【うちの本棚】148回 エイリアンクラッシュ/板橋しゅうほう「うちの本棚」、今回は板橋しゅうほうが80年代前半に発表したSF短編を集めた『エイリアンクラッシ』をご紹介いたします。
『ペイルココーン』で漫画マニア、SFファンに注目された板橋が本格的に作品を発表し始めた時期の作品ともいえます。
アイデアやストーリーは今でも十分に楽しめるものばかり。改めて板橋作品の魅力を感じられる一冊といえるでしょう。


【関連:147回 ペイルココーン/板橋しゅうほう】
 
板橋しゅうほうの、80年代前半の短編作品集。
初出は以下の通り。
 
・ブロークンハート/1981年11月号
・エイリアンクラッシュ/1892年8月号
・THE 狼奴/1983年1、2月号
・アマゾンハウス/1984年10月号
・ブラッディバベル/1983年12月号
 以上、潮出版「コミックトム」掲載
・ランニング/1983年2月13日号
 双葉社「アクション増刊」掲載

代表作のひとつである『アイシティ』の第1巻が84年前半に刊行されているので、その前後の期間に描かれた作品ともいえる。

表題作の『エイリアンクラッシュ』は、新しいゲームをテーマにした作品で、仮想空間内で現実のような体験ができるという、その後の映画などでよく扱われる世界が描かれている。サイバーパンクSFといってもいいだろう。登場するキャラクターたちは『ペイルココーン』に登場したものに似ており、手塚治虫的スターシステムを板橋が採用していた感もある。その意味では『ブロークンハート』の主人公「ライデン」はそのまま『アイシティ』に出演したといえるだろう。

ほぼ発表順に収録しているので、板橋の短編に於ける技量の進化も読み取ることができるのも本書の特徴。『ブロークンハート』は主人公のモノローグによる説明が多く、少々読みづらいところがある。そういったものがだんだんこなれていき、『ブラッディバベル』ではすっきりとした読みきり短編が出来上がっている。

板橋は、潮出版の「コミックトム」や双葉社の「スーパーアクション」を主な発表媒体にしていたところは、星野之宣や諸星大二郎とも共通していたが、そのふたりと違って熱狂的なファンがいない印象があるのは少々寂しい気がする。

作画面の技量や選ぶテーマ、ストーリー自体は十分漫画ファンやSFファンに支持されるものがあるはずなので、板橋のファンも少なくないと思うのだが…。

本書も現在は絶版状態で気軽に入手できる状況ではないので、ファンによる復刻支援などがあるといいと思う。

書 名/エイリアンクラッシュ
著者名/板橋しゅうほう
出版元/潮出版
判 型/B6判
定 価/500円
シリーズ名/希望コミックス 122
初版発行日/昭和59年12月1日
収録作品/ブロークンハート、エイリアンクラッシュ、THE 狼奴、アマゾンハウス、ブラッディバベル、ランニング

エイリアンクラッシュ

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/