政府が提唱する「働き方改革」。業種や企業によって取り組み方は様々なので、自分のところ以外はなかなかどんな取り組みをしているのか、判りにくいところがあります。クレジットカードで知られるアメリカン・エキスプレス・インターナショナルが、企業の働き方改革への取り組みについて調査を実施し、勤労感謝の日を前にその結果を公表しました。

 調査の対象となったのは、年間売上規模が約5億円以上250億円未満となる日本の中堅企業、その部長職以上(社長・役員含む)の管理職321人。2017年7月に実施しました。

 「働き方改革」にある程度以上取り組んでいる企業の割合は54%。さらに30%が検討中と回答しています。実際の取り組みとしては、長時間労働の是正が39%、休暇の取得促進が31%という上位回答。労働時間を少なくし、体を休める機会を増やそうという感じですね。それを妨げるものは何かというと、一般従業員の意識改革(48%)、管理職の意識改革(40%)、トップの意識改革(36%)が上位回答で、意識に染み付いた感覚が邪魔をして、仕事を早く切り上げる、休暇を取るということに抵抗感が残っていることが判ります。

 さて、これとは別に働き方のバリエーションとしての「兼業・副業」についてはどうでしょう。こちらは「推奨している(4%)」、「認めており、届出等も必要ない(12%)」、「認めているが、届出または許可制(17%)」という回答を合わせた、兼業・副業を認める回答の割合は、全体の3分の1を占める33%。

 面白いことに、2016年12月に大企業(年間売上規模が250億円を超える222社)を対象に行った同種の調査では、兼業・副業を認めているところは中堅企業の半分程度となる16%に過ぎません。内訳をみると、推奨しているところは皆無、届出を必要としないところが1%、届出または許可制のところが15%で、禁止している企業は74%と非常に締め付けが厳しい印象です。

 中堅企業調査の自由解答欄を見ると「兼業も副業も、仕事しながらの転職活動も認めている。同じ業界に映る人が多く、転職は仕事が広がるから(WEB制作)」と、従業員の兼業・副業を新たなビジネスチャンスづくりに活用している様子もうかがえます。内にこもらず、積極的に外にうって出ている印象ですね。大企業の方が、経営戦略的に守りに入っているのかもしれません。

 兼業・副業に対する考え方を見ると、さらに上を目指し自社にプラスとなるよう積極的に考える中堅企業と、今の地位を守るために本業に集中させ、冒険を避ける大企業という印象を受けます。日本の経済を活性化させるには、資本力のあるところがもう少し積極的になってくれるといいような気もしますが……。

 日本の企業のほとんどは中小企業です。大企業に較べると経営環境が苦しいというところが多いですが、その中でも上を目指すべく「働き方改革」に取り組み、柔軟な姿勢で努力する企業の割合が大企業より多いというのは、ある意味頼もしい結果ですね。

<出典>
中堅企業調査レポート2017

(咲村珠樹)