんの様に10代の女性の片頭痛もかなり多くいます。

■もしかして片頭痛?と思ったら

 こうした症状がある場合はためらわず頭痛外来や神経内科に受診しましょう。特に繰り返しやすい片頭痛はストレスコントロールと薬の併用が大きなポイント。しょっちゅう頭痛が起きてそのたびに市販の鎮痛剤を飲むと、今度はその薬自体が頭痛の原因となってしまいます(薬物乱用頭痛)。月に10~15回以上、鎮痛剤を飲む人は要注意です。

 片頭痛自体は三叉神経の炎症を抑える薬が効く場合もあり、その場合は痛くなり始めに片頭痛の処方薬を飲む事でかなり抑える事ができます。また、片頭痛の発作が月に2回以上ある人には予防の為の薬も開発されており、日常生活に支障が出やすい人に処方される事があります。

 いずれにしても、頭痛が起こりやすい人はまずどのようなタイプの頭痛であるか、頭痛が起こる前にどんな症状があったか、頭痛が起こる引き金となるものがあったかどうかなどを記録しておくのが望ましいです。神経内科や頭痛外来では頭痛の状態を客観的に把握しやすくするための「頭痛ダイアリー」というものを準備しているので記録を付けて症状を客観的に把握し、頭痛をコントロールする事が大事です。

 痛くなったらまず受診。繰り返す痛みへの対処で市販の鎮痛剤を使うのは、一時しのぎと考えておき頭痛の種類や原因、対処法を医療機関で正しく身に付けるようにしましょう。若い人の場合はまず片頭痛が多いのですが、20代・30代でも脳血管疾患や腫瘍の可能性は否定しきれませんので、若いから片頭痛、頭痛持ちだからと油断しない様にしましょうね。

<参考>
頭痛ガイドライン│一般社団法人 日本頭痛学会
片頭痛の特徴・分類 | 片頭痛って? | スッきりんのバイバイ頭痛講座・ファイザー株式会社
頭痛の分類|頭痛の基礎知識|片頭痛治療剤マクサルト | 製品情報 | 医療関係者の皆様へ エーザイ Medical.eisai.jp

<記事化協力>
加藤マユミさん(@katomayumi)

(梓川みいな / 正看護師)