「ご家庭で不要・廃棄予定のタオル、バスタオルございましたら送っていただけませんか?」──

 4月14日、Twitterでこんな呼びかけが瞬く間に拡散されました。現在に至るまでに、このツイートは4万以上もリツイートされ多くの人の目に触れることとなりました。

【関連:「殺処分」に関する記事】

 このツイートをしたのは、岐阜県土岐市にある乗馬クラブエクイヴィラ(@equivilla)。愛知県と岐阜県の県境、国道363号線沿いに位置しており、2017年3月にオープンしました。

 現在も到着したタオルについて馬たちの写真と共に報告を続けているエクイヴィラの立ち上げから携わる中村さんにお話をお聞きしました。

■集まったタオルは500枚以上

 今回は馬たちの体や顔を拭くために大量のタオルが必要だったため募集に踏み切ったそうですが、結果的に500枚以上のタオルが集まり、輸送準備をしているという連絡もあるほどの反響があったそうです。現在は「ご厚意に感謝しながら、いったん募集を締め切っています」とのこと。

 集まったタオルはほとんどが一般家庭にある通常のものだったそうですが、アニメやくじの景品も含まれており、その中でも漫画家のピクピクン先生のタオル「スプラトゥーン」、スライム柄、「アイドルマスター」のものなど漫画・アニメ・ゲーム関連、その他おもしろいタオルをTwitterにてアップして報告しています。

 「キャラ物、痛タオル、バンドタオルはダメですか?」という質問もあったそうですが「私もアニメ好きなのでワクワクします」と中村さん。というのも、実はご自身で『進撃の巨人』と『新世紀エヴァンゲリオン』の“痛馬装”を自作し愛用していたこともあるんだとか。

■<第三の馬生>を迎えられない馬たち

 エクイヴィラは馬たちの<第三の馬生>である『余生』を支えていこうという新しいコンセプトのもと設立されました。

 競走馬として活躍するのが第一の馬生で、引退してセカンドキャリアとして乗用馬への転用が第二の馬生です。この第二の馬生についてはこれまでにも多くの支援が叫ばれ、社会的に注目されつつあります。

 しかしながらセカンドキャリアの場で精力的に活躍した後は、高齢と言われる年齢に差し掛かり働けなくなると殺処分されてしまうという場合があります。つまり、あるはずの『余生』である<第三の馬生>を迎えることがないという悲しい現実があるのです。

 馬の寿命は25年から30年と言われています。20年以上も人を背に乗せ頑張って働いてくれた馬たちに、もう働けないから「お疲れ様。今までありがとう。さようなら」と言って見切ることはできない──そんな思いから、中村さんは馬たちの<第三の馬生>を保証し「お疲れ様。今までありがとう。これからもよろしく!」と声をかけられるような乗馬クラブを発足するに至ったそうです。

■現在のエクイヴィラ

 現在エクイヴィラには6頭の馬が生活しています。内、3頭がエクイヴィラ所有馬で、3頭は預かっている馬です。

 所有馬はアラブ系競馬で走っていた現・余生馬の29歳「銀河」、競走馬として生まれたものの乗馬に転用され23歳まで現役だった現・24歳「サブレ」、そして現役馬の8歳の「リコッタ」が生活しています。銀河とサブレは、中村さんが元々高齢馬・休養馬のボランティアとして通っていた乗馬クラブで高齢や故障を理由に殺処分されてしまいそうだったためにレスキューしてきた存在です。

 エクイヴィラはあくまで乗馬クラブとして運営し、働ける現役馬が余生馬たちを支え、現役馬が余生馬となったら次世代の現役馬が支えるという体制を目指しているそうです。

 しかしながらオープンして間もなく、さらに今後余生馬を支えてくれる現役馬の体制が整うまで、馬たちを支えていく必要な支援を求めています。支援は余生馬の餌代、馬房の敷料費、医療費、装蹄費、馬場の砂代、馬のシャワー代、馬場への散水代などにあてられます。

▼資金の使い道
・支援馬2頭のしばらくの生活費
ご飯代・馬房の敷料費・医療費・装蹄費など約半年分:850,000円

・余生馬・現役馬共に使用する馬場の砂
蹄、脚、身体の保護に川砂を馬場に敷きます:200,000円

・井戸水をくみ上げるポンプ(井戸は確保済)
汗をかいた馬へのシャワー・馬場への散水に活用します:200,000円

(計1,250,000円)

画像提供・乗馬クラブエクイヴィラ

 現在、支援はクラウドファンディングサイト・CAMPFIREにて5000円から。こちらは5月31日まで。そして、BASEでは300円からの少額から支援することができます。

 また、乗馬クラブとしても新規会員を募集中で、ゴールデンウィーク明けまではそれぞれの入会金が通常価格の半額となっているために要チェックです!

 実際に馬たちと触れ合ってみたいという人には、無料で簡単な見学と触れ合うことが可能です。ニンジンなどのおやつを持参すれば馬たちにあげることもできるそうですよ。申し込みが必要な「ふれあい体験」や「おしごと体験」、「乗馬レッスン」(以上全て有料)では馬の毛並みをブラッシングするお手入れなど、本格的な世話も体験することができます。

 多くの馬に「これからも、よろしく!」と言ってあげられるようなエクイヴィラのような厩舎を増やすためにも、余生馬が安心して生活できるシステムが確立された社会をつくっていくことが大事なのではないでしょうか。それが人間と動物が共生していく世界では、大切なことだと思うのです。

・協力:乗馬クラブエクイヴィラ(岐阜県土岐市鶴里町細野1176-1-5)

(大路実歩子)