いよいよ2月2日・3日に2018年の開幕戦・アブダビ大会(UAE)を迎えるレッドブル・エアレース。今年からインターネットでのライブ中継に新たな楽しみが加わります。リアルタイムで、360度パイロット目線のフライトを専用アプリとVRゴーグルで体験できるのです。

 これはレッドブル・エアレースがGoogleと共同開発したシステム。「Red Bull Air Race Live VR Experience」というAndroid対応のVRアプリを使用します。VRゴーグルはGoogleの「Daydream」と、それに対応するスマートフォンとの組み合わせが推奨されています。

 Red Bull Air Race Live VR Experienceは、トラックを飛行するレース機のロール角・ピッチ角といった姿勢データや飛行速度、そしてトラック内の位置を示す緯度・経度・高度のデータをリアルタイムで取得。それをパイロット視点の360度VR画像として再現します。これによりライブで「飛行しているパイロットと一緒にトラックを飛ぶ」体験ができるようになりました。実際にレースコントロールでレースディレクターたちが確認しているテレメトリデータが、そのまま世界中のユーザーにまで配信されるというのは、スポーツ中継としては世界初のことです。

 実際に筆者も2017年最終戦インディアナポリス大会、ファイナル4で室屋義秀選手が驚異的なトラックレコードをマークしたフライトデータをVRで体験してみましたが、非常にリアルです。室屋選手がレース後「パイロンヒットしそうな部分もあったが、奇跡的にすり抜けられた」と語っていたのはここではないか、という場面も、少なくとも2ヶ所確認できました。また、ゲートへ飛び込む角度がいかにギリギリで余裕がないかというのも、周りを見回せるので翼端とエアパイロンとの距離も判り、パイロットの高度な操縦技術を再確認することができます。

 画面には速度やタイムのほか、現在かかっているGの値なども表示されるので、どの場面で減速し、どの場面で加速しているのか、またどれくらいのGがどんな場面でかかっているのかというのも一目瞭然。

 この360度VR映像は観戦するファンだけでなく、実際に飛ぶパイロットたちにも大きなメリットがあります。現在、各パイロットは事前にトラックのレイアウトデータからレースのシミュレーションを行って、最速のラインを検討しています。このシミュレーションはコンピュータの画面上で、トラックレイアウトを第三者的に見ながら行なっているので、最速のラインを確定させた後は、パイロットたちは頭の中で実際に飛ぶ時を想像しながら準備をしています。これがVR映像を活用することで、実際にコクピット内で飛んでいる映像としてデータを見ることができ、実際にトラックを飛ぶ前にかなりイメージを固めることができます。また、フリープラクティスなどの飛行データもVRで何度も確認できるため、自分の飛行の改善点をより正確に把握して次のフライトに活かすことができるのです。

 レッドブル・エアレースの観戦スタイルだけでなく、パイロットのレース戦略にも影響してきそうな「Red Bull Air Race Live VR Experience」。アプリはGoogle Play、そしてDaydreamに対応する端末など詳しい情報は、公式サイトでご確認ください。

※見出し画像はアプリのものです。 (c) Red Bull Air Race/Red Bull Content Pool

(咲村珠樹)